職人の嘆きと「きわ」への目線

週末から出張中な広島の宿にて、現場のおっちゃんとお風呂の湯上がりで話す機会があった。


大阪から出稼ぎにきていたおいちゃん52歳は、現役タイル職人。妙になれなれしいのだけど、抜けた前歯と笑うと潰れる眼に、愛嬌と彼の歴史がにじみ出ててた、The現場の男だ。そして、パチンコとエロに始まった話題はいつのまにか、ここ最近の建設業界の課題へ。

業界はとことん人不足なこと。若手には仕事を教えたら逃げること。ひどいときにはその日の午後の職場に出てこないこと。大手はきれい事とコンプラばかりいうこと。業界全体として、若手を育てる意欲はないし、かといって年寄りになるまで働いて良いこともない(お金の面でも、職場面でも。年を重ねた職人は現場にどんどん入りづらくなる)・・・。そんなおっちゃんは会社から相当こき使われてる(もう2ヶ月も全国を転々として家に帰っていないそうだ)。


少なからずプラントから建設にも関わる身としては、聞き逃せない嘆きだったし、何よりここ最近ほとんどの建築関係の業界に関わる人から同じ嘆き(時に危機感)を耳にするこのが気になった。
設計に携わる方、土木の方、監督さん、設備屋さん、社長さん・・・、そして今日はいよいよ職人さんからもこの嘆きだ。


多種多様、様々な立場の人からこうした話を聞くうちに、なんだかそろそろ逃げられないところまで追い詰められて、業界が一変か一転するのは時間の問題のように感じてきたんだ。
まさにシステム保持のコストがシステムを動かす以上にかかってきてしまっている状況において、わかっちゃいるしこのままじゃだめだとも思いながらも、今の通りにするしかない、というやばい状況のことだ。

よくこういう状況を、物理世界の「慣性の法則」になぞらえられることがある。車は急には止まれない、というあれだ。頭ではブレーキをかけてても、実際にブレーキがかかっても止まるまでには時間がかかる。壁に激突しそうな車が、事故になるか回避出来るかは、ブレーキをかけるタイミング次第。
建設業界にこのブレーキはかけ始めているのか。きっと業界の上のほうにいくほど、かけてるよといい、現場近くに下りるほど、かかっちゃないと言うだろう。

僕は建設業界にお世話になってる分、その車に同乗してるようなもんだ。ただ、プラントの仕事はしてはいるけれど、今いくぶんはこの車から下りかけてもいる。それでも、出来ればその車のブレーキに協力もして、少しでも壁との衝突を和らげたい。それが恩返しとも思っている。

ただ、自分の事業としては出来る限り未来と、システムの外をみてる。

中小企業さんとのコンサルも、八玄座での継承者教育も、天才化機構の理事も、機械設計マイスター協会も、どの取り組みも、このリスクから逃れるための第一歩でもあります。

当たり前は、いつのまにか当たり前じゃなくなってゆく。

そこが「きわ」

ほんのちょっとずつでいいから、未来を見つめて手を打ちながら「際」がくることを当たり前と考えないとシステムと一緒に沈没だ。それっていろんな業界でもいえそうだ。

そう、かのタモさんだって「ブラタモリ」で「際」ばっかり見つめてるぞ。

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