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『ツェねずみ』(宮沢賢治)

「いたちさん。ずいぶんお前もひどい人だね。私のような弱いものをだますなんて。」
「だましゃせん。たしかにあったのや。」
「あるにはあっても、もう蟻が来てましたよ。」
「蟻が、へい。そうかい。早いやつらだね。」
「みんな蟻がとってしまいましたよ。私のような弱いものをだますなんて、償(まど)うて下さい。償(まど)うて下さい。」ー本文よりー

人に親切にされてもありがたいと思う気持ちが持てないどころか、ちょっとした悪いことや嫌なことを相手のせいにして、「まどうて(償って)ください。まどうてください。」と言い迫り、ツェねずみの周りからどんどん人が離れていきます。このツェねずみはわかりやすい「嫌なやつ」。でも、わかりやすい嫌味さゆえに、お話がちょっと活き活きとしてきます。そういえば昔話のいじわるなおじいさん、おばあさんなんかもわかりやすい意地悪さで、彼らがなければ物語が面白く成立しない、物語に成り得ないのでは?という構図になっています。

ツェねずみはその後もあちこちで一悶着を起こし(人間でもそんな人がたまにいますね)、最後は投げた矢が戻ってきて、大きな痛手を負います。この結末については、別のお話『クンねずみ』(宮沢賢治短編)の中で、ツェねずみの行方不明事件として新聞記事に掲載されるという展開になり、それもまた楽しく面白い仕掛けになっています。

5月のビギナー②は『ツェねずみ』。
「いやなやつ」について、この機会にめいっぱいお話してみませんか?

5月のスケジュール

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