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広島観光レポ~宮島・前編~

迷っていた。
私たちは朝から迷っていた。
宮島まで、いったいどのルートで向かおうか。
予定ではJRで宮島口まで行き船で厳島に渡るルートだったが、生憎JRは遅延。
他にも路面電車の路線で宮島口まで向かうルートもある。広島の街並みを楽しめるし料金も安いとはいえ時間がけっこうかかる。
広島港あたりから厳島に直で行ける船があるのも知っていたが、まず広島港まででるのに少し距離がある。
朝食を摂りながら幾度かルート検索サイトとにらめっこしていると、原爆ドーム付近の川から厳島まで船で行くルートがでてきた。
これならアクセスしやすい。
でも船ってそんな急に行って乗れるもんなのか???

結局このルートは大正解だった。
念のため乗船に予約が必要だった場合は広島駅まで戻るつもりでいたがその必要もなく、少し料金は上乗せしたものの世界遺産の原爆ドームからはじまり、建物や橋の歴史などの解説を見ながら世界遺産の宮島まで直で行くことができた。
天気が良く、波もそこまで高くなかったのも幸いしていただろう、楽しく乗ることができた。
少し危なかったのは船の揺れだろう。
横揺れは平気なのだが縦揺れ、特に重力がかかる事が苦手な私は、幾度か船が波に乗り、跳ねる際に身体に力を入れて耐える瞬間もあった。

てか、ジェットコースターしかり高層エレベーターしかり、重力がかかるとこう、胃とかの内蔵がウェッと持ち上がり頭から血がサーッと引く感覚にならないか?
絶叫系好きな人達はあれを楽しんでいるのか??
あれはまるでパニック発作が出たときに似た気持ち悪さとコントロールを失う不安感があるぞ???
それを楽しんでいるのか????

もう少し海が荒れていたり波が高ければ、乗船時間の半分ぐらいは耐える時間になっていただろう。


ともかく、宮島。
船を降りると船着き場にボートなどが停まっているのが見える。
そしてすぐに浜、岩肌、小さな鳥居、山。
ゲーム脳で申し訳ないが、「ご……Ghost of Tsushimaや!!」と思った。
私の中の「和風の島の風景フォルダ」にはそれぐらいしか参照できるものがない。

一番大きな船の待合室入り口からは、ようこそ、というアナウンスと共に鹿には触らないように、と多言語でのアナウンスが流れている。
奈良の鹿がお馴染みの私にとってはちょっと意外な注意点だ。

奈良もここ宮島も、どちらも鹿は「神の使い」とい言われることがある。
特に奈良では落語「鹿政談」も生まれるくらい「神の使い」という話しはよく知られていることだし、鹿が歩行者と一緒に横断歩道を渡っていたり、雨宿りをしていたりするのもお馴染みで、粗末に扱ってはいけないが馴染みのある生き物、という印象だ。
ご存じの通り、鹿せんべいも手渡しで食べてもらえるし、鹿によってはお辞儀をするとお辞儀を返してくれたりもする。
そういえばずーっと前に放送されていた奈良を舞台にしたドラマ、万城目学原作『鹿男あをによし』でも玉木宏が鹿と“なかよく”していた。

宮島はそれよりもやや、触れてはいけない生き物感がある。食べ物をあげるのもNG、触れるのもNG。
寄ってきたら一緒に歩くのはOKかな。
さながら猫カフェか?
おそらく奈良の鹿は鹿苑で保護されたりある程度手を掛けている一方で、宮島の鹿はもっと、“野生の生き物”という位置付けが大きいのかなと思う。
生き物と一緒に生活するのは大変なことでもあるんだろう。
船の待合室入り口も、扉は開け放してはいるものの、キーンというモスキート音のような音が流れていた。
恐らく鹿対策か、トンビなどの鳥対策だろう。

船着き場を降りたあたりから厳島神社までは、土産物屋や食べ物屋、宿屋が立ち並ぶ参道となっている。
所々からは牡蠣を焼く香ばしい匂いがする。
昔からあるだろう土産物屋も多いが、レモンなどを使ったドリンクを売る新しい店、もみじ饅頭の店、スターバックスもあった。
メインの表参道通りには軒先から道にかけて屋根が伸ばされている所が多く、日差しのきつい中とてもありがたかった。

