京都大学 (2021) 国語 第一問 問一

 本日から今年度の京大の国語について,自身の解法と答案をまったり記していこうと思います。あくまで僕個人の答案ですので,どうぞお手柔らかにお目通しをよろしくお願い申し上げます!

 なお,ここでの記事・答案は…

・内容理解よりも,答案の作り方に重きを置く。

・満点ではなく,7~8割ほど得点できる答案を目指す。

 という指針に基づいて作成致しております。どうぞ、お見知り置きくださいませ。

【京大・現代文ですべき3つの作業】

 はじめに。僕が京大・現代文に取り組む際に中心としている、3つの作業を紹介致します。

1) 「『設問の要求』の把握」と,それに対応する「作戦」の利用

2) 「傍線部(を含む一文)」の分析

3) 「答案の枠組み」の作成

 これらを通して、加点対象となる答案の要素の発見答案の整理を行っています。それでは,これらの3つが実際にどう機能するのか,問一を用いてご紹介したいと思います。

1)「設問の要求」の分析

 国語の試験は、作問者との対話です。したがって、作問者が我々に何を求めているかの理解が必要になります
 今回の「設問の要求」は「なぜ」問題,すなわち傍線部近辺にひそむ「因・果」の特定が求められています。ここで重要なことは,”どうすれば因果を答えたことになるのか”という作戦を知っておくことです。その作戦として,まずお伝えしておきたいものが…

 1-a) 「主 - 述」の把握

 1-b) 筆者にとって「+(プラス)」「-(マイナス)」の強い情報に着眼

  の二点です。これらを踏まえて、次節以降をご覧ください。 

2)「傍線部(を含む一文)」の分析

 まず、「主 - 述」を把握します(作戦1-a)。この「主 - 述」は、最も端的な因・果の把握に繋がるケースが多いです(主 → 原因、述 → 結果)。この端的な因果を基盤とすることで、記述量の多い答案でも効率的に作成できます。 

 話を傍線部の分析に戻します。傍線部の主部は「それ」、述部は「『忘れ得ぬ言葉』になってしまった」、であることがわかります。ここで,「なぜ」問題に限らず重要なことが、指示語は必ず具体化する、ということです。今回の「それ」が直前の「君もおぼっちゃん…」という"彼"の言動を指すことを、答案作成に踏まえましょう。

 そして次が、「なぜ」問題において最も重要な分析です。それは…

原因(主部)の説明の中から,結果(述部)とプラス・マイナスが一致する情報を見つける (作戦1-b

 というものです。なぜなら、「良い結果」の原因は「良いこと」であることが多く、逆もしかりだからです。

 今回の述部をよく見てみると,「~てしまった」があります。この語は,直前の動詞に「後悔」などのマイナスの意味を与える力を持ちます。そのため、「"彼"の言動」に関するマイナスの説明がそのまま原因につながると考えられます。

3) 「答案の枠組み」の作成

 必要な情報が集まってきたら、答案の執筆に先立って「答案の枠組み」を考えます。言い換えるならば,答案の骨子の確定から攻める,ということです。なお、この「答案の枠組み」を考えることに以下の三つの意義を見込んでいます。

 一) 答案を日本語として成立した文にする。
 ニ) 各「答案の要素」の答案内での位置付けを、正しく判断する。
 三) 字数不足の際、柔軟に要素を足す。

 さて、本題に戻ります。「答案の枠組み」の作成にあたり、2) 傍線部の分析 を活用します。
 作戦 1-a1-bから、傍線部(1)の原因は【"彼"の言動のマイナスの説明】ということがわかりました。これを踏まえて「答案の枠組み」を考えると、一例として以下のようになります。

【"彼"の言動】(3-a)は、【"私"にはマイナス】(3-b)だったから。

これを基盤にして、(3-a)・(3-b)のそれぞれを詳述します。

3-a) "彼"の言動
 当然、中身は直前の「君も随分…」です。しかし、国語界の暗黙の了解の一つに「発言のような具体的すぎる表現は好まれない」というものがあります。そのため、これを意味を損なわない範囲内で抽象化する必要があります(例、私の幼さを指摘した)。

3-b) 筆者に起こったマイナス
 3-a)が持つ、"私"にとってのマイナス(かつ、抽象度の高い)情報を探します。最初に探索すべき箇所は、同段落である「3段落」です。すると…

 ⅰ) 私は…自分自身のことで一杯
 ⅱ) 彼の友情・犠牲についての思いが、そこ(= 自分の心)に影を落していない

 が見つかります。
そしてⅱ)に関しては、以下の二点に要注意です。
  c) "影を落としてはいない"は比喩表現
    → 要・抽象化

  d) 述部(結果)の主役(= 私)と一致していない。

 特に、d)の対応については自身の主観が入らないよう、少し慎重に対処しなければなりません。
 まず、3-a)よりも後(同段落内に限る)から、「私」に起こった出来事を探します。それが以下の2つです。

  - "自分というもの…うつし出されたかのような感じ"
  - "それまでに気付かなかった自分の姿に気が付いた"

 なお、これら二つの記述は内容が似ています。そのため、共通点("自分の姿"に気付いた)を取り出し()、これを【3-b】に含めます。

4) 日本語の修正

 現状の答案は、「山崎の発言(3-a)」は、「〜自分(= 私)の姿に気付いたから(3-b)。」となっています。お気付きの通り、前後で主語が一致していないため日本語として変です。そのため、この二つの文を文法的な齟齬が無いように繋がなければなりません。この時の重要な作戦が、以下の二つです。

 - むやみに言葉を足さない。

 - 両者の関係に着目する。

 この二点を踏まえたところ、「3-a)は、3-b)の『原因きっかけ)』である(4)」という関係性に気付くことが出来ました。

以上を踏まえた私の答案を、以下に記します。

内海の答案:

私の幼さを指摘した山崎の何気ない発言 …(3-a)
自分自身のことで一杯で、… (3-b-ⅰ)
無邪気ながらも彼の友情や犠牲を配慮していない …(3-b-ⅱ)
自分の姿に気付く …(3-b-ⅲ)
きっかけとなったから。 …(4)  (73字)


以上です!

 読んでくださった方、ありがとうございました! 
 こういった形で解説を公開するのはほぼ初めてだったため、粗い所がかなり残されているとは思います。というより、まだnoteに慣れていないので、文面としてうまく反映されてるかどうかすら不安です…。今後一層洗練させて参りますので、大目に見て頂けますと幸いです!

内海 健太

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