警察が来た
同級生は受験勉強の追い込み時期だがうちには無関係だった。
ある日次男は先生にタバコを注意された。
押し問答で先生の手をつかみ、先生は病院へ行き診断書をもらってきた。
今はそういう時代になったのだ。
体罰も禁止だし生徒から先生への暴力もきちんと対処される。
また別の日にも先生からタバコの臭いを咎められる。
いつもの押し問答の末、次男は先生の服を引っ張っぱったところ先生の首が締められる形になった。
先生は息が出来なくて怖かったと言った。
そして新しい診断書が増えた。
前回のこともあり、ついに次男は学校から被害届を出されることになった。
次男に事情を聞くと
「俺だって首しめられたし」とふて腐れて言っていた。
上記とは別の件で先生と問答になった際に、先生から首を捕まれて締められたという。
全ての問いに食ってかかるかのような毎日だった。
長引く反抗と挑発に対して我慢できなかった先生の気持ちは理解できる気がする。
先生だって人間だ。先生にも感情はある。先生を責める気にはなれなかった。
あれだけ学校から電話がかかってきていたが、
先生が次男にしたことに関してはなんの連絡も来なかった。
いろいろな先生がいた。
一切関わらない先生。
傍観する先生。
表面的に関わる先生。
一生懸命だが空回りな先生。
誠実に関わり責任を負わされる先生。
子どもは驚くほど先生の本心に気づいている。
先生はどうして先生になろうと思ったのだろう。
被害届を出され私たちはいつか来る警察からの呼び出しを待っていた。
そしてある日の早朝、何人もの警察官が尋ねてきて次男を連れて行った。
「当分帰れません」と言った。
被害届を出されるとはこういうことなのかと知った。
私はこの日から仕事を休んだ。
今思えば、学校側も手を尽くした結果の最後の手段だったのだろう。
警察署には成人の犯罪者もいる。
中学生が過ごす環境としては好ましくないというこで、次男は鑑別所へ移動することになった。
不良の中の不良が行くような場所というイメージだった。
…警察が来た日のことは忘れられない。
早朝の無防備なときに突然やってくるということ、私の名前や生年月日、勤め先などを言わされ、顔写真を撮られる屈辱感。
正式な手順だったと思うが私は全てが怖かった。
泣いて眠って泣いて眠ってを繰り返した。
怪我をした動物がじっと動かず傷を治すみたいに
自分を癒すために必要な休息だったと思う。
疲れたら休んで回復させる。当たり前のことをし続けた。
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