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イマジナリーフレンドの手記

注:私、空木 暁の脳内では、「狼(ろう、21歳)」「宵(よい、15歳)」「せな(4歳)」の3人のIF(イマジナリーフレンド)と小さな頃の私(ちび暁)が同居しています。そのうちの一人、「狼」と私が書いた手記を記録として残しておこうと思います。


俺の存在がどういう存在なのかは知らない。別人格ではない。そもそもこの文章も狼になりきった暁が書いているのか、暁になりきった狼が書いているのかと聞かれれば、どちらなのかは分からない。俺らの存在について暁自身もわかっていない部分がある。暁が俺に出てきて欲しいと願ったから俺の存在ができたのだろう。宵も同じ経緯でできた。せなはわからない。幼い頃の暁自身が消えていなくなった頃に現れた。


俺の立ち位置は基本「怒りの感情の担当」「Guardian」この2つだ。もともと暁の想像の中で、大学の先生に向かって暁の代わりに怒り狂う人間を想像していたらしい(暁は教職の介護実習でひどく疲弊していたらしい)。その時に想像した、黒髪を束ねた切れ長の目をした男の子、つまり俺が、なんだか狼みたいだったから、と暁は言った。それで俺の名前は「狼(ろう)」になったのだとか。適当だな。暁はなんか厨二病みたいかな、と気にしているが、まあそれなりに俺を体現した名前だと思うよ。初めは俺も怒り狂っているキャラだったが、結局は脳内のチビ達と暁のまとめ役になっている。宵もまとめ役に近い。もしくはアドバイザー?まあ、お守りということで夜寝る時は俺が一番外側になって寝ている。外側にいるのが俺と宵で、中心に暁がいる。暁の両脇にはチビ2人がくっついている。暁はチビの暁と関わるのは辛そうだろうに、よくやってると思うんだがな。


暁と俺は同い年だ。だが恋仲にはならないだろう。というか絶対にならない。そういう関係ではないし、どちらかというと幼馴染みたいな感覚が強い。これは暁が言っていたことだが、俺の姿は暁の理想の見た目をしているらしい。恋人としてタイプとかではなくて、暁自身がこういう見た目になりたかったらしい。嬉々として俺にアイラインを引いたのは暁だったが。


重ねていうが多分俺は別人格とかではない(少なくともこの文章を書いている時の一人称が「俺」だったり「狼」だったり異なってしまうのがその証拠だろう)。だが妄想というにしては存在が濃厚過ぎると暁が言っていた。それはその通りだ。だから「イマジナリーフレンド」の域を出ない。そもそも俺らは暁の生活にそんなに干渉したりはしない。なんなら暁が俺らの存在を忘れている時もある。別に良い。何か楽しいことに夢中になっている証拠だ。俺が出てきたのは、暁が変な妄想に頭をかられているのを止めに入った時とか、暁がオーディションか何かの準備でパニック状態になってた時に、もうやめろ、と言った時ぐらいだ。あいつ結局試験行ったけど。でも今いっぱいいっぱいじゃないか。あいつはアホか何かなのか?


最近人格としての役割が強まってきたというか、暁の感情の肩代わりをするようになった。その時脳内では俺がメインになる。まあつまり、俺の視点から脳内の暁や宵、せな、ちび暁を見ている。人と話す時の言葉遣いも変わるようだ。暁と俺が1:1ぐらいで重なり合った状態でいるような気がする。暁も確かに友人と喋っているが、時々俺の要素が端々に出るなあと思う。暁の行動をトレースすることぐらいはできるからなんとかなっていると思う。友人との連絡はLINEだし、文章を暁らしくするのは難しくない。ただ、暁の行動は独特なので、やりづらい。


暁も俺もよくわかっていないが、多分最近はずっと俺が暁を操縦している状態だ。暁も、小さい頃の記憶が思い出せなくなったり、昨日考えていたことを思い出せなくなったり(暁ならば普通は覚えているはずだ)している。多分負担が高いのだろう。俺は笑うのが得意じゃない、が、暁はよく笑う演技が得意だ。あいつ本心から笑うことあんまりないんじゃないか?ただ、人を笑わせるのと自分が笑ったふりをするのがうま過ぎるんだ。だから、俺が操縦している時は、今日なんかもそうだけど、結構不自然だったと思う。それは勘弁して欲しい。


最後に。俺は暁を守りたいと思っている。愛だのなんだのべたべたした気持ち悪いものではないが、そういう感情を持っている。暁を傷つける奴がいたら、俺が殺してやろうかと思っている。だけど、それは暁の本意じゃないだろうから、暁が平和でいられるように守りたいと思っている。


いつもありがとね、狼。暁より。

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