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わがままなお茶   |詩

たとえばこの角砂糖に
青いインクを垂らすの

それなら韃靼だったんから手にいれた
このお茶をれるね

あなたの指、
ほんとうに白く透きとおってきた

あなただって、じっとみつめたら、
わたしだってたまらなくなったくらいの
虹の膜をぷるぷるうるませた、
その奥の、琥珀の眼

ねえ意外、いれてみたらお茶、
赫かったわ
駱駝らくだの足あとだけしか
見あたらないような、
沙漠の砂の色をおもっていたのに

ほら、ミルクいれてよ……
やだ、これ新鮮すぎるの? 匂うわ

でも、カップに注いだら、
ほら消えた ちょうどいい

魔術的

おおげさだね

じゃあ角砂糖入れて

ねえ

なに

このままあの世にいけると思う?

そうね、このテーブルの上でってこと?

そう

あなたとふたりなら

あたし、いやだ

じゃああたしもヤだ
じきにあなたを殺してやるから

そのまえにあなたが死ぬわ
こと切れてからしばらくずっと、
あなたの顔みててあげる

やさしいのね

おもしろいじゃない
だって、あなたが死ぬのよ?
ほら、角砂糖、青いインクの、
それも、入れてよ

あたしにもちょうだい

おいしいわ のんでみて?

そうね、つまんない味よ、退屈 

部屋、陽であたたかくなってきた

なんだか気持ちいいわね 眠い

そうだね、あなたのパールのイヤリング、記念にもらっていいかしら

ええ くちびるにでもくわえて、そのまま氷と泥に閉じこめられたけだものの化石みたいに、ずっと動けなくなりなさい

そうね すてきだったわあなた
ゆっくりと、とっても小さな息になるようすを、じっと見つめていてあげる

勝手なことして

あなただって


改稿公開 15Jan2023
初稿公開 14Jan2023


©︎かうかう