京都大学 (2021) 国語 第一問 問二

 春期講習が始まり、早速投稿が滞りそうです(笑) これにめげず、問二についてお話してみます。

1) 「設問の要求」の分析

 今回は、京大の国語でも最頻出の「どういうこと」問題です。この「どういうこと」問題の要求は、「傍線部の具体化」です。これは多くの方がご存知のことと思われます。

 では、この「傍線部の具体化」はどうすれば正しく達成できるのか? 次節で詳しく見ていきます。

2) 「傍線部(を含む一文)」の分析

 結論から申し上げると、この分析で重要なのは「目を引く語」の発見です。設問が傍線部の具体化を要求している以上、傍線部付近には「具体化してくれーー!! たのむーー!!」と、我々にアピールしている語があるはずです。この「目を引く語」の発見から、"得点できる具体化"を試みましょう。

〇「目を引く語」とは

 では、どんな語がこの「目を引く語」とやらになりやすいのか。以下に、この語の主な特徴を述べます。

 a) 指示語

 b) プラス・マイナスの強い語

 c) 傍線部付近でのみ高頻度の語

 これらを踏まえて、改めて傍線部を見てみます。すると、a) 指示語が二つ見つかります。それぞれの指示対象を具体化しましょう。

Ⅰ)”その

  指示語の対象の具体化で有効なのは、指示語直後の語を利用することです。今回は自分の…が指示語直後にあることから、指示対象は「”の言動」であることがわかります。さらにこの「言動」の具体化にあたり、以下の2条件に配慮します。

 ⅰ)探索箇所

  まずは「前の設問で使った傍線部(ー(1))以降」から探索。

 ⅱ)着目すべき情報

  「抽象的」で「プラス・マイナスの強い」情報。

 上記2条件は、読解というよりも、国語という試験の傾向を踏まえたものです。そして、これらにマッチすると判断したのが、以下の二つです。
 - "自分自身のことで一杯 (マイナス)"
 - "散々厄介をかけ (マイナス)…しゃべっていた" (= "無邪気なおぼっちゃん")

 以上の二点を、答案の要素とします。…2-a-Ⅰ)

Ⅱ)”それ自身…”

 これは、直前まで(= 2-a-Ⅰ)の内容を指しています。よって、ここで改めて指示対象を具体化する必要は無いです。

 一方でより重要になるのは、"それ自身"の直後にある”罪あること”というマイナスの情報です。したがって、2-a-Ⅰ)についてのマイナスの説明を答案に含めなければなりません。このヒントが、傍線部後の二文にあります。特に二文目に…

 "私はそれ以来…大人に近い段階に押し上げられた(プラス)…"

とあります。ここにある"それ"は傍線部(2)を指しています。となると、マイナスであることが確定している傍線部(2)の解釈の一つとして、この"大人に近い段階…押し上げられ(プラス)"前の話、つまりマイナスの内容が想定できます(例、大人から遠ざけられる)。…2-a-Ⅱ)

3)「答案の枠組み」の作成

 今回は「どういうこと問題」ですので、傍線部(2)の構造を利用して「答案の枠組み」を作成します。

 まず、傍線部の構造を把握します。主部"その〜ない」こと"述部"それ自身罪あること"です。さらに、この「主 - 述」に対して、"私の眼に〜映ってきた"という情報も足されています。これはやや文学的表現なので、予めおカタイ日本語に直しておきます(例、気付き始めた)。

 以上より、今回の答案の枠組みは…

 【罪のないこと (2-a-Ⅰ)】が、【罪だ (2-a-Ⅱ)】と、"気付き始めた"ということ。

 となりました。

【内海の答案】

では、上記を参照して答案を作ってみます。

自身のことで一杯であるため、
他者へ無自覚に厄介を掛けていたという無邪気な幼さが、 …(2-a-Ⅰ)
私の子供から大人への成長を阻んでいた …(2-a-Ⅱ)
ことに気付き始めた …(3)
ということ。 (73字)

以上です。
 参照すべき箇所が問一と少し重複していたので、少し戸惑った受験生もいたかもしれません。しかし、「どういうこと」問題の要求を把握していれば比較的取り組みやすかったかなぁ…と感じました。ご参考になれば幸いです!

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