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『月夜のでんしんばしら』(宮沢賢治)

2023年9月宮沢賢治コース

一本のでんしんばしらが、ことに肩かたをそびやかして、まるでうで木もがりがり鳴るくらいにして通りました。
 みると向うの方を、六本うで木の二十二の瀬戸もののエボレットをつけたでんしんばしらの列が、やはりいっしょに軍歌をうたって進んで行きます。

「ドッテテドッテテ、ドッテテド
 二本うで木の工兵隊
 六本うで木の竜騎兵りゅうきへい
 ドッテテドッテテ、ドッテテド
 いちれつ一万五千人
 はりがねかたくむすびたり」

これまでも幾度となくテキストにしようか迷ってずっと寝かせていた作品です。踏み切れなかった理由は、この「軍歌」だったり「兵隊」だったり、その他ちょっと過激な言いまわしだったりします。朗読教室では基本的に「うつくしい言葉」を発してほしいなぁと思っているので、どうしてもその辺りが引っかかって、前に進めませんでした。

9月のテキストを考えていた折、久しぶりに読んでみたら結末のなんて面白いこと!「面白い」にもいろいろあると思いますが、これはツッコミをいれたくなる類の面白さ。「オチないやないか!」です。そもそも「軍隊」と言ったってここで描かれているのは「でんしんばしら」の軍隊で、みんな非常にごきげんに笑いながら行進していきます(電信柱が、です)。そしてその行進の音が、先述した「ドッテテ ドッテテ ドッテテド」というもので、賢治自身も歌っていたメロディを友人が採譜したものが、(レッスンでご紹介する)絵本の見返しに掲載されています。

先の「軍隊」や「兵隊」という言葉のもつ重々しさと相反して、自分の優等生的なあるいは潔癖症?な思考が急に解き放たれて、行き場所がなくなった気がしてしまいました。絵本の表紙に描かれた電信柱たちも、それを見透かしたようにニヤニヤ笑っています。

ちょっと肩に力が入っている時、頭をリセットしてみたい時などに、このお話はぴったりかもしれません。
9月の「宮沢賢治コース」(旧ビギナーコース)は『月夜のでんしんばしら』です。ご予約をお待ちしております。

朗読教室ウツクシキ 2023年9月のオンラインスケジュール

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