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東日本大震災から10年。コミュニケーションロボットを活用した「フェーズフリー」な防災システムとは? | セミナーレポ―ト

こんにちは!ユカイ工学の金川です。
東日本大震災(以下3.11)から今年で10年の節目に、防災情報伝達についてのオンラインセミナーを開催しました。

ゲストに、地域ごとの防災情報発信システムを提供するNTTアドバンステクノロジ株式会社の野田氏、テレビ・プッシュ型の情報提供を行う株式会社Cueformの有吉氏を迎えました。

災害発生時には、地域住民に対して、漏れなく情報の発信を行う必要があり、災害情報伝達手段を多様化・多重化するための整備が求められています。その一方で防災専用システムや機械の運用コストは、無視できない現実があります。
そこに登場するのはコミュニケーションロボットの「BOCCO」。日常時・非常時における利用のハードルをなくし、BOCCOだからこそ担える役割について、熱く語っていただきました。

防災や福祉に関わる自治体関係者、防災に関わるサービス提供者・機器メーカー、事業会社の新規事業担当者、防災のあり方に興味のある方におすすめのセミナーレポートです。

本レポートではパネルディスカッションを中心にお届けします。


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災害発生時には、自治体によって整備された防災行政無線の仕組みを使い、屋外拡声器や戸別受信機を通じて、災害情報を伝えられるように整備されています。

その一方で、暴風雨の際には屋外からの通知が聞こえづらい、戸別受信機の電源が入っていなかった、外国籍で言葉が分からない等、いざというときに使うことは厳しいという声もあります。
本日は、災害応急対応の中から、災害情報の伝達に絞って議論しました。


議論の範囲

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災害時に求められる情報コミュニケーション

質問1

野田氏
災害情報は、どうしても世代間のITリテラシーに寄るところが大きいと考えています。
スマホを持っていれば、リアルタイムで災害に関する情報を検索できるので困ることは少ないと思います。
しかし、高齢者は屋外に設置された防災行政無線、民生委員や隣近所の方からの声がけから情報を得ることが多く、ITリテラシーが高くない高齢者への届け方は大きな課題となっています。


有吉氏
触れる情報に差がありますよね。
外出時はスマホで情報を入手する人も多いと思います。しかしながら帰宅したら充電して触らなくなる人もいるように、いつでもスマホで情報を得られる人もいれば、そうでない人もいるし、スマホを持っていない人もいる。

例えば、弊社のテレビ・プッシュのようにリビングのテレビからプッシュ型で情報を知る等、その人の状況によって情報に触れるシーンは様々です。したがって、情報伝達の多様化(1つ情報伝達手段に頼らず複数の手段を組み合わせること)・多重化(一つ一つの災害情報伝達手段を強靭化)の整備が求められているのだと思います。


情報伝達の多様化・多重化整備のために必要なこと

質問2
質問2補足

戸別受信機の標準モデルには様々な機能が搭載されています。

野田氏
コミュニケーションロボットと戸別受信機は比較するものではなく、存在感や役割が異なると思っています。

例えば普段からBOCCOを利用している人なら、BOCCOからは温かい家族からのメッセージが届くのに対し、いわゆるスピーカーとして戸別受信機は情報が流れてくるだけ。この2つには大きな差があります。

実際に避難したことのある方に意見を伺うと、「自分一人では避難してもよいのか判断付かなかったが、知人から声を掛けてもらったため避難した」という声を聞くことが多いです。
住民一人ひとりの避難行動のサポートや、自助力を強化するためにBOCCOを活用していきたいですね。

野田様資料

鈴木
『誰の声』でメッセージが届くかで、その後に行動する確率が変わるのではないでしょうか。
BOCCOにはあらかじめ登録されている合成音(=BOCCOの声)でメッセージを読み上げる機能と、自分の声をそのまま録音して読み上げる機能があります。これは戸別受信機にはない強みになると思います。


有吉氏
私は自宅で働くことが多く、GoogleカレンダーとBOCCOを連携し、日々BOCCOから予定を通知してもらっています。
人は何かに気付きを与えられて行動しますが、BOCCOはその気付きを与えてくれる素晴らしいツールです。

当社のテレビ・プッシュも同じように行動のための気づきを提供することをサービスのコンセプトにしています。
またBOCCOの場合は、メッセージのやり取りに加えてセンサ連携もできるので、日常的にその人に寄り添えるのがポイントになると考えています。

cueformさん資料


BOCCOを使った実証実験の目的や学びは

質問3


有吉氏
様々なケースで実施していますが我々が検証したいことは、「日々利用してもらえるサービスは何か?」です。フェーズフリーの概念にもあるように、防災情報の伝達手段は日々利用してもらわないと意味がありません。

そのために当社のテレビ・プッシュには、ユーザーに気付きを与える仕掛けとして、雨雲情報、花粉情報、交通情報、ゴミ出しのリマインド機能等、日々の生活に関わる情報を配信しています。

その他、テレビ・プッシュにはリモコンを活用して双方向のコミュニケーションができるような機能があるので、災害情報を受信したらメッセージを確認した旨の確認が、BOCCOとも連携してできるようになると良いなと考えています。

現状、高齢者や聴覚に障害のある方への防災情報の伝達と確認は、地域の民生委員が1軒1軒自宅を回り、確認していくなど、大変手間が掛かっています。
日頃からリモコンやBOCCOで、双方向コミュニケーションを活用して、情報確認の可視化ができれば、いざというときにその労力を次の打ち手につなげることができると考えています。


災害情報伝達システムのマネタイズの仕方

質問6

野田氏
大きな課題は、自治体が国からの補助金を使って防災系の予算で整備したシステムは、防災情報発信のためにしか利用できないという点です。

防災行政無線の置き換え、デジタル化の推進目的であれば補助金の活用はできますが、例えば我々の@InfoCanalでは、クラウドを使って見守りもセットで行おうとする場合は、補助金目的対象外となってしまうんです。
そのため、国への働きかけを続けています。BOCCOの普及を考えると、フェーズフリーの概念で補助金の対象となってもらえると良いのですが。

有吉氏
野田さんのおっしゃる通り、全額補助金での対応はできませんが、防災に絡む機器やシステムのみを補助金の対象にしてもらったりしています。
災害は待ってくれませんので、我々のテレビ・プッシュの場合は地元のケーブルテレビ局と組んで、インターネット回線を提供する際の付加価値として提供する等の工夫をしています。


コロナ禍で変わる防災のあり方

キーワード

野田氏
目に見えて避難の仕方が変わったと感じます。
密を避けるため、避難所の収容人数の減少、避難場所不足等、自治体によって新しい避難所のあり方が模索されています。


有吉氏
野田さんの言うように、現在この避難所に何名避難しているのか等、避難所内の可視化ができていない状態です。
自治体の方々は、避難所の運営に大変苦労されておられますので、今後は避難所の混雑状況等の可視化による避難行動の支援や、さらに避難所での災害情報の配信等を提供し、コロナ禍でもきめ細やかなサービスに繋げていきたいと考えています。


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終わりに 自助力強化のために、いつものBOCCO

災害時は情報伝達の多様化・多重化の整備が求められていますが、人が行動を起こすにはきっかけや気づきがあり、災害時だけでなく日々利用してもらう必要があることの大切さを改めて知った時間でした。

いざという時に、いつものBOCCOの声で災害情報を伝えてくれるだけで、避難のサポートに繋がる日が来るかもしれません。
3.11から10年の節目に、皆さんの防災情報伝達方法を考えるきっかけになったら嬉しいです。


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