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『シグナルとシグナレス』(宮沢賢治)

*2022年4月朗読教室テキスト①ビギナー・③番外編
*著者 宮沢賢治

「結婚指環をあげますよ、そら、ね、あすこの四つならんだ青い星ね」
「ええ」
「あの一番下の脚もとに小さな環が見えるでしょう、環状星雲ですよ。あの光の環ね、あれを受け取ってください。ぼくのまごころです」
「ええ。ありがとう、いただきますわ」(本文より)

月替りの朗読コース(ビギナー、アドバンス、番外編)を始めて一年が経ちました。これまで教室へご参加くださった方々、一風変わった朗読教室をそれぞれの着眼点から楽しんでくださった方々に、心から感謝申し上げます。
次の一年も大きく変わることなく、じっくりと深く文章を読むレッスンを継続していきます。地味な継続で身につく力の大きさに日々驚くばかり。よければご一緒に、今後とも何卒よろしくお願いいたします。

今月のビギナー・番外編のテキストは、ずっと気になっていた『シグナルとシグナレス』です。賢治の生前に発表された数少ない童話の一つで、大正12年に岩手毎日新聞で連載されました。岩手を走る東北本線の信号機「シグナル」と、岩手軽便鉄道(現在の釜石線)の信号機「シグナレス」による、恋の物語です。「レス」という語尾は女性を表す(アクトレス=女優、など)ことから、それぞれの語尾により男性と女性を示唆しています。繰り返しますが、信号機の、恋の物語です。二人の恋路を邪魔する、シグナルつきの「電信柱」も登場します。

当時新聞連載を読んでいた人たちのことを想像すると、物語に出てくる本線と軽便鉄道が交わるその場所がおなじみの風景であり、「絵(というか実際の対象物)」がすでに読者の頭の中にあったので、私たちより容易に場面を描いて読むこともできたのではと想像します。シグナルとシグナレスに該当する信号機を思い当てることはもちろん、傍に立つ何でもない電信柱の存在感が増してしまうこともあったでしょう。

1年が経過した朗読教室では逆に、日常で目にするシーンから「この言葉、いつか朗読したなぁ」と思い出すことも増えてきたのではないでしょうか。ねこやなぎの花芽に光が当たって跳ね返したり、水の中へ光の柱が何本も落ちてきたり、雪の真っ平らな平原を目にし、遠くで電車のごとごとという音が聞こえてきて、自然と「ああ、あの言葉」と。
朗読教室ウツクシキで、そんな「共通言語」が増えていったらよいな、意図しなくても言語化されてしまう風景が心の中に生まれていったら面白いなと思います。

2022年4月のビギナーコース、番外編は、『シグナルとシグナレス』を選びました。今回は、ビギナーコースが後半、番外編が前半から抜粋します。どうぞお楽しみになさってくださいね。


4月のスケジュール
オンライン
対面(豊洲教室)

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