見出し画像

不格好経営 チームDeNAの挑戦【読書記録#07】

何がきっかけだったかな?南場智子さんが経営について書いた本があると知り、「読みたい!」とすぐ手に取ったもの。印象に残ったことを記録していく。

https://www.amazon.co.jp/不格好経営-チ-ムDeNAの挑戦-南場智子/dp/4532318955

※いつもみたいにサムネが出ないのはなぜ?

心打たれるエピソードが多く、全体的な感想をここに記すよりも、大切にしたい言葉をここに記録していきたいので、今回の読書記録は、南場さん語録になってしまうかも。


●まえがき


いつも私は去年の自分が恥ずかしい。10年前の自分など、他人と思うようにしないとうまく生きていけない。よく言えば、それだけのスピードで成長し続けているということかもしれないが、単にいつも恥ずかしい状態の人間だというほうが正確な気がする。そんな私が本など書いてしまったら、来年の今ごろにはどうしようもなく恥ずかしくなり、全部買い占めて焼却してしまいたくなるだろうか。
それでもいいや、というのが最近の私の心境だ。

本著より

この本は、こんな前書きから始まる。メディアで見る南場さんは、エネルギーに溢れていて、それでいて自然体で、チャーミングで。そんな南場さんがそのまま文章になっている前書きから始まるもんだから、冒頭からグッと引き込まれて一気に読み進めてしまった。

南場さんは、マッキンゼーを出て、DeNAを起業。典型的なスタートアップ期から、見事、今のDeNAを創り上げた方だ。ご家族の病気をきっかけに2011年に社長を退任されてからも、今なおビジネスの世界で活躍され続けている。

起業のきっかけは、マッキンゼーのコンサルタントとして、クライアントと会食しているときに「そんなにいうなら南場さんがやればいい」と言われて、頭に電撃が走ったことだそうだ。その時の自分に対して、南場さんはこう回顧している。

さらに言えば、愚かなおごりもあった。自分が経営者だったらもっとうまくできるんじゃないだろうか。なんでもっと思い切った改革ができないのか。なぜ中途半端に実施するんだ。私だったら......。もしそんなふうに感じているコンサルタントがほかにもいたら優しく言ってあげたい。あなたアホです。ものすごい高い確率で失敗しますよ、と。
世の中のほぼすべての人が知っている「言うのとやるのでは大違い」というのを、年収数千万円のコンサルタントだけがうっかりするというのは、もはや滑稽といえる。しかもコンサルティングで身につけたスキルや癖は、事業リーダーとしては役に立たないどころか邪魔になることが多い。

本著より

私も今、「事業をやる」人の立場になって、この言葉にはすごく共感する。周りはとにかく良かれと思って、あれこれアドバイスをしてくれる。でもアドバイスしている人たちは安全地帯にいるし、実行する怖さや大変さを知らないのだ。

とはいえ、相当優秀な方だから、失敗や苦労の数など高が知れているだろうと思うと、そうではない。この本を読むと、華やかではない苦しくもがくようなタイミングが何度も何度もやってきて、それを乗り越えるたびに、DeNAが大きくなっていったことがわかる。苦しい時こと、成長の前段階なのだ。

私は、苦しいときにふたつのことを意識する。
ひとつは、とんでもない苦境ほど、素晴らしい立ち直り方を魅せる格好のステージだと思って張り切ることにしている。そしてもうひとつは、必ず後から振り返って、あれがあってよかったね、と言える大きなプラスアルファの拾い物をしようと考える。うまくいかないということは、負けず嫌いの私には耐えがたく、単に乗り越えるだけでは気持ちが収まらない。おつりが欲しい、そういうことだ。

本著より

●立ち上げ

立ち上げ時のエピソードとして、サービス名等を決めるにあたって、出資者たちとなかなか合意ができない状況に直面したが、そこで自分が「事業家」であることを自覚したというものがある。

