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あめさんぽとプラレール

雨の日に、しとしとぱらぱらさーさーざざざとその時々で趣を変えて響く雨音を聞くのは決して嫌いではない。けれど、ひとたび2歳児を伴うと、子を満足させる遊びの選択肢がその空からの滴によって少しばかり減ってしまうように感じる、というのは多くの親御さんにとってあるあるではないだろうか。
公園の遊具はびしょびしょで使いたいとは思えないし、皆考えることは同じなので児童館やショッピングセンターのキッズスペースなど無料の屋内施設はとにかく混んでいる。そんな施設があるだけでとてもありがたいのだけれど。

そんなわけで、雨模様だった日曜日、朝から仕事の夫を見送った後、斬新かつ魅力的な過ごし方を思いつくには至らず、結局いつもの児童館に行った。やってみたことといえば、大人の足で徒歩10分くらいの道のりを子どもと歩いてみることくらい。決断した時点で、その道のりの大半はくるまがあしらわれたレインポンチョについた水滴を気にしながら、張り切って履いたアンパンマンの長靴が脱げて落ちないように気にしながら、傘を差しながら、保護者が2歳児を抱える図を想像していた。

けれど、やってみると意外にその想像は裏切られ、所々抱っこ~と言われながらも、次の信号まで!あの建物まで!とあの手この手で気を逸らしながらやり過ごした結果、道のりの8割方を歩いてくれた。やはり、新しいレインポンチョとサイズが大きくてなかなか履けなかった(フリーマーケットで仕入れた)アンパンマンの長靴効果はそれなりにあったようだ。道端に咲くヒメジョオンの花よりもその細い葉っぱをさわさわと撫でながら、何度も抱っこや自転車で通ったその道を小さな歩幅でてくてくと進む姿を見て、まだまだ小さいマイペース君なりに確実に大きくなっているなあと思った。歩いているうちに、雨が上がっていた。

案の定児童館は遊ぶ場所を確保するにも気を遣うほどの混みようだった。プラレールを愛してやまない息子は何とか児童館の使い込まれた「こまち」を走らせることに成功したけれど、もう少し年齢の大きいお兄ちゃんたちが自由に他の車両を走らせたり、線路のポイントを変えたり、トンネルや踏切を置いたり、息子のワールドにどんどん足を踏み入れていく。さて息子の心のざわめきは如何ほどか。不満な顔をして泣いてしまうかなと思ったけれど、意外と他の車両が走ったり、関連のアイテムが増えてにぎやかになっていくのを嫌がってはいないようだ。唯一、まだ1歳に満たないくらいの子がずりばいで車両に突進してくるのだけは「じゃま!じゃま!」と怒っていた。うん、あなたもそんな時期あったよ。

もちろんお友達が少ない静かな環境で、誰にも踏み入れられることなくプラレールを独占したいのだとは思うけれど、こんな風に誰かと(間接的に)おもちゃをシェアしたり、逆に自分の心がざわついたときはちゃんと感情を表したり、そんなこともできるようになったのだなぁと気付いた。息子はTHE 内弁慶という感じで、家では気に入らないことへの不満を噴出させてくるけれど、児童館などでは自分のお気に入りのおもちゃが思うように使えなかったり、途中で他のお友達に取られてしまったりしても、ただ呆然と状況を見ていることが多かった。そういえば最近保育園の日記でも、「使いたそうにしていたので、『そういうときは替わってって言うんだよ』と言ったら、かーわってーと言っていました。」と書かれていたから、自分の気持ちを言葉にすることと、他のお友達との関係の中で折り合いをつけることを少しずつ学んでいるのかな。相手に意思を伝えつつも、折り合いがつかないときは他に楽しいことを見つけることも必要になってくるし、その時々の気持ちに共感したいとも思うから、息子の心の機微にはやっぱり寄り添っていきたいと思った。

息子の成長を感じつつも、他のお友達にプラレールを使われるのが嫌でもう飽きているのにその場を離れられないあたり、その頑固さと意地の強さにはこれから手を焼いていくのだろう。「たくさんプラレールできて楽しかったね。あっちの部屋で車に乗るのもいいんじゃない?」と声をかけると待ってましたと言わんばかりに立ちあがって隣の部屋に行くのを見ると、引っ込みがつかない、というよくある状態の解消が息子の新しい課題なのかなと思う。
そしておそらく、母である私もかつて同じ課題にぶち当たっていたはずだ。いや、今でも、なのかもしれない。誰に似たのやら、はおおむねいつもブーメランだということも覚えておこう。






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