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働き方改革をコミュニケーションロボットで?医療業界での取り組みとは。

こんにちは!ユカイ工学の金川です。

2021年第1回目のオンラインセミナーは、医療現場の働き方改革を研究している東京医療保健大学の中島先生と、業務改善のために革新的なナースコールシステムを開発しているケアコムの遠藤氏を迎えて開催しました。

IT活用が進みにくいといわれる医療業界で、既存のシステムや仕組みに、コミュニケーションロボットBOCCOBOCCO emoをどう取り込み、どんな働き方改革に着手しようとしているのか?
BOCCOやBOCCO emoだからこそ担える役割について、熱く語っていただきました。

医療従事者、医療業界向けシステムの開発企業、働き方改革に興味のある方におすすめのセミナーレポートです!

スピーカー

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登壇の様子

各社の紹介と、ユカイ工学との出会い

中島先生
東京医療保健大学は教育やリベラルアーツに注力し、日本で最大の看護学部生を輩出している、学校法人青葉学園系列の大学です。

看護職は人の幸せを支援する仕事です。
しかし、看護職自身の人生満足尺度※ の調査結果が一般人平均値より低い結果だったのです。
何とか看護職自身のウェルビーイング向上をしたいと願いその目的達成のために研究を開始しました。

看護師が毎日楽しく仕事ができるための方法を探していたところで、BOCCOと出会いました。現在は大学病院等の複数のスタッフルーム等にBOCCOを設置し、実証実験中です。

※人生満足尺度とは?
幸福度の総合指標として広く用いられている指標です。SWLSは、Satisfaction With Life Scale の略です。


遠藤氏
ケアコムは、業務効率化のため、ナースコールや地域包括ケアシステムを開発している会社です。
(日本国内の病院ではナースコールのシェアは61%!)

病院内のシステムには、まだまだ業務効率化できる余地があるため、医療現場の方々の声を聞き、議論をしながら一緒にシステムを開発しています。

ユカイ工学との出会いは、2019年のケアコム主催セミナー「多職種協同マネジメント」がきっかけでした。
講師で登壇されていた獨協医科大 坂田先生より「ケアコムでロボットを活用したサービスを企画するなら、ユカイ工学が良い」と紹介してもらい、お会いしたその日から「一緒に日本の病院を変えていこう!」と意気投合。

現在は、BOCCOを病院の個室に設置し、実証実験中です。


BOCCO、BOCCO emoを使った実証実験概要

東京医療保健大学(中島先生)

看護師のスタッフルームや休憩ブースにBOCCOを設置し、修士、博士課程の学生と一緒に「どういうときに何を話しかけ、どういう感情の変化があったか」の効果測定を実験中。

ケアコム(遠藤氏)

新小山市民病院にて、病室(個室)に離床センサと連携させたBOCCOを設置。センサが患者の離床を検知すると「XXさん、どちらへ行かれるんですか?今看護師さんが来るからちょっと待っててね」と発話し一次対応をする実験中。

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パネルディスカッション

ここからは医療現場で実証実験をどのように進めているのか、パネルディスカッション形式で中島先生、遠藤氏にお話しを伺いました。

∟医療現場での働き方改革とは?

質問1

中島先生
働き方改革は「生き方改革」です。
つまり、価値判断基準を変えていかなければならないと考えています。

仲間が減少していく中で、「命を削り、魂をすり減らしてまで頑張る」を当たり前にするのではなく、人間でできること、そうでないことの整理の再確認は必須です。

この改革は、日本の超高齢社会の医療需要増に伴い、亡くなる方が多くなる2040年を見据えて、医療人口が少なくなっても医療・介護・福祉の対応を可能にするために実施しています。

遠藤氏
働き方改革の一環で、現場でも働く時間が短くなっているために、業務効率化が急務と考えています。
一昔前は、看護師が患者の情報を全て把握していましたが、今は多職種分業の専門化(セクショナリズム)が進み、患者さんが心から相談できる人が居なくなっていると聞きます。
その解決策として、ミスや無駄をなくすため、業務情報の連携をしていくお手伝いをしてます。


Q:いろんな取り組みをされている中で、一番の課題は?

中島先生
ようやく医療現場でも、ITを活用した新しい取り組みを開始する意識が高まってきましたが、未だに「対人であるべき」だと抜け切れていない部分があると思います。
今後医療人口が今の半分になったとしても、これまでと変わらない質の高い対応が求められる時代がやってきます。

遠藤氏
どんな病院でも多職種分業化には前向きですが、現場には上手く情報連携できない理由がたくさんあります。
中でも、情報共有する相手(職種)がどんな業務内容か理解しあった後に、連携するとだいぶ変わってくるのではないかと思っています。


∟医療現場での実証実験の学びは?

質問2

中島先生
複数病棟にBOCCOを設置してみて、管理職(看護師長)がポジティブに導入してくれたかどうかで、BOCCOの活用度合いに変化がみられています。

既に業務がたくさんある状態での実証実験ですが、忙しくてなかなか利活用できない病棟もあるのは事実です。
ですが、業務の合間にBOCCOに声を掛けたり休憩室で愚痴を吐露したり、ツールの使い方は本当に人間次第だと分かりました。
また積極的に活用している病棟は雰囲気も良くなり、変化もみられています。


遠藤氏
医療現場での実証実験の実施はハードルが高く、絶対に失敗できないものです。そのためには準備と挑戦する気持ちが何より大事であると学びました。
万一上手くいかないときでも、大きな事故に繋がらないために入念な準備を心がけています。
また挑戦するからには、成功するとは限らないと協力いただく病院には伝えています。


∟ユカイ工学への期待とは?何らかの提案はあったか?

