休憩室読書中座記

海辺の町のそちこちを動画や写真、文章で綴っています。かつて横須賀市上町にあり、現在は船越の音楽教室内で不定期に読書のできる『休憩室』を開室しています。どなたでも無料で本を読みながら休憩や情報収集ができます。 最新情報はTwitterの@uwaq217にて。

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海辺の町のそちこちを動画や写真、文章で綴っています。かつて横須賀市上町にあり、現在は船越の音楽教室内で不定期に読書のできる『休憩室』を開室しています。どなたでも無料で本を読みながら休憩や情報収集ができます。 最新情報はTwitterの@uwaq217にて。

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    休憩室 船越出張所【次回の開室情報】

    【お知らせ】 直近の開室状況をお伝えいたします。 会場と時間は下記をご参照ください。*『休憩室』とはどなたでも無料で読書や地域の情報交換ができる”本の読める休憩場所”です。 その他の最新情報についてはTwitterで発信しています。 . . . 直近>>2023年2月25日の土曜日に船越出張所を開室いたします。 【会場】 横須賀市の船越仲通り商店街にある『音楽教室 三本の木』に休憩室の出張所として本を置かせていただきます。会場は京急田浦駅から徒歩2、3分、郵便局の数件先にあ

      • 考えない日記:電波1の岩がちな海辺で2023.03.28

         数ヶ月考えを巡らせていた行事が終わり、漁師町にある10席程度の小さな定食屋さんで昼食とっていた。楽しくも苦しい行事の束縛から解放された午後。窓の外には漁船が何艘も停泊し、漁の後片付けをする男たち。  携帯電話のメールが着信し、友人から悲しいお知らせが届く。食事を済ませてから車を少し走らせ、海岸線の突き当たりにある公園の駐車場へ停めた。普段は人のまばらな磯辺に旅行者らしき人々が春の行楽に訪れていた。ごろごろと砕けた海岸の岩と砂場を歩き、寄りかかれるような場所に落ち着いた。荷

        • 『雨の日の読書』パート2

           印象を言葉に置き換える厳しさに抗うのが詩人だとすれば、今日の午後、通りがかりの子供達によって偶然与えられた感動を、この人ならうまく伝えてくれるのではないかと心に浮かんだのがレイモンド・カーヴァーだ。  雨上がりの空に遅く起きた木曜の午後。窓の外、濡れた草木越しにピアニカの音が届いた。一人の少年がそれを吹いていた。通学路を帰っていく彼が気ままに吹いた無名の一小節。楽譜や鍛錬によらない彼だけのその音が、根源的な生の喜びを伝えてきて感動してしまった。  生の喜びなんて書くと大袈

          • 良い映画を観た後のこと【考えない日記】2022/12/17

             海の見える地元のパン屋さんへ行き、りんごを買いました。  映画のことを心地よく思い出し、反芻しながら帰路の海辺を歩きました。  地の見知らぬおっちゃんが、「静かでいい港だよ」と声をかけてくれました。  用水路が見えていました。あっという間に油断していると失われていくものたち。    小学生が、子供しか入ることを許されない場所で隠れてフェンスに寄りかかり、密談している声だけが聞こえてきました。彼らにはまだ何一つ失われていないのだこの景色は。それは吉報に違いない。  

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            映画『パターソン』を二回観た夜

            ジム・ジャームッシュとレンガとバス 「日常の特筆するべきこともないような些細な出来事を、ノートか携帯電話、あるいは頭の中にメモする習慣のある人はとても楽しめる映画」パターソン。写真や映像で日々を切り取っている人も楽しめると思います。逆に、どっかーんと大きな出来事や事件、興奮を映画の中に期待している人にはあまり楽しくないかも知れません。 パターソン  ジム・ジャームッシュ監督『パターソン』という映画を二回観ました。この映画はニュージャージー州のパターソンという街の話で、詩人

            【発生x上町休憩室 朗読会】イベント後記

            紹介書籍他エントリー全覧1:筑間一男 / 横浜映像美術展パンフレットより ジョナス・メカスについて 2:一花書店 / 立原道造の三遍のソネット 3:ゆき / 恩田陸『蜜蜂と遠雷』 幻冬舎 4 : 早乙女ボブ / 自作詩『パンツを干す』 他 5:リョーマ / 柳田國男『日本の昔話』より <海の水はなぜ鹹い> 6:上町休憩室N / ジャン・ジュネ『泥棒日記』朝吹三吉訳 新潮社、ジョナス・メカス著 木下哲夫訳 森國次郎編『ジョナス・メカス ノート、対話、映画』より <反・映画100

            朗読会のお知らせ

            ──ジョナス・メカス生誕100年によせて──  『発生』✖︎上町休憩室with三本の木 スペシャル朗読会  横須賀の下町で不定期にリーディングイベントを行なっているグループ『発生』と、本の読める場所『上町休憩室 船越出張所』、そして船越にある音楽教室『三本の木』が共同で小さな朗読会を行います。今回は映像作家であり詩人でもあったJonas Mekasさんの生誕百年を記念し開催します。  実は、上記の三者は横須賀でジョナス・メカスさんの上映会を行った際の仲間でもあるのです。ピ

