3話:レゲエ・UK GARAGEが流れる街・Peckham

 家の前に着きシャーロットに連絡をすると、彼女は外出中だったので、同居人のジェイミーが迎えに来てくれた。私の家は、計5戸の家が、横一列に繋がっており、壁一枚で分けられいる。切り分けられたロールケーキのような作りと言った方がわかりやすい。1階に店舗、そして、2・3階が住居となっている。玄関、門、庭は各家庭で別れているため、意外にもこの建物の作りは、不快感を感じない。私の部屋は、ダブルベット、机、収納が揃っており、机の前に座ると庭を眺める事ができる。ロンドンの住宅街は、1区間の外側・通り沿いに家が並び、内側へ庭が向かい合うように配置されている。そのため、圧迫感が一切なく、穏やかな時間を眺められる良い部屋だった。新生活のベースとなる家に、私の顔はニヤけが止まらない。そこへ、シャーロットが彼女の飼い犬”モンキー”と戻って来た。ややこしいが、”モンキー”は犬の名前である。実は、私、動物が苦手で、イギリスに住むにあたり、英語より”犬と暮らすこと”の方が不安だった。モンキーもその不安を感じとり、勢いよく吠えてくる。怖れる私に、シャーロットが気を使いおやつをあげさせてくれた。(モンキーと早く友達にならなくては)
 その日、シャーロットは、私の為に休みを取っていただけでなく、花束も用意してくれていた。その優しさに、着いて1時間もせず、涙が浮かぶ。シャーロットの案内でPeckham(ペッカム)へ買い物に行く事になった。Peckhamは、家から歩いて20分。ロンドンで今面白い街と聞いていた場所だったが、まさか初日に行けるなんて思ってもいなかった。
 カリブ、アフリカ系移民の方が多く住んでいるため、髪の毛を編む美容室や、大量のウィッグを中心としたヘア雑貨屋が並んでおり、ブラックカルチャーに憧れていた私は、既に大興奮。それだけでは無い。Peckhamのメイン通りに入ると、大きな音で、レゲエがすでに流れている。それに目を奪われていると、シャーロットがレゲエのミックステープを売ってる店へ案内してくれた。
「何が好き?」
「Vybz Kartel」
と答えると、2枚のミックステープが差し出される。
「彼女は、今日からロンドンに住むの」
 シャーロットが私を紹介してくれると、店員がミックステープ2枚で10ポンドのところを、4枚で10ポンドにしてくれた。これは買うしか無い。裏面を見ると、ラインナップは、好きなアーティストだらけで、またもや大興奮。その後ドラッグストアに入るとBGMは、なんとUK GARAGEがかかっている!!
(まさか、まさか、、ドラッグストアのBGMがUK GARAGE?!そんな・・・ここは天国・・・?)
 心の中で、大絶叫。どこを歩いても好きな音楽が流れている街が、この世にあるとは、想像もしなかった。旅の疲れに加え興奮の連続、流石に時差ボケもあり夕食まで寝る事にした。
 夕食は、つーちゃんとbo en、トムも加わり英語が不自由な私に通訳をしてくれたり、英語をたくさん教えてくれた。メニューもまともに読めなかったので、唯一わかるマルゲリータを頼んだが、1人1枚ピザを食べる文化に、この日最後の驚きを与えられロンドン生活1日目が終わった。

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