債務超過に関する三つの勘違い
経営者の方から財務についてご相談をいただくことがあるのですが、コロナウイルスの影響もあってか「債務超過」というキーワードを耳にする機会が増えています。
が、どうもお話を伺っていると債務超過について勘違いされている方がいらっしゃるようなので、その中からよくある三つの勘違いについて書いてみることにしました。
1.借り入れをたくさんしても債務超過になるわけじゃない
「債務が超え過ぎている」なんて字面になっているせいか、借入をたくさんする(借入金=債務が増える)と債務超過になるのではないか、という心配をされる方がいらっしゃいます。
が、それはありません。
会社がどれだけの資産と負債を持っているかは貸借対照表を見れば分かりますが、貸借対照表は通常はこんな感じになっています。
資産(現金や在庫、備品などの総額)が負債(借金など、いつか誰かに払わなければいけないお金)より多く、仮に資産をすべて売り払って借金をすべて返したとしても、手元にまだいくばくかのお金が残りますよという状態です。
この残る金額が「純資産」となります。
もしも負債が大きく増えてしまって、資産の総額を超えてしまったらどうなるか。
これが債務超過という状態です。
(帳簿上は、負債がはみ出している分が、マイナスの純資産として計上されます)
借入をするというのは、この状態から
資産である現金(預金)が増えて、同額の負債(借入金)が増えるだけです。純資産の増減はないため、借り入れによって債務超過が起きることはありません。
(もちろん、せっかく調達した現金を無駄遣いして資産が減ると、債務超過に陥ります)
債務超過は債務(負債)が「資産と比べて多過ぎる状態」であって、単に「債務がめちゃくちゃ多い状態」ではありません。
2.債務超過になったからといって倒産するわけじゃない
次に多いのが債務超過=倒産ってことですか? という質問ですが。
これもNOです。
会社が倒産するのは現金が尽きた時なので、たとえ貸借対照表がこんな状態でも
資産として現金がたっぷり残っている、負債をすぐに支払う必要がないなど、支払い余力があれば倒産はしません。
一般的には
債務超過=現金も残り少ない=倒産の危機
ということの方が多いですが、債務超過は倒産と同義ではありません。
3.債務超過だからといって赤字とは限らない
繰り返しになりますが、債務超過は貸借対照表上で負債が資産よりも多いという状態です。
一方の赤字は損益計算書上で、売上から費用を引いた額がマイナスになっている状態です。
赤字が続けば資産がどんどん減っていって債務超過に陥るという関係性はあります。ゆえに、債務超過の会社が赤字であることは多いです。
しかし、債務超過の会社がすべて赤字というわけではありません。
たとえば赤字続きで債務超過に陥ったが、経営努力によって今年は黒字化に成功。ただし、まだ債務超過は続いている……なんて状況は考えられます
債務超過は貸借対照表、赤字は損益計算書に表われるものであって、それぞれ別個のものです。
以上、債務超過に関する三つの勘違いをご紹介しましたが、書いているうちに四つ目の勘違いに思い至りました。
けっこう長くなってしまいましたので、四つ目については別の記事でご紹介したいと思います。
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