『風の又三郎』
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『風の又三郎』

*2021年9月朗読教室テキスト①ビギナーコース
*著者 宮沢賢治

童話「風の又三郎」は9月の物語です。木枯らしが吹いているようなイメージがあったのですが、各章のタイトルが日付になっていて、9月1日に又三郎が村へやってくるところから始まり、ひと月もしないうちに去っていきます。

どっどど どどうど どどうど どどう
青いくるみも吹きとばせ
すっぱいかりんも吹きとばせ
どっどど どどうど どどうど どどう 
*本文より

くるみが青いのも、かりんがすっぱいのも、秋にかけて熟していくまさにその季節を表しています。日本列島に強い風、台風がやってくるのも9月。宮沢賢治が描いた物語は、いつも四季の景色に忠実に流れていきます。

コロナが始まってから、オンライン教室に参加してくださった皆様で一つの物語を読んで繋いでいくという「朗読リレー」を始めました。最初の年は「銀河鉄道の夜」で、長い長い列車の旅を読み、全ての音声をyoutubeへアップしました。この長い物語が終わる頃、コロナが収束していますようにとの願いも込めて。
https://www.youtube.com/channel/UC62HCPO8bZU2FbQjmVN8uMA

不穏に変化していく世の中と並走しながら、秋が深まる頃(2020年11月)には最終話を読み終えました。コロナ禍で行うことができた達成感のようなものを感じながら、けれどもコロナの勢いはなかなか下火にならず、引き続いてリレーを始めたのが『風の又三郎』です。

村にやってきた又三郎が子供達と小さな関わりを持ちながら、日々は流れ、時折何かを予言するかのように風が吹いていきます。主人公である又三郎もガラスのマントを光らせて灰色の霧の中を飛んでいきます。

「そうだぃな。やっぱりあいづは風の又三郎だったな。」

2021年9月時点で、私たちはまだまだ先行きの見えない不安の中にいてまさにどっどど どどうどという地面に鳴り響く力強い音を感じます。宮沢賢治には楽しい擬音語や美しい表現もたくさんありますが、何かが起きる前触れのような不穏な空気をこのどっどどで表現したのはさすがと思います。真っ只中にある大きな災いも、やがては風のように通過していく少し先の未来を今は静かに待ちたいと思います。

*底本 『宮沢賢治全集7』
 1985年12月4日 初版発行/2018年12月25日 第32刷発行
*文中の太字は本文より抜粋


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