サービス名や株主の構成って....、ひとつずつで我慢してもらう、そういう軽々しいものだっけ?リクルートやソネットではなく、別の人たちの顔を思い浮かべるべきではないか?川田、ナベ、ほかの何人もが人生の大事なものを捨ててこの会社に賭けてやってきた。自分だってそうだ。誰を立てるではなく、自分たちがどうしたいかを考えるべきじゃないだろうか。
そんな思いに至って私は泉二社長と坂本常務に会った。
サービス名は「じゃマール」でも「ソネット」でもなく、自分たちで新しい名前を決めます。出資構成はソネット、リクルート、経営陣で3分の1ずつ(もっと踏み込むべきだった!)。そして、経営陣筆頭でいきたいと思います。
気を振り絞ってそう伝えた私に、泉二社長と坂本常務はまったく同じことを言った。
「いいじゃない、南場さんがそうしたいなら、それが一番いいよ」あの・・・、失礼ながらこれまでの話はいったい何だったのでしょうか…・・・・・、と拍子抜けするような反応だった。2社間の牽制もあったのだろうが、このときふたりから、調整ではなく決めるのが仕事であること、最後は自分の腹に聞くことを教わった気がする。コンサルタントじゃないんだ、事業家なんだ・・・・・・。

本著より

●金策

この本で綴られている、立ち上げ期の苦労エピソードはこれだけではない。その中で一番「そんなことある?!」と思ったのは、リリース直前に、コードが一行もかけていないことが判明したという事件だ。
その時に、支援をしてくれたVCの方のメールの文章も学びが多い。

次の日、泊まり込んでいた村口さんがオフィスを出ていく後ろ姿を見た。疲労困憊の私は声をかける力もなく、ああ、村口さんも疲れただろうなと見やった。すると20分後に村口さんからメールが届いた。「事件発生から48時間が経ちました」で始まるメールはこう続いた。
「DeNAの経営陣は徐々に落ち着きを取り戻し、正しい経営判断をしはじめていると評価します。この事件は起こらないほうがよかったでしょう。しかし起こってしまいました。こうなったからには、どうやって立ち直るかが問題です。DeNAのこれからの立ち直り方に、ソニーやリクルートから真に独立した経営陣として認められるか否かがかかっています。投資家はそのような目で見ているということを、片時も忘れずに対処してください」
「ちょっと!」と声をあげて皆を呼んだ。そうだ、掘った穴が大きいほど面白いステージになる。そう思ってやるしかないのだ。見事に立ち直る様を魅せようじゃないか。ひとつのパソコンの画面を食い入るように見入る全員のなかにこんな気持ちがむくむくと盛り上がっていった。こうして大失態の発覚から48時間後、「カッキーン!」と音が鳴るように全員が同じ方向に向き、気持ち悪いほど前向きな集団に生まれ変わった。

本著より

そんな窮地を乗り越えてもなお、事業状況としてはよくなく、金策に奔走していた時期はまだ続いた。そんな状況でも心折れずに前を向いて進めたのは、チームへのリスペクトだったようだ。

今、講演をしたりすると必ず訊かれる。なんで諦めなかったんですか、と。自分でもそがナゾだ。熱病が続いてしまっていたのだと思う。
それと、チームが誇らしかった。こんな人材が集まるベンチャーはほかにないのではなか。このチームでやってダメなら、世の中に成功なんてないんじゃないか。
た。

本著より

そんな中、業界No.1のヤフオクの値上げを、「これはチャンス!」と攻めにかかるシーン。このスピード感で、これだけの味方を集められのは凄すぎる。

ヤフオクの手数料値上げを告知するメールがユーザーに送られ、本件が明るみに出たのは夜11時50分ごろと記憶している。その5分後には幹部全員がミーティングルームに集まり、ビッダーズは逆に手数料を値下げする検討に着手し、同時に、機能追加、マーケティングなどによる反転攻勢の戦略が練られた。翌日ソネット、ニフティ、ビッグローブ、OCNのプロバイダー大手4社のトップとそれぞれ面談をし、ビッダーズへのユーザー誘導や共同キャンペーンの約束を取り付けた。ほかの大手も同調し、全部で十数社のプロバイダーがビッダーズ支援を表明してくれた。

