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アップルパイの城下町にて Day1


私の、私による、私のためのひとり旅の記録をここに。

旅のテーマ

ひとつ前の記事に書いた通り、「自分で自分を満たす」が今回のテーマ。
キュンときたゲストハウスを予約するところから始まり、ネットやnoteの検索機能に助けられながら行きたい場所をいくつか決めた。

ちなみに今回はインスタでの検索をいっっっさいしなかった。
「映え」を軸にして考えたくなかったからね。
私の軸はそこじゃない。誰かからイイネをもらうために観光したいんじゃない。写真はiPhoneでそっと撮るだけ。心に留めておきたいワンカットを写真で残したい、それだけ。
インスタ万々歳な旅行をしていた大学時代の頃より、見える世界が何層も広がったように思う。



高速を降りるとそこはりんご畑


一日目、東北道を降りて北西に向かう。目指すは岩木山神社。三角に尖る大きな山が遠くに見えている。まだ雪を被っている岩木山に見惚れるのも束の間、車を走らせ続けるとびっくりしてしまうのは目の前の景色。
左右どっちを見てもりんご畑。少し先を見てもりんご畑。たぶんずーっと先まで、りんご畑。
高速を降りて数十分、りんごの国の洗礼を受けました。
腰の曲がった老人のような横に広がるシワの多い枝と、その先でパッと咲きこぼれる白い花はまるで赤ちゃん。
今の時期にりんごの花が咲くのね。さすがりんごの国。秋にはすごいことになりそう。


カフェ MICHIRU

このあたりポツポツとカフェがあるようで、りんご畑に囲まれたカフェに寄ってみた。お昼時なのもあり、黒髪ボブの店員さんに「満席なんです…」と言われて納得。どのテーブルも食事を楽しんでいるのが分かる。
また今度にしますと伝えて店を出ようとしたら、店員さんに「良ければこれを…!」とチョコレートマフィンをいただきました。なんて優しい…
こういう時の「また今度」はどこまでも社交辞令だけど、このお店は本当にまた今度行きたいな。
マフィンを買って帰って誰かにプレゼントしたいな。
人の優しさに触れるたび、自分もどこかで誰かに優しさを配りたくなる。



カフェ LITTLE NOOK


次に目指したのは岩木山神社すぐそこのカフェ。
何も知らずに入ってしまったけど、ここは犬も来店できるそうで。
愛されて育ったのが一目でわかる幸せそうな犬と、飼い犬を愛しているのがこれまた一目でわかる幸せそうな家族と、犬への愛情が溢れている男性オーナーさんがいた。
犬と人との愛で満ちた店内はすごくおしゃれだった。オフホワイトの壁と明るめのオーク、窓の外には新緑。とにかく色味が良い。


ドアとテーブルがガラス張りで、そこもまた素敵…。

ホットサンドとカフェオレ ご馳走様でした


お利口さんな犬と目が合うだけでふふっと幸せになれる、そんな空間だった。


岩木山神社

今回ぜっったいに行きたかったのがこの神社。
青森で一番大きな神社でたくさんの神様が祀られているらしい。
そして、恋愛の神様もいるらしい。
ここ、重要です。
岩木山神社についてはりんご娘の記事を読んで、かなり勉強になった。この一本で岩木山神社のあれこれを学べた。
ありがとうりんご娘、皆さんに明日いいことありますように。

鳥居の色が違うこととか、鳥居の延長線上には山頂部の奥宮の鳥居があることとか、まるでジブリみたいな楼門とか、そういうもの一つ一つに意味がある。それってすごくない??大昔の偉人の思う世界観が2023年現在まで語り継がれているって、果てしなくロマン。

恋愛のご利益がある下向きの狛犬をちゃんとなでなでした。
神様、そこんところよろしくね。26歳独身の切なる願いだからね。
御朱印と縁結びのお守りを買った。神様、ほんとによろしくね。

境内は赤ちゃんを抱いた夫婦やちびっこ連れの家族が多くて、1人で歩くのが寂しかった。周りは、今の私にないものを持っているようで。
今の私にないものではなく、今の私が持っているものを見ないとな、と寂しさを振り払う。
1人で気ままに歩ける自由と、好きに使える時間とお金。誰かに感謝できる気持ち。
今の私が持っているものを数えた。
こんな風に考えられるのが私の良いところだと思う。


そういえば本殿にて、26年生きてきて初めての光景を見た。
ちょうど私がお賽銭を放り込もうとした時に横から現れた巫女さん、
ペコっとお辞儀をし、お賽銭箱の下の鍵を開け、お賽銭をばあーーっと回収。
見たこともないお賽銭箱の中身と、見たこともない量の小銭、お札、たまにご祝儀袋…。
ラッキーすぎる…と笑っちゃった。
後ろに並んでいた女性にもうっかり「すごいですね」と話しかけてしまう。
2〜3分のその光景は幻だった。良いことありそう。


