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リスクマネジメント

昨年、定食チェーンの大戸屋が、外食グループのコロワイド傘下になりました。大戸屋の臨時株主総会で社長ら取締役10人が解任されました。コロワイドは、牛角(焼肉)やかっぱ寿司なども傘下にしています。コロワイドは2019年10月に大戸屋の筆頭株主になり、2020年にTOB(株式公開買い付け)を実施し、保有比率を47%まで高めました。そして経営陣刷新。このケースは同業種(ファンドではない)による敵対的買収であり、参考事例としてリスクマネジメントについて考えます。買収防衛策の説明ではありません。どうリスク対応すべきかの学びです。

大戸屋はメニューの値上げを実施して以降来客が減少し、売上の前年割れが続いていました。さらに従業員のバイトテロ(不適切な動画のSNS投稿)が繰り返され、イメージ低下の打撃をくらった。これに対し、一斉休業(1日)で従業員の再教育と店舗清掃を行い、役員報酬も減額した。そんなドタバタの中で、コロワイドが筆頭株主になりました。当初は友好的な資本・業務提携を考えていたものの、大戸屋が抜本的変革に動かないことで、敵対的買収に発展しました。

大戸屋は、コロワイド側が手の内を明かしていたのに防衛できなかった。ここまでで、いくつかのリスクが潜んでいます。まず①値上げ。大戸屋のコンセプトは「家庭料理のような定食を気軽に食べられる」。これが値上げで崩れた。象徴的なのは、好評の「大戸屋ランチ」(720円)が廃止され、代わりに「大戸屋おうちごはん定食」(870円)になったこと。メニュー全体も「健康志向」、「女性向け」になった。これで若い男性客がかなり離れました(たまらず、その後ランチを790円で再開)。そして②バイトテロ。これは値上げと同じようなタイミングで起きています。発生後に上記の対応をしていますが、事前の従業員教育が不十分だったことは否定できません。その上での③買収劇です。筆頭株主(コロワイド)との建設的な対話を拒み、結果的に敵対的買収に発展してしまった。①②③の潜在(顕在?)リスクを適切にマネジメントできず、ほとんどの経営陣が解任されてしまいました。

ここでの学びは「事後対応では不十分」ということ。大戸屋も、メニューの再見直し、従業員の再教育、一定の買収防衛策を実施していますが、全て事後です。変化に応じて事前にリスクを想定することが、いかに大事かがわかります。これは経営レベルの話ですが、日常業務でもリスクマネジメントが重要です。ちなみに買収した側のコロワイドも、現在は非常に厳しい経営状態だそうです。ビジネスは本当に難しいですね。

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