本著より

で、この対ヤフオクの話で面白いのが、広告をどこに出すかという話のこれ。まさかの、敵、ヤフオクに出稿しようというのだ。そしてそれを、実現してしまう。

我々はヤフオクへの出稿を模索した。
むろん、はじめは競合指定があるのでDeNAの広告は出せないと断られた。これは業界の常識。しかし、これで諦めていたら機械と一緒だ。情報収集すると、どうもヤフーの営業部は予算達成が厳しく、かなり焦っているらしいことがわかる。どれくらい不足しているのか、金額のイメージもつかめてきた。営業トップに直接掛け合い、具体的な出稿金額を提示して粘るうちに、「まあ、内規ですから、例外はアリでしょう」とさすが王者、英断だ。数日後から「オークションならビッダーズ!」という広告がヤフオクのすべてのページのトップにでかでかと貼られ、語り継がれる業界の珍事件となった。

本著より

敵の協力?もあり、社員の家族までもがサポートに入り、ヤフオクへの攻撃を仕掛け続ける。

ところが、この戦いを始めて4カ月ほど経ったある日、ヤフオクの出品数が下げ止まった。時をほぼ同じくしてビッダーズの伸びが止まる。ふたつのグラフが申し合わせたように横ばいになった。ヤフーからビッダーズへの、ユーザーの移動が止まったのだ。心のなかで何かがコツンと音を立てた。
負けた。この試合は負けだ。できること全部を全力でやって、負けた。
ューザーの審判は明確で、残酷だった。寝る時間がないどころか、自宅の電球が切れても付け替える余裕すらなく、テレビの明るさで暮らしていたメンバーもいた。奮闘したメンバー全員がガクッと肩を落とす。敗北を悟った瞬間だった。

本著より

フィクションであれば、ここで弱者が強者に勝つエンディングだろうが、実際はそうではなかった。これでも、諦めないDeNAは業界No.1ではなく、黒字化を目標に変え、もう一度前に進もうとする。「諦めない」力って本当に強いんだな。

●退任

その後、DeNAの事業が軌道に乗り、次々と新しいヒットサービスを立ち上げる最中で、旦那さんの病気が発覚する。

今を起点にベストを尽くす。 10年以上経営者をやり、そういう訓練だけはしてきたはずだ。過去を悔いても仕方がない。これからだ。告知されてからずっと暗い不安の淵に行ってしまったような夫の目を思い出す。今行くから。助けに行くから。これまでの人生は全部このときのためにあったんじゃないだろうか。そんなふうに思った。

本著より

こうして、後任を選ぶこととなる。

私は賢い人が集まるとされコンサルティング会社時代を含め幾人もの天才、秀才(多くは自称)を見てきたが、その私が驚くほど数字と論理に強くビジネスセンスにも長けていた。
そして部門を統率できるブレなさ、強さがある。人格は、責任感が強くフェア。権威おもねることがない。そして約束を守る。長年一緒に仕事をして私は守安から多くのことを学んだが、そのなかでも一番尊いことは、自分の利益や感情と物事の善し悪しの判断を決して混同しない清々しさだ。守安が新米のときからトップになるまで見てきたが、一時たりともそこに盛りを感じたことはない。
一見做機で、実際生意気だが、実は謙虚でよく学ぶ。そして、どことなくいかつなところがチャーミングで、愛されるというのも経営トップとして大きなポイントだった。

本著より

●人と組織

社長としての役割について、こんな記載がある。

この意思決定については、緊急でない事案も含め、「継続討議」にしないとい極めて重要だ。コンサルタントから経営者になり、一番苦労した点でもあった。
継統討議はとても甘くてらくちんな逃げ場である。決定には勇気がいり、迷う。もっと情報を集めて決めよう、とやってしまいたくなる。けれども仮に1週間後に情報が集まっても、結局また迷うのである。そして、待ち構えていた現場がまた動り、ほかのさまざまな作業に影響を及ぼしてしまう。こうしたことが、動きの油界では致命的になることも多い。だから、「決定的な重要情報」が欠落していない場合は、迷ってもその場で決める。