りんご公園

まだチェックインには早いから、市街地に向かう前にりんご公園という場所に寄り道。
なんて平和な名前…。行ってみると文字通り平和。もはや天国。
りんごの国の住民たちが、りんごのために作り出したヘヴンだった。
芝生を駆け回るちびっ子とそれを見守るパパママ。岩木山をバックに写真を撮る観光客と、ここにももちろん白い花をつけたりんごの木。
悠々と泳ぐ鯉のぼりもいた。
鯉のぼりになるなら、私はこんなヘヴンで泳ぎたい。

あの有名なりんごポストもここで見つけた。カワイイなぁ。ずっとそこで輝いていてほしい。



ゲストハウス オランドの二階

市街地に移動して、今回のワクワクNo. 1、オランドの二階にチェックイン!
裏に4台分ある駐車場に運よく停められた。やった〜。
内装、私が文字にするまでもなく魅力が溢れていたのでここは写真だけ。


もう全てが垢抜けていた。
わ〜!おしゃれ!!とウキウキ。ウキウキを心に刻む。

「オランド」はここの方言で「わたしたち」という意味だそう。
色んな人が集える場所として一階にはカフェやバーが開かれていて、その二階にはりんご箱の宿泊棟。
学生の頃から、こんな風に旅人が寄り合う場所にものすごく魅力を感じてきた。ゲストハウスをベースに今回の旅行先を決めたのもそれが根底にある。
早速二階で外国人の女性とすれ違い、挨拶をする。
あぁこの感じ、何年ぶりだろう。ゲストハウスで出会う人とのはじめましてのご挨拶。
何かが始まるかもしれないその一歩。
良い宿を見つけたなぁ、と自分で自分を褒めたくなった、ていうか褒めた。
荷物は車に置いて、街中のお散歩に出かける。

まわりみち文庫

noteのどなたかの投稿で見つけたのがこのまわりみち文庫。
行こう!とiPhoneのメモにしっかり記していた。
まず名前が素敵。まわりみち、したくなる。たまたま通りかかる出会い方だったとしても、寄りたくなる。


店内の商品をじっくり見て回る。大きな本屋では出会うことが難しそうな、様々なジャンルの本が並んでいる。
「私を見て!」という圧を発する本はなく、むしろ「ようこそ」「ゆっくりしていってね」と和やかに迎えられるような気持ち。
私の好きな作家さんの本を数冊見つけ、心の中で小躍りした。
(あぁ、この作家さんを選ぶお店なら、他のどの本も素敵なんだろな)と勝手に答え合わせをした。
ときめいた本を2冊購入。ショップカードももらってきた。
旅先で出会う本はなんだか格別で、いつか読み返したときに旅のことも思い出したり、その時に見た景色をふと思い返したり、そういうことがたまにある。

カフェ 万茶ン

まわりみち文庫の小道から歩いてすぐにある喫茶店。
整然としていて、少しの矛盾もない内装。サイフォンコーヒーのフラスコが並ぶカウンター。自然と背筋が伸びる。
ケーキや軽食は全て売り切れていたので、ウインナーコーヒーをいただいた。
ふわふわ溶ける生クリームは次第に沈み、渋いコーヒーと混ざり合う。


混ざり合うコーヒーを時間をかけて味わいたいな、と思い、さっき買った本を早速開く。
幸せだなぁ。誰にも邪魔されない、誰のものでもない私だけの時間。
さっきまでまわりみち文庫で「ようこそ」と和やかに並んでいた2冊が、縁あって私の手元に来た訳で。本はびっくりしただろうか。この本をがっかりさせないように胸張って生きていきたい、とまた背筋が伸びる。


街中をぶらり

6時の閉店に合わせてお店を出て、日が暮れるまで街中をお散歩。

好きな色した空
かっこいいシルエット
弘前八幡宮に辿り着けた時のときめき
岩木山のこのシルエットに出会うための今日だった…と感激しちゃった長い坂道
散った桜すら味がある
ビカビカ光っている


城が栄えて商人がいた頃の地名が町中に残っている。
古い洋館も残っている。
何十年も街を見てきたであろう喫茶店が多くある。
変わりゆく街で変わらずにいること、それがどれだけ貴重なことなんだろうかと思いを馳せる。
なんて魅力的なの〜弘前!
私の語彙力じゃ2ミリ程度しか伝えられないよ〜!


