小説27「説教」


何か有名らしい人に、ずっと説教を受けていた。私は人の頭くらいの大きさのフワフワしたパンをずっと食べていた。パンはいつまで経っても無くならないので、とても心強かった。

「その問題の原因どこにあると思う?」
彼は椅子に座りながら、私に言った。私はそれに対する明確な解決策を持ち合わせていた!しかし、それを口にすることができない。パンが口の中にあって、うまく話すことができないのだ。
彼は続ける。「わざわざおろかだと思う女を側に置いて、自分が優越感を感じるためだけに他者を利用して、挙げ句の果てに自分は他人の人生とは関係ないというスタンスをとっている。君は人間として不良品である!欠陥品である!」
今度は彼のその批判に対して、返す言葉を持ち合わせていなかった。間が悪いことに、先ほど口を塞いでいたパンの咀嚼は完了し、食道を通過し、胃へと達しようとしていた。私はやはり沈黙を守るしかない。手持ち無沙汰になった私は、仕方なくパンをかじった。

私のその様子を見た彼は、我慢ならなくなったといった感じで、強引に席を立った。椅子が後ろへ倒され、大きな音がした。彼は扉から出て行った。私とパンだけが残された。パンは少しずつ小さくなっている。



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