本著より

これは、highoutput manegementでも指摘されていたこと。マネージャーの超重大任務なんだろう。

また、「いうだけ」と「実行する」のギャップにもこんなことが書いてあった。

面食らうほどの大きなジャンプだったのだ。
コンサルタントとして、A案にするべきです、と言うのは慣れているのに、Aにします、となると突然とんでもない男気が必要になる。コンサルタントの「するべき」も判断だ。しかし、プレッシャーのなかでの経営者の意思決定は別次元だった。「するべきです」と「します」がこんなに違うとは。

本著より

また、「disagree and commit」に通づるこんな文章も。経営が決めたらやる。というだけじゃなくて、戦略的に決める前の検討をチームに見せないというやり方もあるのだ。これは国の違い(文化的な違い)によって良し悪しがありそう。

意思決定のプロセスを論理的に行うのは悪いことではない。でもそのプロセスを皆とシェアして、決定の迷いを見せることがチームの突破刀を極端に弱めることがあるのだ。
検討に巻き込むメンバーは一定人数必要だが、決定したプランを実行チーム全員に話すときは、これしかない、いける、という念を前面に出したほうがよい。本当は迷いだらけだし、そしてとても怖い。でもそれを見せないほうが成功確率は格段に上がる。非菜を実行に移した初日から、企画段階では予測できなかった大小さまざまな難題が次々と襲ってくるものだ。その壁を毎日ぶち破っていかなければならない。迷いのないチームは迷いのあるチームよりも突破力がはるかに強いという常識的なことなのだが、これを腹に落として実際に身につけるまでには時間がかかった。

本著より


また、不完全な情報に基づく迅速な意思決定が、充実した情報に基づくゆっくりとした意思決定に数段勝ることも身をもって学んだ。コンサルタントは情報を求める。それが仕事なので仕方ない。これでもか、これでもかと情報を集め分析をする。が、事業をする立場になって痛感したのは、実際に実行する前に集めた情報など、たかが知れているということだ。本当に重要な情報は、当事者となって初めて手に入る。

本著より

事業リーダーにとって、「正しい選択肢を選ぶ」ことは当然重要だが、それと同等以上に「選んだ選択肢を正しくする」ということが重要となる。決めるときも、実行するときも、リーダーに最も求められるのは胆力ではないだろうか。

本著より

人集めに関しても。私はこれまで、諦めが早すぎたんだな、と感じた文章。本当に一緒にやりたいなら、心から何度も話をしないとな。

DeNAが逸材を引っ張り込むのを見て、どうやって口説くのかと訊かれることが多い。が、人を口説くのはノウハウやテクニックではない。「策」の要素を排除し、魂であたらなければならない。きれいごとを言うようで気恥ずかしいが、私が採用にあたって心がけていることは、全力で口説く、誠実に口説く、の2点に尽きる。
全力で口説く、というのは、事業への熱い思いや会社への誇り、それから、その人の力どれだけ必要かを熱心にストレートに伝えるということにほかならない。それはもう、刀であたる。欲しい人材は何年かかってもずっと追いかける。どの経営者もやっているとだと思う。
でして、相手にとって人生の重大な選択となることを忘れずに、正直に会社の問題や悩イケてないところなども話さなければならない。経営者や人事担当者だけではなく、べく多くの社員に会ってもらって会社の実態を肌で感じてもらうのもそのためだ。まこれも当たり前な話。単純で恐縮だ。

本著より

取り止めもない読書記録になってしまったけど、やっぱり私は「事業をやりたい」それもリーダーという立ち位置で、という自分の気持ちに気づいた本でした。やろう。大切なものを犠牲にせずに、それを実現する方法は必ずあるはず。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?