『進める荒井良二のいろいろ展』と、生後4か月の娘の展覧会デビュー[2009・3〜4]

3月×日

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近所の世田谷文学館で荒井良二『進める荒井良二のいろいろ展』をやっていたので家族で観に行く。生後4か月のうちの娘も展覧会デビュー。大泣きするか心配だったけど、ベビーカーに乗って大人しく鑑賞していてくれた。大竹伸朗にも通じるラディカルな作風のこんな絵が、絵本になって大人から子どもまでに愛されているなんてなかなかすごいことだと思う。マガジンハウスの雑誌に掲載された初期のイラストや、アトリエ再現など、広く深く荒井良二ワールドの源流までたどるような展示。あふれる色が目に眩しい。娘の網膜にも荒井さんの作品が焼き付いたかな?

3月×日
子育てと仕事といろんな雑事に追われたこの数ヶ月だったが、ようやく少し落ち着いてきた。恵比寿のNADiff A/P/A/R/T 2FのArtJam Contemporaryで、伊藤桂司さんのギャラリー360°と同時開催の個展「SUPERNATURAL」を観る。デビュー当時から最近までのコラージュ作品が並ぶ楽しい展示。オールカラーでリーズナブルな同名の作品集を買って領収書をお願いしたら、後日郵送で、とのことだった。数日後に届いた封書の差出人を見たら「アミューズ」とあった。ふーん。

3月×日
花粉症の薬をくれる病院の帰りに原宿Rocketに立ち寄ったら、木寺紀雄『おじいちゃん。おばあちゃん。』展をやっていた。木寺さんはホンマタカシの弟子だったという写真家。明るく乾いた色合いの中にゆる〜く収まった老人たちのポートレート。こんな風に歳を重ねてみたい。大島依提亜さんが手がけた同名写真集(フォトプリュスというシリーズ)もデザインが良くて素晴らしい出来。

一旦事務所に出勤したが、WBCの大激戦中とやらで集中できず、水道橋まで足を伸ばして、トーキョーワンダーサイト本郷で開かれるグループ展「座布団レース」へ。戌井昭人・多田玲子、下平晃道、onnacodomo……と、よく知る顔ぶれが参加している。onnacodomoのライブエフェクト映像を、画面を二分割して、実際の映像とそのときどういうエフェクトが行われているかを同時に流す作品が面白かった。

3月×日
代官山のcollex LIVINGでリサ・ラーソン展“CRAFT, LOVE, LIFE”。周辺の4つの店舗でスタンプラリーをやっていたので参加した。リサ・ラーソンはいままで全く無関心だったが、かわいい動物の置物たちに一目で心を奪われた。復刻版のネコの置物をひとつ購入。SPEAK FORでやっていた写真展「リサ・ラーソン写真展、そして日本とのつながり」の写真は、先日観た木寺紀雄さんが撮影していた。書籍化もされている。リサ・ラーソンもすてきな“おばあちゃん”だった。

4月×日
桜が満開。春が来た。予定になかったが、表参道のHBギャラリーとOPAギャラリーで同時開催されているタラジロウ『東京・日本/TOKYO★NIPPON』を観た。HBの方が日本全土&東京をパノラマ化した地図風の作品で、OPAではそこに登場するご当地キャラクターを一点ずつ紹介している。確かに二つのギャラリーは歩いてすぐの場所にあり、これまでもハシゴすることがよくあったが、この二箇所でひとりの作家が同時に展覧会を開くというのは、なかなかない発想ではないか。きっとサービス旺盛なんだと思う。ウェブサイトを見るとまさにそんな感じで……グラフィックデザインも達者で、デザイナーにとってはやりにくい存在かも(笑)。
 
4月×日
HBギャラリーでイラストレーター七字由布さんの個展「七字近代美術館展」を観る。近代美術を軽くパロディ化したセンスと作品のタイトルが絶妙。静物デッサンの王道モチーフに洗剤のボトルが紛れ込むだけで、こんなに面白いなんて。
 
4月×日
再び代官山へ。嵐の前の予感がするので平穏なうちにできるだけ回っておく。SPEAK FORの菅付雅信 編集作品展『編集天国』。「大変だ」と中島英樹さんがブログでこぼしていた同名作品集(ちゃんと展覧会に間に合っていた)の出版記念企画。夏木マリのナレーションによる音声ガイドで聞く歴代仕事のエピソードは、バブル崩壊以前の威勢のいいビジネスマンの武勇伝を聞かされているようでもあった。近年のエコに絡んだ仕事など時流を読むのが上手い人だと思うが、最近の仕事には特別に感慨はなかった。彼の仕事で好きなのは、井上嗣也氏と組んで作った1992年の『composite』創刊号(朝日出版社)。これだけはいまも大切に保存している。

4月×日

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銀座巡り。iPod touchのSafariが突然フリーズし、ホームボタンを押しても復帰しなくなった。Apple Storeで一通り試してもらうが復帰せず、保証期間内とのことで完全な新品と交換してもらう。トクした気分。ギンザ・グラフィック・ギャラリーで09 TDC展を観た後、新橋のG8でフィリップ・ワイズベッカー展「recollections」へ。工具や日本の行灯、監獄、電気回路などが独特の狂ったパースで描かれている。素晴らしかったのは同時発売のカタログで、ノートに描かれる彼の絵の質感がそのままに再現されていた。即購入。

――2010秋以降の展覧会ツイートを、こちらのハッシュタグ #gbiyori に残しています。

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