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ボスキャラ募集「ロックマン」はデザインの深淵を垣間見せた。

ロックマン。子どもの頃、沢山遊びました。ゲーム史に燦然と輝く不朽の名作です。でも私にとってのロックマンは、それだけじゃないんです。

ロックマンは、私に初めて「デザイン」の深淵を示唆し、模範となったゲームなのです、多分。

そして、私と似た感覚を覚えた方が、世の中にはたくさんいるのではないかと思います。察しの通り?ボスキャラ募集がその理由です。

これのおかげで、図らずしもロックマンは、チビッコ向けのクリエイティブ練習帳として、めっちゃくちゃ有効に機能していたんじゃないか、と想像しています・・。

私の場合は「2」がはじめて遊んだロックマンで、印象的なボスキャラコンテストは「3」。
「スネークマン」こそが本文の主役、私にデザインの衝撃を与えた張本人でした。

大事なことはすべて「スネークマン」に教わった

おそらく小学校の3年生?くらいの頃だったと思います。漫画雑誌の小さい記事で、ロックマン3のボスキャラ募集、採用案の結果発表を見かけました。

いくつかの上手なイラストの中で、一際、幼い絵があり、目を引きました。それは、クーピーかクレヨンで描いたような、お世辞にも上手とはいえない「スネークマン」の採用イラストでした。

低学年の子の絵とおぼしき、その「スネークマン」を見て「下手だな〜、こんなのでよかったのか。これなら応募しとけば、よかったな〜」くらいの生意気な感想を抱いたと記憶しています。

(というのも、私はラクガキ大好きな子供だったので、ロックマン2が流行った頃は、身の回りにある物はなんでも、ボスキャラ化して、新聞チラシのウラに描いたりして遊んでいました

テレビマンとか、ビデオマン、ランドセルマンとか、そんなカンジです。
・・・小学生だからそんなもんです。
皆さんの周りにはいなかったでしょうか、そんなクラスメート・・。)

その後、ロックマン3の発売を迎え、ともだちの家で私は「スネークマン」との邂逅を果たす事になったわけですが、

先述のように、侮りをたっぷり含んだ状態だったので、しっかりクロスカウンターを浴び、「スネークマン」に返り討ちにされました(違う意味で)。

「やられた!そういうことだったのか・・」

まさに雷に打たれたような衝撃でした。地面を這い、壁をよじ登る「サーチスネーク」弾をみて、瞬間的に全てが理解されました。

つまり、初めから上手なイラストなんて誰も募集していなかった。

募集していたのは、もっとロックマンを面白くするボスの、ウェポンのアイデアだった。そしてサーチスネークは抜群のアイデアだった。

小学生だったので、当時、ここまでハッキリ言葉にはできていないハズですが、敗北感のような感触は確かにありました。

(※補足。
「えっ「サーチスネーク」って「バブルリード」と一緒じゃん!」って思った方へ。

私は、とびきりゲームが下手なのです・・・。もしかして「バブルリード」は子どもの頃、手に入れたことがなかったのかもしれません。「2」は子どもの頃持ってなかったので、友達に貸してもらう程度でした。そういった事情で、「サーチスネーク」が新鮮に思えたのだと思います・・・。

 ちなみに「2」をはじめてクリアしたのは大人になってから。27歳の正月休みの事でした・・・。)

後々、デザインを学ぶ事になり、この敗北感は、まさにデザインの敗北によるものと納得されました。

ファミコンと妄想。ロックマンは、二度美味しい。

この「スネークマン・ショック」を経て、私のラクガキ遊びは「妄想ロックマン」として昇華し一段と熱を帯びていきました。真の楽しみ方に目覚めたのだと思います。

ボスキャラの引用もとは、相変わらず身の回りのものですが、描く対象は、いつのまにかステージ丸ごとにまでになっていました。ウェポンがステージ上でどのように活用できるのか、シミュレーションする必要があったためでしょう・・。

例えば、今でもパッと思い出せる、ナイスな妄想ボスキャラがいます。

「トイレットペーパーマン」です。ミイラ男のような容姿をしたこのボスキャラは、両手から帯状の紙を伸ばし、スパイダーマンやターザンのような動きで翻弄してきます。

 また、ロール状に巻かれた胴体が「一反もめん」みたいに、びろーと水平に解けてゆき、伸びきった先で今度は巻き取られ、結果、瞬間移動が成立します。(伸びてる間は無敵。) 