平日とはいえちらほらと修学旅行か郊外学習なのか、学生の姿が見える。
集団で集まりガイドさんから説明を受ける者、グループに別れて散策する者、「揚げもみじはあっちやで!あの、赤い看板の先をな……、見えるか?あの看板。」とお店のおばちゃんから案内されている小学生もいた。

昼前に島に到着したということもありお腹もすいていたが、どうしてもどの店も混雑している。
まずは参拝を済ませようと歩くなかで、先ほど小学生が案内されていた「揚げもみじ」を売っている店にたどり着いた。
串にささった揚げもみじはひとつ200円。
すこしこれでおなかを持たせよう。

揚げもみじは中身が選べる。
つぶ餡のほかにきちんとこし餡もあり、レモン、チーズ、クリームなんかもあった。
私はレモン、連れはこし餡を選び、腰かけて食べる。
お腹が空いていたということもあるだろうが、想像以上に美味しい。
サクッとした衣、ホットケーキに似た甘めの味わい、からのもっちりしたクリーム。
えっ、おいしい。

私も連れも甘いものが好きということもあるだろうが、口に合いすぎて結局島を去る前にももういちど、とリピート揚げもみじをしたほどだった。
広島にくる前にも確かに「揚げもみじは美味しいから食べてみて」とオススメされていたが、私もこれはオススメしたい。
おいしいから行ったら一回食べてみてよ!


商店街を抜けるとすこし開けた場所にでる。
鳥居を前に海岸に松が立ち並ぶこの場所からは、その時の潮位にもよるだろうが海岸におりることができる。
対岸の街並も美しく、ここで写真を撮ったり海に足を浸けたり、前撮りだろうか、撮影をしている着物の新郎新婦の姿もあった。
立て看板には「大鳥居付近は厳島神社の土地なので貝を取らないで」という表記もあったし、おそらく潮干狩りのようなこともできるのだろうか。

その海岸沿いを進むともう、厳島神社の大鳥居が見える。
厳島神社境内からでなく、このすこし斜めの角度から鳥居が遮られず見える場所も、撮影スポットになっていた。

参拝料を払って一方通行の境内に入る。
ここでもゲーム脳を発揮する私。
第一印象は、「戦国BASARAのステージや…!」
やはり水の上に社がある景色というのは中々お目にかかる機会はなく、ゲームやテレビの中のものという印象が強くなる。
世界遺産だけあって境内の中には海外から来られたであろう人々も多く、本当に多国籍な雰囲気。
自分達で説明をよみながら、周りで英語や日本語のガイドを耳にしながらの参拝となった。

あんまり詳しくはないのだけれど、ここは奉られているのが
市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)
田心姫命(たごりひめのみこと)
湍津姫命(たぎつひめのみこと)
と、全員女神だったのも印象的だった。

全体的に朱塗りで、軒先の灯籠の位置も低く、水面に浮かぶ能舞台もきっとここで舞台が開かれていたらとても綺麗だろうなぁと想像にかたくないほど。
有名な大鳥居以外にもとても幻想的な建物だった。

柱の根元の水に浸かっている部分の補修や、歩く廊下の隙間があくように造られている部分など、いつの日か見た旅番組で見た豆知識を実際に自分の目で確認するのも楽しい。

境内から大鳥居が一番綺麗に見える場所には行列ができ、皆が順番に写真を撮っていた。
まだ少し残っている浅瀬に降りて、できるだけ近くまで行こうとする人もいた。
あまり並ぶのに興味を持てなかったため、別の場所から大鳥居を撮影したが、もうどこから撮影しても綺麗な風景だ。

おみくじもせずにさっさと通り抜けてしまったが、境内出口付近では集合写真を撮る修学旅行生達や思い思いに海岸べりの石垣に腰を掛けてのんびりする観光客など、みんなそれぞれに厳島神社を味わっている様子だった。

厳島で観光できる場所はそう広くはない。
何度も商店街や厳島神社の周辺を行き来することになる。
寺社仏閣はけっこう好きで色々観光にも行くが、時間をおいてもう一度参拝料を払って見てみたいと思ったのはこの厳島神社が初めてだった。
それほどに、神社と満ち干きする水の表情は美しかった。


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