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【山の話】身近にある遭難のリスク

2019年8月19日、20日 僕らは富山県にある立山連峰と剱岳(2999)に向かった。
念願の剱岳。それまでの準備段階として、爺ヶ岳ー鹿島槍の小屋泊縦走や八ヶ岳のや山梨県にある十二ヶ岳に登った。

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山と高原地図(2018)

今回のルートは、長野県の扇沢駅より黒部アルペンルートを利用し、室堂からスタートする。室堂を出発して、雄山→大汝山→富士ノ折立を立山を制覇その後、真砂岳→別山→劒沢キャンプ場→剣山荘までが1日目だ。2日目は朝早く出発し剱岳を目指してピストンで帰る予定だ。

結果として、1日目の正午から雨が降り始め土砂降りハイクとなる。2日目も朝6時くらいから雨の予報で、岩場で鎖やはしごを使う剱岳への登頂は困難となり、手前の前劒(2813)を今回のピークとした。

さて、本題の身近にある遭難のリスクについて話そう。1泊2日の立山・劒大縦走は不運にも雨により阻まれたわけなのだが、その悪天候の中、山を歩くこと自体が遭難への一歩なのだ。

ちょうど、雨が降り始めたのは富士ノ折立から真砂岳に向かう途中だった。お昼過ぎより雨がぱらつき、予報通りの展開だった。午後から天気は悪くなるということは既に調査済みだった。しかし、痛恨だったのが、相方(副部長)がレインウェアを忘れてしまったことだ。長時間のハイクや泊りとなると、万が一に備えて携行しておくのだが、今回はアタックザックをバックパック内に収めた関係で漏れが生じてしまったのだ。加えて、僕も慣れから荷物のリストを伝えなかったことが要因だろう。

副部長は簡易レインウエアを装着した。ズボンや靴の浸水までは時間の問題だった。13時過ぎくらいだったか、目的地の別山(2880)に到着した。雨はパラパラからザーザーに変わっていた。本来なら、縦走時の昼食にかなりエネルギーが高い食事を補給する。例えば、カップラーメンにおにぎりとか。ゆっくり火器を使用して炭水化物を摂取し長距離歩行に備える。今回は、雨により簡単な食事。おにぎりやゼリー飲料など立って食べられるもので凌いでいた。

別山まで来れば、あとは劒沢キャンプ場(2520)を経由して剣山荘に向かうだけだ。事はここで起こった。別山は地図上では、点であるが実際は平らで結構広い所だった。右側に細く長い登山道があるが、どうやら行き止まりのようだ。僕ら右側に迷わないように直進した。特にこの辺に標識になるようなものはなかった。次第に行くと、登山道が消えた。ここで行けなかったのが、地図を確認しなかったことだ。現時点で現在地を見失っていることに気づいていないのだ。その理由には雨も関係する、紙製の地図を出すことが手間だったのかもしれない。登山の基本では、道に迷った場合は来た道を戻り現在地を確認することが大事である。その事を怠ってしまった我々は、道が消えた地点より左側(下方)に行くことにした。その時、雨はあまり降っていなかったが、やや霧がかった状況で遠くの景色を見ることはできなかった。

かなり砂利が多く足場の悪いところを下る。明らかに登山道に繋がらないような感じがある。見当違いな場所にいることに不安が募る。かれこれ20、30分くらい右往左往している気がする。遭難の多くは、下山で起きる。1度登ってきたところでも下りになると景色が変わって見える。今までも何度も経験したことだ。その時、便りになるのがGPSだGPS機能は現在地を教えてくれる。僕はアウトドアウオッチングを販売するSUUNTOの時計を使っている。あまり使いこなせていない時計を必死になっていじる。GPSか得たデータを地図と照らし合わせて、およその現在地を見つける。そこからコンパスを利用して登山道に戻れるであろう方向に進むのだ。ちょっと強引な所もあって、よくわからない岩場をよじ登ったりもしたので危険回避は最優先だ。(その時のパーティーの経験値や体力の考慮も重要になってくる)

無事に見迷いをした細い登山道?に戻る事ができた。ここが登山道なのかわからないが、別山にある行き止まりルートは標識なので分かりやすくしてもらえると助かる。恐らく、地図上にある行き止まりの点(2880地点)を避けた結果、本来下ることができるルートとの間を直進してしまったのだろう。下山ルートは地図に対して下方であり、左側にあったのだ。これで、剣山荘に行ける。劒沢キャンプ場への分岐点を慎重に探す。

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遠くに劒沢キャンプ場が見える(副部長撮影)

劒沢キャンプ場に着いた時は、15時くらいだっただろうか。雨がシトシトと降っている。こんな天気だからか、テントも数えられるほどしかない。なんだか、山と山を繋いだだけでなく、緊張と不安からの解放からかほころんだ。雨の中でも変わらず、はしゃぎながら写真を撮った。正直、僕らは誰かに写真をお願いするのではなく、自分で撮る派だ。薄暗くなって、靴下もびしょびしょになって、剣山荘に向かった。

山岳会に入っているわけでもなく、ただの登山者としての考えだが、天候不良時の登山は道を失うかもしれないという危機感を持つことが大切だ。そして、それは特に下山で起こりやすく、時間に余裕を持った行動が必要になってくる。また、自分一人で登ることができる知識や判断力、歩行技術や体力をきちんと確認しよう。仲間がいる時は、一番未熟な人に合わせよう。万が一に備えて、衣類などの装備や予備の食糧を持とう。

せっかく、こんなタイトルにしたのだから、少しでも読んでくれた方のためになれば幸いだ。

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