見出し画像

巡り合わせってあるよね

平日の時間をほぼ自分で味わいながら過ごせるという、ある意味、ぜいたくな日日に突入している。望んだことの一つであったので、いつまでこうやっていられるか、という想像はひとまず置いておいて、日日の一端で感じたことを書いてみようと思う。

1.キャリコンという資格、今年は更新初年 

今年、キャリアコンサルタントの資格更新年。5年ごとに更新する資格で、国家資格となってから、今年がその初年。更新のための講習として知識8時間と技能30時間と習得時間が決められていて、自分で主催団体やテーマを選んで講習を受ける。

昨年のコロナ禍で、講習はすべてオンラインになった。実は、これは意外と幸いなことであり、通学時間を考慮しなくてもよいので、土日にかなり固め打ちで受講した。事前課題もあり、終日という講習も多いので結構ハードだったが、仕事もおんなじ状況だったから感覚が麻痺していた。おかげで、秋にスタートしたWSD(青学のワークショップデザイナー育成プログラム)受講前には、予定どおり更新条件を満たせる時間数を修了できていた。

2.ふらりと受けた講習

キャリコンの資格は、氷河期世代の就職支援など、国の後押しもあって、資格取得者を増やそうという流れがある。私自身は企業のなかで若年層の教育に接してきたので、今後、生かせる場があるとすれば、若者の就職支援と考えていた。その流れで、1月に入って、「若者支援」のテーマを受けてみようかと申込んだ。何しろ時間はたっぷりあるので。

私が想像していた「若者」は、自分基準でいう普通の大学生だったが、事前課題で視聴したビデオ教材には、引きこもり経験のある男性と講師との面談風景があった。「困った。私には対応できそうもない・・」という思いがよぎりつつ、思い直して、改めて視聴したとき、印象的だったのは、「支援って言葉、上から目線だよね」だった。助けてあげる、っていうニュアンスを含む・・・のか。引きこもり経験の男性が、想像以上に饒舌に話し、講師の接し方も、絶妙な距離感で、むしろ興味が湧いてきた。

3.実に丁寧な場づくり

実際のところ、この講師の方は、講習にあたり、私たち受講生の心理を考え、実に丁寧に進められた。更新講習のなかで、受講にあたっての前提や場づくり(フロアルール)をここまで丁寧に話される方は初めてだった。

たとえば、話しやすい雰囲気をつくるために、共通するのは、何よりも安心してその場にいられること。

①「Good&もっと!」を心がける。「いいところを10こ、もっとこうしたらを1つ」伝える。もっと、ばかりを言われ慣れている人が多いから。

②「パスOK」のルールで。話す自由・答える自由のために。

③「想像力」が問われる。自分の経験をかぶせることなく、自分は想像できていないという前提で想像してみる、知ろうとする、教えてもらう。

④きっかけをつくる。いわゆるアイスブレイク。今の気分を天気で表現してもらい共有する、朝ご飯は何?のように事実として話せそうなことを話してもらう、じゃんけんをして「あいこ」(勝ち負けでなく)をめざす。それぞれに理由がある。

4.一緒に考える姿勢・距離感、そして覚悟か

事前課題のビデオでも、「あれ、困ったな。こういうテーマはちょっと」と思って参加したが、それでいいんだ、と。しかし同時に、「一緒に考えよう」という姿勢が、若者、特に問題を抱える人にとって大事と。確かに、意外と身近に、そういう存在がない場合は多いかもしれない。それが「支援」ではなく「応援」であり、一緒に対等な気持ちで考える、ということが含まれている。

そして、その適度な距離感にあるのがキャリコンという立場。親や先生などのように近すぎることはなく、「明日会わないという選択をできる」ほうが悩みは打ち明けやすいとも。ただ、抱えている問題によっては、きれいごとでは済まないので、覚悟も必要だと思う。それは、継続して関わるという覚悟、といえばよいのか。

5.キャリコンはひとくくりにできない

この講師の方は、今回はキャリコンの更新講習として一領域を担当されているが、NPO法人を立ち上げ、草の根活動のように、地域でも、学校でも、そして、人が避けようとするであろう少年院や刑務所といった場でも、一人でも多くの「若者」の自立に向けて関わろうという姿勢で、活動を継続されている。

キャリコンといっても、企業内・自治体・民間という機関別、雇用・教育・医療・福祉など、対象別も含めると活動の領域は様々で、ひとくくりにはできない、ということを改めて感じたし、今回の受講で、そのことを認識し、自分の理解のなかでも、ネットワークとしても広がりをもつことができて良かった。意味を持つことがあればいいなと思う。

6.生活のなかだからこそ、一隣人として

最後に、キャリコンの倫理綱領にある、「個の尊厳を侵さない関わり」を考えるにあたって、1つの映画を紹介された。『わたしは ダニエル・ブレイク』2016年公開の映画。ケン・ローチ監督が引退を撤回してまでも創った映画ということで、Amazonで観ることができた。その当時は巡り合わなかったが。

講師が繰り返し伝えたことの一つに、助けを必要とする人は、専門機関につながっていないほうが多い。だから、キャリコンでなくてもよい。一隣人として、生活のなかでできることもある、ということを知ってほしいと。本質的に、辿り着くのは、そういうことなのかな。その積み重ねが社会を作っているということを、この方は実感されているのだ。この時期、このタイミングで受けたこの講習も「巡り合わせ」だと思えた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?