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#思い出 ウズベキスタンの革製品

ウズベキスタンには実はかなり洗練された革製品のブランドがある。現地在住の日本人にはよく知られているが、日本では殆ど知られていないと思う。

The Black Quail という名前のそのお店は、タシケントに(少なくとも私が知る限りで)2軒実店舗を構えている。1軒は、百貨店「ツム」の裏手にある古書店街の並びの本店。もう1軒は、新市街の中心地から空港に向かう途中にあって、本店ではないが、こちらの方が広くて高級感がある。

現地の日本人の友人が店舗に連れて行ってくれて、いいなあ、日本でも使えそうだし、思い出に一つ買おうかなと思っていたが、結局、自分では購入しなかった。

ウズベキスタン勤務が終わる頃、学生たちが中心となってお別れ会を開いてくれた。大好きなヒヴァ料理をたらふく食べて、いつもの通り学生たちがウズベク語で盛り上がって、何言ってるか断片的にしかわからなくて少し寂しいけど楽しそうだからいいか〜と思っていると、先生(私)への一言コーナーになった。

ウズベキスタンにはこのような習慣?があるようで、以前も留学に旅立つ学生を空港で見送るとき、学生が見送りに来た一人一人に言葉を贈っていたし、ナブルーズで自宅に招いてくれた学生にも集まった人が一人一人何かお礼を言っていた。

日本にはここまできちんとした一言コーナーはないと思うし、私はウズベキスタン勤務を通じて自尊心を損なわれることばかりだったので、皆が私のために一言ずつ、しかも日本語で頑張って言葉を大切に並べてくれることにあまりにも感動しすぎて、どうリアクションしたらいいのか分からないくらいだった。

そして、極めつけに、大きな箱を渡された。皆でお金を出し合って買ってくれたであろう選別のプレゼントだった。うおおお〜と感動がマックスになっていて全細胞がじんじんしている感覚を感じながら、箱を開けると、中に、The Black Quailの丸いポーチと、お財布が入っていた。

どちらもきれいな赤い色をしていた。ポーチは、私が欲しいな〜と思ってよく見ていた看板の、色違いタイプだった。丸い形をしていて、ウズベキスタンのノン(Non)というパンの形で、詳細は感動しすぎて忘れてしまったのだが、良い形とされているそうだ。ノンはウズベクの人にとって日本のお米のように大事なものだから、そんな良い意味がある形だと知ってさらに嬉しかった。何より、私が「小さいパーティ用のポーチをThe Black Quailで買おうかなあ〜」と仲の良かった先生に話していたことがあって、その何気ない発言をしっかり覚えてくれた先生が、学生にアドバイスしたんだろうなと思うとなんともほんわかしてしまった。

もうひとつ、お財布は、開けると何か文字が書いてあった。それが、冒頭の写真である。「You always stay in our hearts」、あなたはいつも私達の心のなかに、という意味だ。

ウズベキスタンで勤務している間は、孤独と、猜疑心とでいつもすり減っていたし、学生はいつもマイペースで何を考えているのか分からなかった。それでも、同僚の先生方は、「辛かったら私達に話せばいいし、学生たちは先生(私)が一生懸命やってくれてることをわかってるから、大丈夫ですよ」と言って励ましてくれた。その言葉だけが支えになっていた。

もしかしたら、本当にみんな分かってくれていたのかもしれない、辛いからといって投げやりにならず、自分が思うベストを尽くそうとしてきたことは間違いじゃなかったのかもしれない、と、その夜の感動的な出来事を経て、初めて本当に実感できたのだった。

赤いポーチとお財布。自分では恥ずかしくて選ばない鮮やかな色。休日の家族とのお出かけに活用している。つい気分がはずんでしまうような、ウズベキスタンの春を感じさせるアイテムである。

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