ショウシン旅行の“ショウ”は“笑う”かもしれねえな

日が暮れてからまた大きな通りを歩いた。ナンパかキャッチかわからない通過儀礼もしっかり受けた。
通りを歩く人は少ないけど、どのお店も盛り上がっているのがわかる。
お腹もぺこぺこだし、1人でも入れそうなカウンター席を見つけて、ええい!とお店に入った。
アメリカ〜ンな気配の焼き鳥屋さん、目線の高さにはたくさんのお酒のボトル。色んな色と色んな情報が視界いっぱいに入ってくる。
1杯目のハイボールを一口飲んだところで、「乾杯」と隣の席のおじさん2人組に話しかけられた。あ、どうも、とへこへこして杯を交わす。
この乾杯を皮切りに、弘前のことをもっともっと好きになるなんてね。

おじさんの言う「なに頼んでも美味しい」は本当だった


ふらっと観光に来たこと、今日は岩木山神社でお参りしたこと、私の仕事のこと、たくさん話した。
オールバックで左耳に3つピアスを埋めたおじさん2人はこの弘前の方らしく、ハーレーに乗り、ベンツに乗り、夏は弘前ねぷたを引くらしい。
青森ではねぶたは3つ有名だけど(青森市のねぶた、弘前市のねぷた、五所川原市の立ねぷた)、街ごとにそれぞれの思うねぶたがあることも初めて知った。
イントネーションがどことなく違う。よくテレビで取り上げられている「大袈裟な津軽弁」とまでは行かないけど、確かに訛っている。「私・自分」の一人称は「わ」というらしい。「わ」と表記するしかないけど、発声するなら「わ」に濁音がつくような音だった。


弘前なにもねえべ??と2人は笑っていたけど、それが、沢山あるんですよ。
外から来た人間には色んなものが魅力的なんですよ。
こうして地元の人と楽しくお酒を飲めること、それがそのまま弘前の魅力として思い出に残るんですよ。

話の流れで、ひと月前に彼氏と別れたことや岩木山神社で縁結び守りを買ったことを伝えた。
「なあんだ、傷心旅行か」と笑ってくれたので「バレた…」とおどけて見せる。同情されるより、笑い飛ばしてもらえる方が嬉しい。
「ショウシン旅行の“ショウ”は、“笑う”かもしれねえな」と目を細めたおじさんの心遣いと優しさと、その情の深さに痺れた。


ちゃっかり二軒目のバーにも着いていき、ウイスキーをご馳走になった。昼から飲んでたで、という3人目のおじさんもいつの間にか合理して、飲みかけのクラスのまま乾杯した。美容雑誌から飛び出てきました!って感じのお人形みたいなバーテンダーさんとも。
本当にありがとうございました。


深夜、オランドの一階にて

シャワールームの使用は24時までと書かれていたので、おじさん方に別れを告げてバーを出る。
宿に戻ると一階のカフェスペースに数人いて、みなさんわいわいと話に花を咲かせている。
私も良いですか?と何の遠慮もなしに近くのテーブルに腰掛けた。
我ながらスマートすぎる。職場なら、住んでる街の居酒屋なら多少は遠慮するんだけど、その脳は一切働かなかった(お酒も入っているし)。この勢いの私をすんなり受け入れてくれる皆さん優しい。
まるでそうすることを決めていたかのように、りんごのシードルを一本いただいた。

日本各地からここにたどり着いた旅人たち。
夕方挨拶したアメリカ人の女性(顔の造形が美しくて見惚れた)。
近くの大学に通う長身長髪のスタッフさん。
旅に慣れている方が多く、あの県のあのお店が美味しいとかあのゲストハウスが良かったとか、車中泊の心構えとか、そんな話。
日本各地のたくさんの思い出を持ち寄ってりんごシードルを飲む、そんな時間を過ごした。夢のよう。
こうやって旅の情報交換をするのは数年ぶりです…と感激している方もいた。そうだよね、3年以上コロナで閉ざされていたんだもんね。
その数年ぶりの夜に私も立ち会えたことがほんと、恵まれているなぁと思う。

昼間の神社で寂しい気持ちになった自分が本当にちっぽけだなと思った。見えていた世界が狭すぎる。本当に狭すぎる。
少し外を見てみると、1人でも楽しく旅行する旅人がたくさんいた。本当に好きなことをしている人は表情がイキイキとしていて、周りと比較して寂しくなる…なんて低次元な発想すらしないのかもしれない。もっと広く世界を見ているから。
私はなにを寂しく思っていたんだろう。1人かそうじゃないかなんて、そんなに大きな違い??
特定のパートナーがいる方が恵まれているの??
パートナーとの関係を迷いに迷っていた真冬の2ヶ月に比べたら、今の自分の方が清々しくて好きだなぁ。
そんなことにやっと気がつけた。やっと辿り着けた。
別れを選んだのは私、どんな後悔も味わって前に進むぞと決めたのも私。後ろを振り返って酔いしれるのはたまにで良い。
私も、好きなことして目を輝かせていたい。知りたい世界がまだたくさんある。学びたいこともある。その好奇心だけ持っていたい。

結局お開きしたのは25時過ぎ、洗顔と歯磨きだけしてその夜は寝た。
久々に長い時間飲んだからか、ベッドに横になるとまるで海に沈んでいくかのような感覚で。
深く、深くへと体が引っ張られるようにスン…と眠りに落ちた。

Day1おわり。長文を書くのは難しいね。




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