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『おきなぐさ』(宮沢賢治)

*2022年1月朗読教室テキスト③番外編
*著者 宮沢賢治

うずのしゅげを知っていますか。
 うずのしゅげは、植物学ではおきなぐさと呼ばれますが、おきなぐさという名はなんだかあのやさしい若い花をあらわさないようにおもいます。
 そんならうずのしゅげとはなんのことかと言われても私にはわかったようなまたわからないような気がします。
 それはたとえば私どもの方で、ねこやなぎの花芽をべんべろと言いますが、そのべんべろがなんのことかわかったようなわからないような気がするのと全くおなじです・・・・・・


短編『おきなぐさ』はこのような書き出しで始まり、ひばり、蟻、うずのしゅげなどが「私」と静かに優しい会話を交わします。ひばりや蟻やうずのしゅげたちはその会話を楽しみ、少し背中を押してもらって、外の世界へ踏み出して行きます。では、その「私」は一体誰なのでしょうか。

賢治の物語には時折こうした視点がひっそりと存在します。『やまなし』で小さな川の底を覗き込み、もっと小さな蟹の子供達の更に小さな泡の粒や会話を掬い上げたり、『よだかの星』でよだかが燐の火のような青い美しい光となって燃え続けるのを見守っていたりします。

あるとき友人が、「世界の捉え方は焦点の合わせ方次第」という言葉を教えてくれました。焦点の合わせ方、という観点から賢治の物語を見てみると、ある限定された一時代の人間界の社会的事情を一粒のお米くらいに据え、土地を通り抜け、上は天上の星や宇宙空間から、下へは海の底まで自由自在に飛びまわります。焦点の飛行距離の広さに、驚くばかりです。

もしあなたが、目の前の困りごとに悩んでいるのということがあれば、困りごとに焦点を合わせるのではなく少しずらして広く高く飛んでみませんか?
そこから見える景色が、違う場所に連れて行ってくれることがあるかもしれません。何より、その世界はあなたが考えるよりも広く美しい場所であると思います。

1月のビギナーコース番外編は『おきなぐさ』です。
世界の見え方は焦点の合わせ方次第、のレッスンを行いたいと思います。

1月のスケジュール

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#朗読教室ウツクシキ
#宮沢賢治 #おきなぐさ

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