#思い出 ウズベキスタンのハーブティー
ウズベキスタンでは温かいお茶をたくさん飲む。
私が最初にウズベキスタンに赴任したとき、「チッラ」と呼ばれる酷暑だった。当時は名古屋も死者が出るほどの暑さだったけど、日本のような蒸し暑さはない代わりに、日差しが半端なく、地元の人でもずっと外にいると病気になるという暑さだった。
ウズベキスタンの食事は非常に油っぽい。その意見に心底同意してくれたのは日本人よりもバックパッカーズホテルで同室だったシンガポール人だった。「Too oily, too heavy!!」と盛り上がった。食事以外は大好きということで、ウズベキスタンに来るのは2回目というキャリアウーマンであった。
油っぽい料理の代表格、プロフ(ウズベク語ではオッシュという。)をまずは食べることになる。ウズベキスタンの伝統料理の代表格だから、最初にウズベキスタンに来る人は必ず勧められるだろう。
プロフは美味しい。これは間違いない。お米料理は日本人には嬉しいし、ウズベキスタンの肉も野菜も日本よりもずっと滋味があり、美味しい。ただ、油で炊いているので、油でじっとりと包まれている。一皿全部食べるのはなかなか普通の日本人には難しいのではないか。私は、赴任して半年くらいたった頃、有名な「プロフセンター」の美味しいプロフを、お客様を案内していた手前、ちょっと見栄を張って、完食したことがある。始めて完食したときは、「ああ、これで私もウズベクに慣れたんだなあ」と感慨深かった。
何が言いたかったというと、ウズベキスタンの料理は脂っこいので、夏でもとにかく温かいお茶を飲まないと危険ということである。温かいお茶が、食事の油を流してくれるらしい。私は調子にのって、日本のノリで「油っぽい料理にはビールでしょ〜!」と、がんがんビールを飲んでしまった。完全にアホなのであるが、教科書通りに腹をこわし、正露丸もビオフェルミンも効かず、地元の薬でようやく体を起こせるようになるという顛末であった。
ウズベキスタンでは食事のときに必ずポットのお茶を頼んで、紅茶なのか緑茶なのか、レモンを入れるかいれないか、砂糖を入れるか入れないか、それらの組み合わせがとても大事なようである。私もいつもウズベキスタン人と食事をすると、「先生紅茶ですか緑茶ですか」と聞かれ、「どっちでもいいなあ〜好きなのでいいよ〜」と思いつつ、その時の気分で紅茶レモンティーにしたり(ウズベキスタンのレモンティーは半端なく美味しい)して楽しんでいた。
なおお茶の作法について、共通しているのは、お茶碗をきちんとペーパータオルでふくこと(これは食事の皿やカトラリー全般で行う)、お茶をついで渡すときは片方の手でお茶碗の下を持って渡すこと、その時もう片方の手を胸に当てること、お茶をもらう人も片方の手を胸に当てて受け取ることではないかと思う。人によっては、最初についだお茶は毒味のためついだ人がもらい、二杯目から人に配るというマナーがあるようである。おそらく地域によっても微妙な違いがあるんだろうなと思って興味深いところである。
帰国した今は、もっぱらサマルカンドのバザールで買ったハーブティーを楽しんでいる。一袋しか買わなかったのが本当に悔やまれる。黄色い小さなお花などが入っており見た目に楽しいし、ほろ苦い味わいがウズベキスタン生活で好きだった草花の風景を思い出せてくれるようだ。