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考えない日記20220414

0414の日記(2022)


昨日のことだ。庭を見ていると踏みつぶされた花韮の草の下をトカゲが進んでいく。ここ数日続いた晴天は半袖の肌が汗ばむほどの陽気だが、彼の表面は濡れ、曲面が鈍く輝いていた。腹に昨晩の暗闇をいまだに抱えたまま。

土の地面に空いた3mmほどの小さな穴へ蜂が入っていく。入り口の手前で着物をそろえるように羽根を素早くたたみ、その小さな穴蔵へ消えていく。
少し離れたところにある雑木林でカラスが何か別の生き物と言い争っている。
大半の住民がまだ寝静まっている薄暗い時刻に派手なくしゃみを連発しながら坂道を下っていく人がいる。そこでくしゃみをすることを日課と決めているように彼が通る朝は毎回その曲がり角で大きな音がする。

明るさが午前と午後でほとんど変わらないような演出の雲が空を塞いでいる。四月十四日。ニラと小松菜の種を庭の隅っこに大して耕しもせずに撒いた。踏まれないように手近な石ころを並べて仕切り、水をたっぷりと撒いてからもう一週間は経ったろうか。ごちゃごちゃと集団で芽吹き始め、小さな緑が土を押し退けている。

横須賀の北久里浜という町に壺屋さんという美味しい和菓子店がある。そこの季節の菓子を食べたいなと思いながら今日は定休日だと知っているのでスーパーで買った柏餅のパックを開ける。湿った柏の葉の香りが幼少期に隠れた押入れを思い出させる。濃いくすんだ緑に挟まれた白い餅を頬張ると、明るく潔癖な白い餅の中から庭のトカゲが抱いていた影のような餡子が姿を現す。月が四月の晩に産み落とした卵をむにむにと食べる。茶を飲み干し、もう一度柏の葉を鼻先へ近付け捨てた。

fine  

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