見出し画像

小6の時聞いた人生の真理の話

 小学校6年生の頃の話だ。同じクラスに「むーちゃん」という友達がいた。彼は兄が二人いた関係で年齢の割に色々な遊びに精通していた。

 そんなむーちゃんから、私はある日こう声をかけられた

「収蔵、遊戯王やろうぜ」

 当時、小学生がやるカードゲームと言えばデュエルマスターズが主流だった。そのため私は遊戯王のカードを持っていないどころか、ルールも知らなかったのだが、むーちゃんと遊びたかったから一緒に遊ぶことにした。

 今考えると酷い遊戯王だった。むーちゃんも大してルールを分かっていなかったからだ。分かる人向けに言うと、LPは4000だったし、発動した通常魔法をサイクロンで無効にできた。禁止カードの存在も知らなかったのでバンバン出せた。ただとても楽しかった。

 遊び終わりにむーちゃんはこう言った。

「収蔵、ゲームのルールを沢山知ってる程人生は面白いぞ。」

 当時の私はただ、「なるほど」と思っただけだった。

 高校生になった時、部活でデュエルマスターズと遊戯王がそこそこの人気を博していた。特に遊戯王は先輩の代で人気だったため、むーちゃんの件でルールを知っていた私は割と早い段階で先輩と仲良くなることができた。

 そんな高校時代に覚えたのが麻雀とTRPGだった。どちらも覚えた当初はそんなにハマっておらず、自分の中では「全くやっていなかった」と言っても過言ではない位の存在感しか持っていなかった。

 しかし、そのTRPG・麻雀は大学時代になって自分の生活を確実に豊かにした。TRPGはサークルの活動をきっかけにシナリオ制作にまで手を出すことになったし、麻雀も雀魂をプレイしたり、Mリーグや各団体のタイトル戦を見て楽しんだりするのが生活の一部になった。

 また、昨年のW杯をきっかけにラグビーのルールを覚えたことで、野球、サッカー、ラグビーなどのメジャーなスポーツが一通り観戦できる程度の知識がついた。運動神経が悪いので何一つとしてプレイはしていないが、知識のおかげで高校野球のシーズンや大学ラグビーのシーズンをなんとなくわくわくした気分で迎えられている。

 今考えると小6の時むーちゃんが言っていたことは人生の真理だったのかもしれない。ゲームのルールを知っている分だけ、人生において楽しめるコンテンツは増える。一つ一つの知識が浅かろうが、それを深める出会いのきっかけになる。どこで覚えた知識が何の役に立つかは分からないが、意外にも「完全に無駄な知識」というものは少ないような気がする。

 そういえば、最後にむーちゃんに会ったのは一昨年の冬、自動車教習所でだった。むーちゃんは「中型バイクの免許を取る」と言ってた。むーちゃんはあの頃のままで生きているんだな、と思ったのを覚えている。

収蔵です。 人間は所詮、外見と中身だと思っています。