7話:”自分の普通は、普通ではない”の始まり

 2018年5月31日
 寒い。昨日までキャミソールでうろうろ出来たにも関わらず、今日は、ジャケットを着なくてはいけない。街には、コートを着た人が白い息を吐きながら歩いている。昨日は、初夏、今日は、秋と言っても良いほどの気温差に、数少ない長袖をあるだけ着込む。冷たい空気もまだ、新鮮に感じる。なぜなら、今日から語学学校が始まるからだ。
 私が通う学校は、中心地のHolborn駅にあり、バスで1時間。エージェントからの資料では、午後からの授業にも関わらず、8:30に行くように書かれていた。疑問を抱きながらも早朝、学校へ向かったが、予想通りドアには鍵がかかっており、誰一人居なかった。やむ終えず、目の前の公園で時間を潰す。
 私が、オンラインテストをするのが遅すぎたため、この週は、初級のクラスで学ぶ事になった。南米出身者がクラスの半数を占める教室では、授業を受ける姿勢がそれぞれ全く異なり、私の意識はそちらに向いてしまう。先生の話をだんだん聴かなくなる上に、おしゃべりの声が大きい、そして、止まらない。さらに、授業中にキラキラカチューシャを着けて自撮りをする子も現れた。流石に、自撮りはびっくりしたが、学校の先生もなんだか慣れているようで、怒ることもなく、それに対してユーモアで対応していた。後々わかる事だが、クラスのレベルで教室の雰囲気は、全く異なる。
 帰りにBuckingham Palace Gardensに寄る。公園に入って早々、野生のリスが、大勢の人の間をすり抜ける。広場では王室に関連がありそうなマーチングバンドが、練習をしており、中央にある大きい池では、動物園レベルの様々な鳥を見る事ができる。公園の真横にあるConstitution Hillという大きな通りは、立派な街路樹に、イギリスの国旗が端から端までずら〜っと並んでいる。まさに、観光客気分の私にとってはぴったりの場所だった。
 翌日、イギリスに住んでいる友人とミートパイを食べに行った。ミートパイは美味しいが、その横にあったグリーンピースのペーストには、惨敗。国民的野菜のグリンピースは、私には、全く馴染めない野菜のようだ。友人と駅の前で話していると、突然、
 「あなたのセーター素敵!どこで買ったの?」
と友人が話しかけられている。正直、古着である可能性が高いものにも関わらず、店を聞く理由が、わからない。その光景をぽか〜んと見ていた。良いと思ったら、それが知らない人であろうと、もう手に入らないとあろうと、良いと伝える文化に、憧れを抱き、いつか私も言えるようになろうと思った。
 その後Overground(地上の電車)に乗ったものの、全く知らない場所に行ってしまい、目の前に来た電車に乗っても行き先が同じ方向だと限らない事を、身にしみて知った。

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