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Raphaに学ぶ、顧客を紙切れ数枚でロイヤルカスタマーにする方法

先日はじめてRaphaのサイクルジャージを買った。公式サイトの通販で。

商品が送られてきて、中にジャージと一緒に同梱されていたものを見て驚いた。私はその同梱物を見て、「あぁこの会社はマジなんだな」という認識を持ち、一発でこの会社が謳っていることへの信頼度が上がった。さて何が入っていたのか。いったん勿体ぶります。

(自転車乗りは知ってると思うが)Raphaって何

Rapha(ラファ)というのは、ネットと一部の直営店舗での販売を中心とした、2004年にイギリスで生まれたサイクルウェアメーカーだ。かつて市場がレーシングレプリカみたいな仰々しいジャージや、機能一辺倒のウェアで満たされていた頃、シンプルで品の良いデザインのジャージを自転車界に持ち込んで流行らせた、そういう功績が大きいブランドだと認識している。そして商品はちょっと高級。

さらにウェアをつくって売るだけでなく、「RCC」というサイクリングクラブを主催し定期的にライドを企画したり、そのクラブハウスをリアル店舗と兼ねて運営するなど、自転車を楽しく遊ぶカルチャーの醸成に並々ならぬヤル気を見せている、「畑を耕すところからやる」タイプの会社である(そういうタイプの会社はわりと好きだ)。熱狂的なファンの多さ、そして一定量のアンチの存在でも知られている。

インターネットで買ってみましたが

Raphaは、日本では東京や大阪にリアル店舗があるとはいえ、メインの販売ルートはネット通販。つまり私のような地方民は試着をしないで買うことになる。当然、つきまとうのはサイズへの不安。これをRaphaは、「再度販売ができるコンディションの製品に限り購入日から90日間まで返品、あるいは同等製品との交換を承っております。」と明記することで、こちらの心理的ハードルを下げている。合わなきゃ別のサイズに交換すればいいのだ。
その他に、ジャージのグレードによっては使用後でも一定期間返品可能だったり、痩せてサイズダウンしたら50%割引で新しいサイズのジャージを売ってくれたり、修理を受け付けてくれたりなど、お値段ちょっと高めなだけあって色々なアフターサービスを用意している。よし、ならば買おう。セールだしな(セールでしか買う気にならないような人間でごめんな)。

ジャージと一緒に入っていたのは

さて送られてきたジャージと一緒に何が入っていたのか。宅急便のお送り票である。着払いの。あらかじめ千駄ヶ谷のRapha Japanの拠点の住所が印字されている以外には何の変哲もない、クロネコヤマトの着払い伝票である。

▲被写界深度を浅くして前後をボカしてみたところで単なる着払い伝票である

これが何を意味するか。
Raphaは、先に記したように、サイズが合わない・おもてたんと違う等の場合返品を受け付けてくれるのをはじめ、様々なアフターサービスを用意してくれている。
でも、それは本当に使って良いものなのか。どうやって使うものなのか、どこから手続きすれば良いのか。消費者としては心理的なハードルや面倒のハードルが存在する。
このハードルをどう取り除くのか。Rapha Japanは返品用の着払い伝票を1枚同梱することで「返品・交換制度、気軽に使ってくれてええねんで!!」というメッセージを発信し、ハードルをアホほど下げることに成功している。すげぇ。
「返品、気軽にして良いよ!」ということを商品が手元に届いた瞬間に顧客に伝えることは、その先顧客が製品を使用していく中で想定される「痩せたら50%で新サイズ売ります」「破れたら修理します」といった、Raphaが購入に際し顧客としている他の約束も「マジである」というメッセージに他ならない。

▲実際買ったのはこちら、プロチームトレーニングジャージ(ほか数点)。「Raphaはユルめ」と聞いてたのにプロチームラインはかなりタイト寄りらしく、家で試着してみた結果「無理」と判断。実際に返品・交換制度を(同梱の着払い伝票を使って)利用し、ワンサイズ上に交換いたしました。

制度だけ用意して知らんぷりな会社、わりとありますよね

こんなにも「制度用意したのでホイホイ使って良いよ」をわかりやすく伝えてくれるブランドは、他にどのくらいあるだろうか
普通の会社は、いやRaphaだって、返品なんて気軽にされたら絶対めんどいだけである。消費者のためにはなるけど本音としては利用されたくない制度は、制度としては用意するけど利用のハードルは上げておき、「どうしても」という声のデカい一部の人のためにアリバイ的に用意しとくものなのではないか、普通は
他業種の例だけど、インターネットサービスプロバイダのくせに解約が電話でしかできず(お前は一体何の会社なんだ)、しかも解約受付窓口の電話番号は往年の腐ったオタクのホームページの隠しページの如き発見難度で、やっと見つけた番号に掛ければヒトに繋がるまで実に20分間保留音が鳴り続ける(実体験です)。
そういうのが当たり前の世界で生きてきてしまいスレ切ってしまった。そういうのが普通だと思うようになってしまった。

違う、Raphaは違う。

Raphaはそういう会社じゃない。モノを一回売っておしまい、そういう商売ではなく、顧客としてずっと繋がりたい、Rapha製品で楽しく自転車をやってほしい、あわよくば一緒にカルチャーをつくる仲間になってほしいと、「心の底から」思ってるんだこいつらは。
クロネコヤマトでタダで貰える伝票に、1枚数円の印字コストをかけたものを一緒に入れるだけで、Raphaは私にそこまで思わせてしまった。

Rapha、ナメてた。すげぇっすわ。


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