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【創作エッセイ】アイドルになれたら㉖

※作中に登場する団体や固有名詞等は、現実とは一切関係ありません。全て「うゆ」の夢をもとに書かれたフィクションです。


私の選択は…。


Side of マネージャー

(社長室にて)

社長「お疲れ、急に呼び出して悪いね」

マネ「いえ…話って何ですか?」

社長「急な話で悪いんだけど、来月から部署を異動してほしいんだ」

マネ「異動…?」

社長「ああ、ちなみに異動先は総務だ」

マネ「えっ、本当ですか?!」

社長「うん、入社面接のときから”いつかは総務に”って言ってただろう?それで今までの働きぶりを見させてもらってたんだけど、今なら適任だと思ってね」

マネ「それはありがたいですけど…でも今のマネージャー業務はどうなるんでしょうか?代わりの方はおられるんですか?もしもう決まっていたら、引き継ぎとかしておくべきですし…」

社長「ああ、それは別に大丈夫だよ。僕の方から伝えておくから」

マネ「でも…」

社長「大丈夫、社長の僕を信じなさい。僕も君を信頼してるから、こうして昇格させるんだから」

マネ「…でも」

社長「わかったね?じゃあもう戻っていいから」


結局その日はモヤモヤとした気分で退勤した。

いきなりの部署異動宣告、しかもかねてより願っていた総務。嬉しさの反面、何故このタイミング?何故私が選ばれたんだろう?経験のない私に務まるだろうか?と不安が押し寄せる。

そして何より、私が異動したらWellBeeと直接的に関わる機会が激減する。代わりの人もまだいないようだし、業務の引き継ぎなしで私がいなくなってしまったら彼女たちの活動に支障が出てしまうことは避けられない。こんな状況でありながら、社長が呑気に「僕を信じて」と言っているのも変だ。

ぼんやりと浮かぶ街灯が、この不安を助長させているように感じる。

我が社の看板アーティストであるWellBee。デビューの前年に新卒でマネージャーとして入社し、彼女たちの血の滲む努力も涙も全部見てきた。ときにはぶつかり、ときには弱音を吐き、私にも成長の機会を与えてくれた。そして何より、着実に大衆人気を獲得していく中でも本当に謙虚で、私にも礼儀や感謝を日々欠かさず表現してくれる。そんな彼女たちを路頭に迷わせるわけにはいかないと、私のプライドが叫んでいる気がした。

『…信じてた人が信じられなくなるって、こんなに怖いんだなって』

ふと、昼間にうゆさんがこぼした言葉を思い出した。今の私も、もしかしたら同じ状況なのかもしれない。

ずっと信じてついてきたけど、本当にこれからも信じていっていいのだろうか。もしWellBeeが活動できなくなったら、私がこの会社で働く意義ってあるのだろうか。
私はどうしたらいいんだろう。異動って、こちらから覆すことはできないのかな。もしできなければWellBeeはどうなるんだろう。

そんなことを考えて夜を明かしてしまい、結局一睡もできなかった。



キャプション

「U-MELLOD」(ユーメロディ)
由来:「君(U)に向けて(-)音楽(MELLOD)を届ける」という意味を持つ5人組ボーイズグループ。
どんなコンセプトも消化するため、天才アイドル集団という異名を持つ。
ファンダム名は「U-HALMONY」(ユーハーモニー、通称ユハモニ)。
・ジュンホ:95年生まれ。長男。メインラッパー。
・シウ:98年生まれ。リードボーカル。
・ジョンソク:99年生まれ。リーダー。メインボーカル。
・ジヒョン:00年生まれ。メインダンサー。
・チャンミ:01年生まれ。サブラッパー、ビジュアル担当。愛称はローズ。

「WellBee」(ウェルビー)
由来:「音楽を通じて”自分らしい豊かな生き方”(=ウェルビーイング)を実現する」「全てをこなすオールラウンダー集団になる(doing WELL + BEcomE)」の意味が込められた5人組のガールズグループ。
現実に少しだけ幻想が混ざったような世界観を得意としており、ダイナミックなダンスと繊細かつ緩急の効いた歌声に定評がある。
ファンダム名は「WeBelieve」(ウィービリー)。
・レミ:99年生まれ。長女兼リーダー。ビジュアル担当。リードダンサー。
・うゆ:01年生まれ。WellBeeの音楽PD。リードボーカル。
・ルイ:02年生まれの01Line(早生まれ)。メインダンサー兼サブラッパー。
・カヤ:04年生まれの03Line(早生まれ)。メインラッパー。
・ヒヨ:04年生まれ。マンネ。メインボーカル。


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