 コイツを倒して手に入る、「一反もめん」移動、「ロール・スウェー」(今、とりあえず名付けてみました。)は、即死系の飛び石ステージの難所を回避したりするのに便利です。またジャンプ中に使うと長距離ジャンプとして応用できます。

「フラッシュマン」の「タイムストッパー」みたいに武器エネルギーの減りは凄いです。

↑よく覚えているでしょう。何度となく、この「妄想ロックマン」遊びに登場させたお気に入りのキャラクターなんです・・。

(もちろんお気に入りの中には、ダメアイデアも沢山あります。例えば「センタッキーマン」です・・。モチーフは洗濯機で、洗濯槽から、泡まみれの「カーネル・サンダース」ミサイルを撃ち放ちます。ダジャレ・・。)

このように、私にとってのロックマンシリーズはゲーム自体を遊ぶ楽しみと、妄想に耽る楽しみ、2つを味わえる、まさに一挙両得の素晴らしいものでした。

(そして、やがて、この「妄想ロックマン」は、「妄想FF」などに、
 次々と引き継がれていきました。

 ・・「ジョブ」と「アビリティ」を考えるのも楽しい。
 「しょうぼうし」のアビリティ「ほうすい」「はしご」とか。

 ロックマンは卒業しても、もうすっかり、やり方と旨味を
 習得していたのです・・。)

振り返れば、ロックマンは最強のデザイン・ドリルだった

ここまでのところ、「よくもまぁ、妄想の話を恥ずかしげもなく、嬉々として披露するな・・」と思われた方もあるかもしれませんが、デザインて、そんなものです。

デザインを学ぶ事になり、家電とかのサムネールスケッチとかをしていても「アレ?これ子供の頃とやってることと変わらんな・・」と当時から懐かしさを覚えたものでした。・・・結局「あったら、いいな」を起点に始まるものなので、大抵。

ボスキャラ募集は、ロックマンの世界の中での「あったら、いいな」なのです。「あったら、いいな」の声をどんどん集める訳だから、ロックマンは面白くもなるし、そんなオープンマインドな性格ゆえ、愛され度も上がる一方で、今の「オレたちのロックマン」の地位を獲得したのではないかと思います。

ロックマンのボスキャラ募集からは有名漫画家(村田雄介さん。12歳当時のダストマン、そのクオリティもエグイです。)なども輩出されているそうなので、様々なクリエイターに実際に影響を与えている、といえそうです。ロックマンを通してクリエイティビティを鍛えた方が沢山いた。ロックマンは、おそらくそういう風にも機能していたと思うのです。

個人的な所感としても、将棋に通ずるような優れたゲーム性(ボスを獲ったらウェポンとして活用できる。ウェポンにはそれぞれ一長一短、相性がある。)とその完成度ゆえ、ロックマンは、妄想、シミュレーションにもやり甲斐がありました・・。

ウェポンの強弱次第でゲームバランスが崩れてしまう。シミュレーションでそれが実感できるのです。フォーマットが優れていたので、おそらく当時の私にとっては、一番効果的にデザイン脳を鍛えてもらった教材でした。

そんな訳で、当時、漢字ドリルは苦手だったものの、妄想ロックマンというデザイン・ドリルは、随分とやりました。おかげで、ちょっと変わったアイデア勝負の伝統工芸従事者に仕上がったのかもしれません・・。


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最後が宣伝のようになってしまい恐縮ですが・・、妄想ロックマンを経て、今は、写真のもの等を作っています。

婚礼衣装の素材、技術で作ったグラスマーカーです。昔から変わらない日本人のお祝いの気持ちが、ギュッとつまっています。コロナ禍の今なら、「おうちグランピング」などにもオススメです。家族や親しい人と特別な時間を過ごすのにもってこいのパーティアイテムです。

(プロダクト、パッケージ、ロゴ、全部、私のデザインです。あと写真も。ドリルの成果が出てるといいのですが・・。)

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瑞々しくきらびやか。「これからの金彩」を模索しています。 ▼instagram https://www.instagram.com/takenaka_kinsai/