「マイナポータルのどこがダメなのか?」UXデザイナー視点で徹底的に解剖してみた
悪評だらけのマイナポータルですが、漠然と「使いにくい!」と愚痴を言っていても改善されないので、課題を徹底的に洗い出してみました。
ちなみに私ですが、15年ほどソニーでUXデザインやプロダクトマネージャーとしてVAIOやPS4の設計に関わり、最近フラキングペンギンズという会社を興したBTC(経営・エンジニア・クリエイター)属性の人間です。
まずはざっと画面遷移図を書いてみました。私が申請を完遂できなったiOS(iPhone)ベースでの遷移となっています。
これを元に解説します。
まずマイナポータルAPを AppStoreからダウンロードして起動します。さっぱりわからないメニュー名が並びますが、消去法で[ぴったりサービス]を選びます。
脇道にそれますが、[パスワード変更]の仕様にも罠があります。
マイナンバーカードには3つのパスワードが紐付けられているようですが、それぞれ忘れてしまった時の復帰手段が「窓口で設定し直す」しかありません。他のパスワード+秘密の質問 またはそれぞれのデバイスがもつ認証手段(指紋やFaceID、OSのアカウント認証)の組み合わせで、再設定できてはダメだったんでしょうか? そもそもカードとパスワードセットじゃないと使えないのに、何の目的でここまで強固なセキュリティーにする必要があったのでしょうか?
話を本流に戻します。[ぴったりサービス]という不思議な名前のメニューを選択すると、WebサイトTOPに遷移します。
ここがもはや罠です。ITリテラシーの高くないユーザーにとって、遷移アニメーションだけでアプリ画面からブラウザ(Safari)画面に飛んだことに気づくのは困難です。「そんなこと気にしなくていい?」という意見もあると思いますが、ここで画面が切り替わったことを把握していないことが私の致命傷になりました。
次に警戒していた私は、[動作環境チェック]を行いました。
ここで、さらに私は混乱することになりました。Step1, Step2 にはチェック☑️が入っているのに、Step3のマイナポータルAPインストールにはチェックが入っていません。
何故、マイナポータルAPから起動したのにチェックが入っていない?エラーなのかと悩みました。
結果的に私は2つの勘違いをおこしていることに気付きました。
・今操作しているのは、マイナポータルAPではなくSafari(ブラウザ)であること
・このUIはStep1, 2 は自動チェックだが、Step3以降は自己チェックシートであること
詳しくは改善提案編(次回投稿)で触れたいと思いますが、システムが行う処理とユーザーが行う処理は混ぜて表示してはいけません。勘弁してください。この時点で、かなり愚痴りながら操作していました。
次に動作確認を終えて、TOP画面で市区町村を検索して、[定額給付金]を選びます。
そうすると、確認画面が表示されます。細かいツッコミですがネガティブな操作である[戻る]が上に表示されているのは、頂けません。せめて[次へ進む]の下に表示しましょう。ちなみに、これらボタン(CTA: Call to Action)のレイアウトも、画面ごとにコロコロ変わります。UIデザイナー雇いましょう。
でいよいよ申請に移るはずが、、、
もう一度、動作確認画面に戻ってしまいました。思わず操作を失敗したと思って、ブラウザの戻るボタン操作をしてしまいました。。。後から解析して分かったのですが、これ私が最初に行ったのは別の動作確認画面のようですね(想像ですが[電子署名付与]機能を使う申請の場合には、ここで必ず間に挟まるようになっているのでしょう?!それなら、最初の動作確認リンク消そうよ。。。)
一度ブラウザの[戻る]操作で振り出しに戻った私ですが、怒りに震えながらこの画面まで操作し直し、すべてにチェックを入れて前に進みました。
やっと入力画面ですが、iOSのキーボード(OSK)がメアドを覚えているのもありサクサク進みます。ゴールが見えてきた?
ですが、さっそく次に罠が待っておりました。結論からいうと、この[マイナンバーカード読み取り]による個人情報の自動入力は、使わない方がいいです。
これを押してしまうと、マイナポータルAPというアプリの画面に飛ばされます。その上で自力でiOSを操作して、この画面まで戻ってこないといけません。デバイスや必要な情報には注意書きがあるのに、この複雑なアプリ間操作が必要なことについては注意書きが見当たりません。そんなこんなで、苦労しながら個人情報の入力は進みます。
ですがもう一つ罠というか、あとあと運用で問題になりそうな仕様に出会います。
なぜか銀行口座情報を手打ちしたあとに、キャッシュカードの写真のアップロードを求められます。「えっ?画像から人間が読み取るなら、わざわざ手打ちさせなくてもいいのでは?」と思います。役所の照合作業でミスが見つかったら、手打ちの方を信用するのでしょうか? 画像の読み取り結果を信用するのでしょうか? はたまた一人一人に電話で問い合わせるのでしょうか?
疑問を抱えたままですが、入力確認を終えて いよいよデータ送信か?!と思っておりましたが、そんなに甘くないです。
ここで、いよいよ最大の難所、[電子証明付与]にやってきました。
ここから、アプリ(マイナポータルAP)に戻されます。戻されるだけならいいんですが、なんと
・操作が完了しても、ブラウザ(Safari)には戻ってきません。それどころかアプリのトップ画面に戻されます。
今見るとダイアログに「Safariに戻れ」って書いてあるんですね。こういう時は「アプリアイコンはカラーで載せた方がいいですよ」印象に残らなければ意味ないですよ。。。(真ん中の記号がSafariマークだって、私は気づきませんでした)
・Safariに自力で戻ると、画面がブランク(空白)になっています!
→この時点で私は諦めました。文字通り アタマ真っ白!!!
→これがリリースに開発費3200億、保守費350億のシステムの実力か!
今年度も2000億くらいかけるらしいですが、UXデザイナー雇ったほうがいいですよ。あとUXわかるエンジニアも。何よりも先にプロダクトマネージャーから、、、
実際の申請はここで諦めたのですが、Safariでブランク画面を閉じるなり、タブ一覧に戻って、[ぴったりサービス]のサイトに戻っていると画面が切り替わってましたね。
他にも突っ込みどころはあります。[申請再開]から保存できるセーブデータみたいなものがクラウド管理ではなく、ファイルのローカル保存かメール送付でになっています。iPhoneで、ローカルファイルを正しく扱える人が何割いるのでしょうか?!
まとめると、今回の問題のほとんどの問題は
・アプリ[マイナポータルAP]とWebサイト[ぴったりサービス]を行き来すること
・その上でWebサイト[ぴったりサービス]の方は、アプリから呼ばれることを想定した説明になっていないこと
・全体的に、長々と "事前警告” 文はあるのですが "次操作提示”文やイメージがほとんどないこと
にあります。他にもカードの仕様などツッコミどころはまだまだあるのですが、次回は指摘だけでなく具体的な改善案をデザインしてみようと思います。
今見ると「まだ完遂できていない人の操作の役にも立つかな?」と思いました。参考になれば幸いです。
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