             考えない日記:壁沿いに歩くと 2022.10.25

             寒風が山肌を撫でる。ぐるりとトンビが旋回していく。軒先の植物が弱った色をみせている。携帯電話が一時間前に降ると予告した雨はまだ落ちてこない。カップの底に少しだけ残ったコーヒーを支えに文字を少し読む。更迭された政治家、性犯罪の法律、汚れた爆弾、ガス代が一年で十倍になった国、ミャンマー軍がコンサート会場を爆撃、湘南のバンクシー、ジブリパーク、高木ブーさん、初回限定、お急ぎください!ご注文はコチラ!  新聞を放り出して窓辺により、薄雲の空へ目をやる。飛行機が飛び去る音。数日前に

            考えない日記:緑のジャケット 2022.10.24

             祖父を思い出した。朝、窓を開けて汚れてしまった座布団をはたいていると冬の香りがした。それは一年振りの香りで、例えば数日前に食べた早生の蜜柑の香りと同じ種類の感情を連れてくる。あるとき家族と帰省した祖父の家で「冬の匂いがするね」というと、彼はセーターの袖口からはみ出したシャツの袖を正しながら「苦手かね?」といった。「好きだよ」と答えると、「それなら良い香りといった方がいい。匂いは好ましくないものにつかうものだ。」といった。   「香り」は「匂い」よりも確かに繊細な雰囲気を持っ

            考えない日記:雲の下、海辺のまち 2022.10.18

            降らなかったので 予報されていた雨が一向に落ちる気配を見せないので二輪車に跨り三崎方面へ走り出した。久里浜から海岸沿いに野比という町へ出ると、柵の向こうへ海が広がる。景色が進むと砂浜は黒から薄茶、ベージュなどへと変化を見せる。少し沖に鵜やカモメの休息する防波ブロックがあるが、なぜか誰一人休んでいないテトラポットもある。  野比の街道沿いの人家の前で犬が欠伸をしていた。道路標識の上にはカラスがとまり羽根を休めていた。初夏に綿毛のように柔らかく見事な白い花を咲かせていた裏道の木

            考えない日記:2022.10.19 数日のメモ

             日付の変わった夜更けにこれを書く。外はまだちろりんりんと小雨が降っている。とはいうものの、実際にはイヤフォンをして音楽を聴いているので本当に雨がまだ降っているのか分からない。ここから見える台所には斑点の浮き出たバナナが器をはみ出している。部屋の机にはまだ片付けていない冷房のリモコンが居残り学生のようにじっとしている。背もたれにシャツのかかった椅子がある。ついている電灯と消されている電灯がある。背後には据え置き型の暖房が出番を待っている。  数日前、友人が電話をくれた。短く

            読書中座記 藤本和子 『イリノイ遠景近景』

            ドーナッツを食べたくなる本  野球帽をかぶった男たちが、煙たいドーナッツ店のカウンターに腰を持たせかけ、コーヒーをすする。左手にはドーナッツ。彼らの他愛のないおしゃべりに耳を傾注させながら、著者は連れてきた子供にドーナッツを与えている。藤本和子著『イリノイ遠景近景』の35ページに書かれているアメリカの姿だ。  このたった5ページ程度の情景を読むだけでドーナッツが無性に食べたくなる。しかし日本の私の暮らす街にあるドーナツ店はどれもこのイメージには小綺麗すぎる。さらに数十ペー

            上町休憩室船越出張所【10月29日の開室情報】

            【お知らせ】 今週の土曜日(2022/10/29)に船越出張所の開室をいたします。 【会場】*前回と同じです。 横須賀市の船越商店会にある音楽教室内に休憩室の出張所として本を置かせていただきます。会場は京急田浦駅から徒歩2、3分、郵便局の数件先にあるガラス張りの店舗一階にある音楽教室です。 https://goo.gl/maps/6xsnk11Aj3yeQL87A 【今回の開室時間】 2022/10/29 土曜日 14時より17時まで。(14時までは音楽レッスン中ですの

            上町休憩室船越出張所【第二回開室】

            【お知らせ】 今週の土曜日(2022/06/25)に横須賀市船越町で第二回目の開室をいたします。 【会場】*前回と同じです。 横須賀市の船越商店会にある音楽教室内に休憩室の出張所として本を置かせていただきます。会場は京急田浦駅から徒歩2、3分、郵便局の数件先にあるガラス張りの店舗一階にある音楽教室です。 https://goo.gl/maps/6xsnk11Aj3yeQL87A 【今回の開室時間】 2022/06/25 土曜日 14時より17時まで。(14時までは音楽レ

            休憩室船越出張所

            【お知らせ】 今週の土曜日(2022/05/28)に横須賀市船越町で臨時開室をいたします。 【どこで?】 横須賀市の船越商店会にある音楽教室内に休憩室の出張所として本を置かせていただきます。会場は京急田浦駅から徒歩2、3分、郵便局の数件先にあるガラス張りの店舗一階にある音楽教室です。 https://goo.gl/maps/6xsnk11Aj3yeQL87A 【今回の開室時間】 2022/05/28 土曜日 14時より17時まで。(14時までは音楽レッスン中ですので決し

            考えない日記:古井由吉に出会った日【読書】

             上町休憩室へいつものように彼がやってきた。数年前のことだ。彼は着席するが早いか鞄を広げ、五、六冊の本を引っ張り出しこちらへ押してよこした。私は目の前に積まれたそれを受け取ると、表紙や作者を確認しながら背の低いテーブルへ広げていく。慣れたものだ。というのも彼は毎回、ほとんど必ず数冊の書籍を抱えて休憩室へ到着する。それは近所かあるいは遠出して買い求めたばかりの彼の蔵書なのだ。本日の収穫を拝見する。知っている作家もあるが、未読の本が並ぶことが多いのは彼と私の読書の流れが異なってい