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鷲子山上神社にて産まれた陰キャの怪物〜前編

「へぇ!?ア、イえェと…」
これはどういうことだろう。
後ろに巨大なフクロウ、前方にお婆様とおば様。
まずい、完全に挟まれている。
心境は完全に少女漫画の導入部だ。

ど、どうすればいい?私は、、、一体、、、
どうなっちゃうのー!?!?
眼球にポケモンのニョロモの腹模様を浮かべながら心の中で私は叫んだ。

/1/

皆様、趣味をお持ちだろうか。
色々あると思うが、今後の説明の為に私の密かな趣味を開示させていただきたい。
それはパワースポットへの一人旅だ。

昔精神が崩壊寸前になった時、樹海に行きたいと思って立ち寄った山にたまたま神社があった。
そこで目に入った階段を無知の極みよろしく登ってみたが終わりがまったく見えず、階段の途中一人でしこたま笑った記憶が懐かしい。

もう遭難だろこれ、と思いつつボロボロになって泣そうになったとき、山小屋を見つけた。山小屋の主人がスポーツ飲料をくれたことがとても嬉しかったことを今でも思い出す。

家に帰って調べてわかったことだが、修行僧が使う階段だったらしい。本当に果てが見えない階段だった。

ただ、実はこれがきっかけだ。
確かに階段は泣いちゃう一歩手前まで精神を蝕んだが、不思議なことに人間関係の精神支配よりは全然マシだった。むしろ、なんかスッキリした。

それからというものの、パワースポットにフラッと行くのが趣味になった。

/2/

今回、訪れたのは「鷲子山上神社」だ。
とりのこさんじょう神社と読む。
読み方が「鳥の子参上!」に読めて可愛いなと思ってここに決めた。

本神社は主祭神を天日鷲命(あめのひわしのみこと)、鳥のフクロウを信仰の対象としている。

天日鷲命を超ざっくり説明すると、

天照大神がしょんぼりーなジョリーで岩の洞窟に入ってでてこなかった。
洞窟の前で神々はダンスを始めた。
文を端折りすぎて嫌がらせかと思う人もいるかもしれない。違うんです、外に出たら楽しいよってことです。

そこで神々がダンスっちまっている所に出てくるのが天日鷲命。
無音じゃバイブス上がらねぇよなァ!と、弦楽器を奏でる天日鷲命。

すると、弦の先に鷲が止まった。
それを見た神々はこりゃ縁起がええで、せや!あんた今日から鷲の字を名前に加えなはれ!

で、生まれたのが天日鷲命らしい。
正確には間違ってるかもしれない。
まぁ、でも多分そんな感じ。
May be!!!!

/3/

前日の夜、私は旅支度をしていた。
カメラを充電し、溜まったSDカードのデータ整理して、経路を検索した。
今回はYahoo!カーナビというスマホアプリを使って事前に車で行く経路を調べておこうと思った。

スマホに提案される到着予想時間は3時間だった。
まぁ、3時間くらいなら休憩しながら行けば余裕っしょ!!とスマホを放り投げた。

朝早く空いた快適な道を、朝の空気を窓から取り込み、鳥さんに挨拶し、モーニングティーを嗜みながら優雅にドライブをしようと決意し、朝6時に目覚ましのアラームをセットしベッドへ滑り込みスヤァした。

/4/
目が覚めた時、太陽の光が部屋全体に広がっていた。おかしい、朝なら光が差し込む程度の筈なのに。今はバズーカを撃ち込まれたくらいの光量が部屋いっぱい安いカーテンを貫通して漏れている。ふとアラームをセットしたカービィの時計をみる。時刻は午前11時を回っていた。

恨めしい顔でカービィの時計を見ると心外だと言わんばかりに踊り狂った跡が見えた。私の持っているカービィの時計はアラームの時刻になると踊る。1匹ではなく3匹同時に、踊る。

つまり、こうだ。
カービィは確かに踊った。
ステージクリアの音楽と共に、起きない主人を起こそうと懸命に。
しかし、思いは届かなかったのだ。
対人関係の疲労、度重なるブラック企業の労働で訓練された社畜には、可愛らしいカービィのダンス程度では起きることができなかったのだ。

ただ、私は落ち着いていた。
せっかく行くのだから、御朱印を頂戴したい。
御朱印の締切は16:00。
余裕だ。
昨夜見たルートでは3時間で到着する。
今から出ても14:00着、勝ちを確信し思わず声が漏れた。
手で顔を覆いクハハッ……と厨二病男子よろしく笑みをこぼした。

それから車に乗り、お昼件朝ご飯はどこで食べようかなと思いながらナビゲーションに目的地を入力した。到着予想時刻は5時間後だった。

目を疑った。
目を擦り、もう一度ルートを確認するが同じルートだった。
ど、どうして。

とにかく、走り出さねばなるまい。
なぜなら5時間後は御朱印の受付時間終了時刻の16時だからだ。
細かいことは走り出してから考えようと車を出した。

混乱する頭で、高速を使うルートにルートを変更する。そう、私はケチって下道ルートでルート検索をしていたのだ。これで1時間は短縮させられる。

高速に乗り落ち着いた頃、ある仮説が頭をよぎった。私は深夜にルート検索をした。つまり、深夜の下道が空いている状態での到着予想時刻だったのではないか。

現在混みに混んでいる、この時間では5時間かかることは必定。むしろ5時間で着いたら早い方ということだ。

私はアクセルを踏む足とハンドルを握る手以外爆発四散した。
気分になった。
車の中で悲痛な叫びが溢れた。
先程高笑いしていた自分を殴りたい。
今はどうだ、う、うわァァァァしか言えないマシンと化している。これなら、ちいかわの方がまだ語彙力がある。

こうして、私の車に乗って走り出すまでの物語が生まれたって、わけ。

本記事では全編書き下ろすつもりだったが、思いの外長くなってしまったので後半へ続くことを許してほしい。

果たして無事に私は神社に着けたのか。
導入部の意味深なピンチはどういうことなのか。
もしよければ次回も是非見てくれ。

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