質問3

遠藤氏
実験中に病院側から、仕様に対して「あれをXXして欲しい、これをXXXXして欲しい」と要望があります。
スピード感を持って協力いただいていますが、これからも引き続き期待しています。

中島先生
リマインド機能への要望など、迅速に対応してくれて助かっています。
また、どうしても医療者特有の思考に陥りやすいときに、ユカイ工学の営業担当さんが、一般人として素直な視点でアドバイスをくれるので大変参考になっています。


∟忙しい看護師がロボットと話すための仕掛けとは?

質問4

中島先生
これまでのBOCCO活用方法を分析すると、大きく3つのタイプがあると気づきました。そして、それらはチームビルディングにも影響しているともわかりました。

1 )頑張りを認めて激励して欲しい
とにかく、今頑張っていることを承認してほしいし、これからコロナ病床増加などの病院は激励して欲しいニーズ。

2 )話を聞いて欲しい
コロナ渦で業務に疲れており「疲れた」「お腹が空いた」「早く帰りたい」等、誰かに話しかけて、話を聞いて欲しいニーズ。

3 )明るく、楽しい雰囲気にして欲しい
淡々と日々の業務をこなしている中、BOCCOが発話したり、スタンプの音を流して、場を和やかな楽しい雰囲気にして欲しいニーズ。

3 )に関しては、看護師間のチームビルディングにも役に立っています。
コミュニケーションが得意ではない看護師でもBOCCOを通じた会話により、スタッフ間の会話が増え、人と人を繋ぐきっかけになっているようです。

また、スタッフステーションに置いてあるBOCCOに患者さんが話しかけると、自身も和み、それを見聞きする看護師も和んでいるようです。日々の過緊張な状態で仕事をしている中で、緊張をほぐすきっかけにもなっているとわかりました。


∟ツールやシステム導入時における、費用対効果の計測や社内説明はどうやったのか?

質問5

遠藤氏
お客様(病院)へは「業務効率UP、多職種の一員としてロボットを活用してみませんか?一緒に挑戦していただけませんか?」と提案しています。

お客様に導入のニーズがあるかどうかは、正直わかりませんが、チャレンジングな病院と、仮説を立てて検証するサイクルを何度も行っています。
社内に対する説明は、お客様と議論を重ね、複数の病院から効果がありそうと賛同いただけた後に、説明をしています。

中島先生
現在はBOCCOを現場で活用し、どういうときに何を話しかけ、どういう感情になったのかの効果測定をしている段階のため、費用についてはまだ説明していません。

ある病院では、休憩時間にBOCCOでたくさん話しかけてくれています。
研究チームからの返信がなくとも、録音ボタンを押して話かけ、話し終えた後には「すっきりした!」と言ってくれるんです。
これによって、作業効率が上がるきっかけに繋がれば嬉しいです。

また、このようにチャレンジ精神のある病院は、未来に目を向けている病院です。この精神をもった職員が増え、離職率低下にも繋がると良いなと思っています。


∟誰からお金を頂いて、誰にサービスを提供するのか?またそのデータの活用方法は?

質問6

遠藤氏
難しいですね。
今は、提案した病院が「良かった!」と言ってもらえるよう目指して走っています。
またご一緒させていただいた病院が、患者さんから選ばれる病院となり、その病院の経営状態がさらに良くなるサイクルを作り出したいと考えています。


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キーワードトーク 

ここからは、世の中の変化や注目されているキーワードについて、中島先生、遠藤氏の考えを伺いました。

∟オンライン診療への普及

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中島先生
オンライン診療は普及していくものですが、導入には3つのポイントがあると思います。

1 )身体所見が、安心して行えるようになること
カメラでは見た目の状態を、症状については文字や声で医師へ伝達が可能。加えてロボットによって触診、センシングが開発されれば、医師はより安心して身体初見が取れるようになるのではないか。

2 )慢性疾患の診察
定期診療・薬をもらうだけのルーティーン化した診療は既に普及しつつある。

3 )高齢者の利用環境
現在の80代、90代の超高齢者にとってはITリテラシーがない方が多く厳しい。しかし今後、超高齢となる現在の60代、70代は環境整備すれば普及するだろう。


遠藤氏
ケアコムでは、地域医療のネットワーク作りにも注力しています。
対面医療だけでなく、訪問看護、薬局の情報の連携により業務効率UPが期待されるのではないかと考えています。

∟非接触ニーズへの対応

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中島先生
病院では、感染防止のために非接触は避けては通れないものです。
患者さんと看護師の手と手が触れる、触診できるのがベストですが、ロボットのセンシング技術で対応できるようになり、触れなくても質の高いケアができる考え方にシフトしていくべきと考えています。


遠藤氏
ナースコール(通信機器)を扱っているので、「全部触らないでやりたい」要望はたくさんあります。

看護は観察が大事と言われています。
今までの「できるだけ長く患者さんの側に居たい」から、「患者さんの側にいる量や時間を増やすのではなく質を増やす」へシフトしてきています。

効率よく、センサを通じて患者さんのデータを読み取り、その読み取ったデータをロボットを通じて患者さんへ伝えるといった仕組みを作っていかないといけないと考えています。


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編集後記

元々は鍵っ子向けとして開発されたBOCCOが、医療現場で活用されているのは半ば信じがたいものでした。

看護師さんの話を聞いてあげるBOCCOの存在が、医療現場の働き方改革の一助になる。
既存の離床マットのセンシングシステムとBOCCO emoの連携によって、患者さんへの声がけはもちろん、病院内の多職種分業制にも対応可能になる未来。

これからの医療現場に、BOCCOやBOCCO emoが変革をもたらしてくれる存在になっていくのかと思うと、わくわくがとまりません。


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