「せかいしけいえい」に参加してきました
名古屋大学の学生、堀成海くんが主催する「せかいしけいえい」というイベントに参加してきました。
世界史の中から教訓を得て、それを経営(っていうか実生活)に活かそうぜというのがコンセプト。
第6回のテーマは「ナポレオンと情報」でした。
ナポレオンといえば
一介の軍人から身を興し、革命を経てぐだぐだになっていたフランスを掌握し、立て直し、ヨーロッパをほぼ征服した大英雄。
軍事の天才として知られ、実際にその戦績は42戦39勝という驚異的なものでした。
ナポレオンはなぜそんなに強かったのか。
ナポレオン本人も含めた指揮官クラスに逸材が多かったことは間違いありません。
(ナポレオンの麾下には胸熱おもしろ人間が勢ぞろいです。機会があれば是非調べてみてください)
しかしそれだけではなく、多くの人が
「フランス軍の性質」
を勝利の鍵として挙げています。
アマチュア vs プロフェッショナル
それまでの戦争は
「君主が金を出して傭兵を雇い、彼らを戦わせる」
ものでした。
傭兵たちは戦争のプロでしたが、如何せんお金で雇われた身。
給料分働けばまだ良い方で、サボったり逃亡したりするのは日常茶飯事でした。
ゆえに雇った側としては彼らを監視下に置かざるを得ず、例えば「別動隊を出して隠密行動」なんて戦術は、たとえ有効だと分かっていても実施することはできませんでした(暗闇に乗じて逃げてくださいと言ってるようなものです)。
一方のフランス軍は、革命の折にそれを恐れた他国の君主から寄ってたかって攻め立てられて
「自分たちの国を、自分たちが手にした自由を守るために、自ら武器を手にして戦う」
軍隊へと変貌していました。
普段は農業や商業に従事している人たちなので、戦闘技術は高くない。
しかしながらやる気は十分、国や家族を守るためならば命を捨てることも厭わない集団です。
もちろん、いかに士気が高くても烏合の衆では話になりません。
しかしナポレオンを始めとした優秀な指揮官が彼らをうまく用い、文字通り常勝軍団を作り上げたのでした。
ナポレオンの打ち手
そんなフランス兵(=フランス庶民)をさらに強くしたのが、ナポレオンが作った法典でした。
その名も「ナポレオン法典」と呼ばれるそれは、法の下の平等、所有権の保護、契約や信仰の自由といった要素を取り入れた、極めて先進的な法典でした。
ナポレオン本人も
「私の名前は忘れられても、この法典は永久に歴史に残るだろう」
とか言っていたような気がする自信作だったらしく、実際この法典はわが国を始め多くの国で取り入れられ、現代まで続いています。
ナポレオン法典によりフランスの庶民は各種権利を保障され力をつけるとともに、その立役者であるナポレオンに対して強い忠誠心を持つことになったのでした。
一方、隣国オーストリアには
ヨーゼフ2世という君主がいました。
(余談ですが、フランス革命で処刑されたマリー・アントワネットは彼の実妹です)
彼もなかなか優秀な人物で、オーストリアを近代化するために各種政策を打ち出しました。
こちらも農奴の解放、信仰の自由の保障、教育や医療の充実といった時代の先を行く開明的なものばかり。
が、残念ながら国内には浸透せず、各種改革はヨーゼフ2世の死を以て白紙撤回されてしまったのでした。
ナポレオンとヨーゼフ2世の違いは何だったのか
堀くんは両者の違いを
「社会のニーズを捉えていたかどうか」
であると指摘しています。
つまり、ナポレオンはフランスの庶民が「こうしてほしい」「こうなったらいいな」と思っていることを把握し、すくい上げ、法典という形に整備した。
ゆえに彼の改革は「そうそう、俺たちが欲しかったのはこれなんだよ」と受け入れられたのです。
一方のヨーゼフ2世は、いわゆる啓蒙専制君主と呼ばれる時代の先を行く人物でしたが、一人だけ先に行きすぎちゃった感が強い。
ヨーゼフ2世が尊敬していたというプロイセン王フリードリヒ2世から
「第一歩より先に第二歩を踏み出す」
という評価を受けたように、ヨーゼフ2世の意図は庶民にまで伝わらず、中間層である貴族や宗教勢力からは自分たちの特権を侵害するものと受け止められ、反発を招いてしまったのでした。
「環境」と「戦略」の整合性
ナポレオンもヨーゼフ2世も、採用した戦略はどちらも理にかなったものでした。しかしフランスではそれが結果に繋がり、オーストリアでは結果が出なかった。
つまり優れた戦略であっても、それが用いられる環境に適したものでなければ結果に繋がらない。
ゆえに環境を把握するために情報を集めることが大切なのだという、そんな学びを得た1時間30分でした。
せかいしけいえいについてもっと知りたい方はこちらからどうぞ。
5月はあと2回、ナポレオンをテーマに開催されるそうです。
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