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【子連れ旅行記その⑤】息子が寝た後に

奥尻島で過ごす最後の夜。息子を寝かしつけると、外はもう真っ暗だった。ふと部屋から窓越しに夜空を見上げた。私は迷わず外に出た。

そこには、無数の星たちが瞬いていた。

旅の始まりから毎日それなりに明かりの少ないところに宿泊していたけれど、これまでの4日間は毎晩曇り空で、星たちを見ることはできなかった。奥尻島で過ごす最後の夜、久しぶりにすっきりと晴れ渡り、こぼれんばかりの星空と出会えた。

何かの目印なのか、海の向こうでぼんやりと緑の明かりが時折点滅するのみで、辺りはほとんど街灯もなく、町の明かりも見えない。
暗闇に広がる無数の星たち。それを見る目的もあるのか、宿のすぐ近くには木のテーブルと椅子が設置されている。夫と二人、テーブルに寝転がりながら、いつまでもいつまでも、星空を見ていた。
ちょうど真上の空に、もやのかかったようなものが帯状に広がっている。天の川だ。じっと目を凝らして見ていると、ほんの一瞬、流れ星が流れた。
あまり星に詳しくないのに加えて、見える星が多すぎて、夏の大三角がどれなのかすら確証が持てなかったけれど、この場所に家族3人で来て、最高の日々を過ごせたことを祝福してもらっているかのような、最後の晩のプレゼントだった。
私は夫にただ一言、来れてよかった、ありがとう、と伝えた。それ以外の言葉が、出てこなかった。

星を見ながら、前の日の晩に女の子たちから聞いた話を思い出した。6年前、北海道胆振東部地震が発生し、道内全域が停電になった晩のこと。停電という非常事態に戸惑いはあったけれど、とにかくめちゃくちゃ星が綺麗だったのが印象に残っているという。この星空は普段見えないだけで、毎日存在しているのだ。ないものばかりが目に付くけれど、身近なところにも実は見えていないものがたくさんあって、それに気付くことが幸せなのかもしれない。奥尻島の自然にたくさん触れて、そんなことに気付くことができた。

女の子たちが帰ってきてからは、お菓子とおつまみを広げて夜遅くまで語り合った。私と夫が旅先で知り合い、ずっと遠距離恋愛だったという話になり、若い子にそんなことを語る側になるなんて、時が経ったなぁ…と実感した。こういうところに来る子たちだからか、すごく自分の意思を持って生きているように見えて、彼女たちが今後ますます活躍し、幸せになることを私は密かに確信した。この島で、この宿で出会えたことに、心から感謝である。

そして翌朝。奥尻島を発つ日は、これまでで一番よく晴れ、海の透明感が際立っていた。宿主さんも、「今日のSUPはいいよ~!」と気合が入っている。私たちももう一度カヤックをしたいなと思ったけれど、息子はのんびり過ごしたそうだったので、次回の来島の楽しみに取っておくことにした。
3泊した部屋を片付け、前日洗濯して干させてもらっていた衣類を取り込みながら、本当に家みたいにリラックスして過ごしたなぁ、と我ながら笑ってしまった。名残惜しさはきりがないけれど、きっとまた来れる。そのときは、息子ももっともっと元気いっぱいだろう。家族も増えていたらいいな。

最高だろうなと思っていた奥尻島の旅は、大きなことも小さなことも、想像以上に最高だった。宿主ファミリーの皆さんに、出会った女の子たちに、島で関わってくれたすべての方に、そして何より夫と息子に、ありがとう。
この旅ができて、幸せです。旅から2週間が経った今でも、その瞬間瞬間を思い出しては、楽しかったな、また行きたいな、と余韻に浸っています。余韻のままに旅行記を綴りました(笑)

というわけで、長くなったが、これにて2024年夏の子連れ旅行記、完結!
読んでくださった皆様、ありがとうございました。

離島を旅する子連れエッセイストとかいいな~~(笑)


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