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nodes vol.1 (全文一気読み版)

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創刊にあたって

自らの成果を誇る広報誌としてではなく、日ごろ科学雑誌・科学番組に親しまれている方、中学生・高校生、技術者の方など、科学技術に感度の高い方々に、私たちや周りの人々が生み出す研究・開発・サービスの姿をお伝えする。そして、科学技術のいまとこれからを作り、紡ぎ、繋いでいく。そんな媒体として、「nodes」は生まれました。

英語で「結び目」を意味する語であるnode(ノード)は、ICT(情報技術)の世界においては特別な意味を持ちます。複雑で重層的なネットワークに接続されて機能する電子機器や、スーパーコンピュータの超大規模な並列計算のひとつひとつを担う何万台もの計算機がノードと呼ばれ、広大なネットワークを通じて連携しています。

研究の世界においては、多種多様な研究者が、自由な発想でつながっています。大学や研究機関という大きな組織を構成するひとりひとりの意志も、ネットワークを通じてつながっています。東京大学情報基盤センターは、共同利用、研究、教育・ネットワークサービスを通じて、多くのnodesをつなぎ、また自らもつながっていきます。その重層的で動的なつながりが生む無数の物語をいきいきと伝えることで、私たちのかかわる科学・技術の姿や魅力をお伝えしていきたいと考えています。


編集委員長     飯野孝浩
編集委員      小林博樹、関谷貴之、中村遼、塙敏博、松島慎、
          大林由尚
編集・ライター   清水 修(ACADEMIC GROOVE MOVEMENT)
          山田哲也(projectnode)
デザイン      古田雅美(opportune design Inc.)
印刷        半七写真印刷工業株式会社
編集・発行     東京大学情報基盤センター
          〒277-0882 千葉県柏市柏の葉6-2-3 柏IIキャンパス内
2022年3月発行
©Information Technology Center, The University of Tokyo
https://www.itc.u-tokyo.ac.jp
ISSN 2436-9543(Print) ISSN 2436-9551(Online)

本誌へのご感想、ご要望をお寄せください。PDF版のダウンロード、印刷版の送付リクエストもこちらから。
https://www.itc.u-tokyo.ac.jp/public/nodes/


特集 いま、スーパーコンピュータで
COVID-19に立ち向かう

2020年以来、世界を覆う新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の猛威。 一日でも早い終息に向けて、世界中の計算科学・データ科学・計算機科学の研究者が、 スーパーコンピュータを用いた様々な研究に取り組んでいます。 本特集では、その最前線を担うスーパーコンピュータがどのような発想で開発・運用されているのか、 どのようにCOVID-19対策研究に用いられているのか、 研究者へのインタビューでご紹介します。

写真:東京大学情報基盤センターで2021年5月に運用開始したスパコン Wisteria/BDEC-01 のシミュレーションノード群(Odyssey)

スーパーコンピュータで人類と地球を護る

中島研吾 (東京大学情報基盤センター スーパーコンピューティング研究部門 教授)

KEY POINTS
▶ COVID-19に関する研究のため、スパコンの利用枠が迅速に用意された。
▶ 大学のスパコンは、「開かれたスパコン」として多くの分野で活用される。
▶ 次世代スパコンはサイバー・フィジカル空間の融合でSociety5.0実現を目指す。

 2020年春に世界がコロナ禍に突入して以降、多くの研究者が問題解決のために何らかの貢献をすべく様々な活動を実施してきました。スーパーコンピュータ(スパコン)を使用した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する研究は米国を中心に世界的に盛んに行われています。我々、情報基盤センタースーパーコンピューティング研究部門でも、HPCI※1からの呼びかけに応える形で、COVID-19に関する研究に対してスパコン資源を提供してきました。

 「2020年度HPCIシステム利用研究課題募集における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応臨時公募」で採択された課題は、表1に示す6件です。内容としては、ウイルスのタンパク質の挙動に関連した分子シミュレーションが多いですね。望月祐志先生、杉田有治先生、星野忠次先生の課題はいずれも新型コロナウイルスに関連した分子シミュレーションです。我が国でCOVID-19に関連したシミュレーションとして最も広く知られているのは、坪倉誠先生の「ウイルス飛沫のシミュレーション」です。飛沫拡散のシミュレーション映像はTV等でもよく放送されていました。このシミュレーションに「富岳」が使われていることも良く知られていますが、実は当センターのOakbridge-CX(OBCX)も使用されています。

表1: 2020年度 HPCI システム利用研究課題募集における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応HPCI臨時公募採択課題
(上記6課題は採択課題全体のうち、当センターのスパコンを使用している課題です)

情報基盤センターのスパコンの性能と利用分野

 それでは、当センターのスパコンはどのようなシステムで、どんな形で利用されているか、少しご紹介しましょう。

 2021年度前半、当センターは4つのスーパーコンピューティングシステム[Reedbush、Oakforest -PACS、Oakbridge-CX、Wisteria/BDEC-01]を運用していましたが、そのうち、Reedbushは11月末に運用終了となり、現在、3システムが稼働していますが、Oakforest-PACSは今年度末に運用終了予定です。残る2つ、Oakbridge-CX、Wisteria/BDEC-01は今後、しばらくの間、運用されます。当センターは2010年から「学際大規模情報基盤共同利用・共同研究拠点中核拠点」※2となっていて、スパコンを運用している7つの他大学とともにネットワーク拠点を形成し、東大はその中核拠点として活動しています。また、※1に示したようにHPCIの第二階層のひとつとして「富岳」とともに研究者に活用されています。

 当センターのスパコンは共同利用・共同研究拠点の施設ですので、学内ユーザーと学外ユーザーの区別はありません。利用者は年間のべ2,600人くらいで、55%以上は学外の研究者です。ここ数年の傾向として、だんだん学外ユーザーが増えてきており、今後もますます「開かれたスパコン」として全国の研究者に活用されていくでしょう。

 世界のスパコンの処理能力を順位づけした『TOP500』(http://www.top500.org/)というランキングがあるのですが、2021年11月現在で、世界1位(日本1位)が理化学研究所の「富岳」、世界16位(日本2位)に産総研のABCI 2.0、世界17位(日本3位)に当センターのWisteria/BDEC-01(Odyssey,シミュレーションノード群)が入っています。また、電力当たりの計算効率で評価した『Green500』(http://www.green500.org/)というランキングでもWisteria/BDEC-01は上位に入っており、とても効率が良いです。利用者の皆様からは電気代相当の負担金をいただいていますが、2012年頃のシステムではピーク性能1GFLOPSあたり年額125円の負担だったのが、現在、Wisteria/BDEC-01のシミュレーションノード群(Odyssey)では約18円、データ・学習ノード群(Aquarius)では約8円まで下がってきています。家電などでも新しい機種ほど消費電力が少なくて済みますが、それと同じです。

 次に、利用分野です(図A)。2020年度、Oakforest-PACSは「地球科学・宇宙科学」、「材料科学」、「エネルギー・物理学」、また、Oakbridge-CXは「工学・ものづくり」、「材料科学」、「エネルギー・物理学」など、計算科学的な分野での利用が非常に多いです。最近は、特にGPUクラスタを中心に、ゲノム解析や医用画像処理などの「バイオインフォマティクス」やAIに関連した情報科学の研究など、新しい分野に広く使われるようになっています。以前から、当センターのスパコンは学内の大気海洋研究所(大海研)や地震研究所(地震研)の研究者が、「全地球大気環境シミュレーション」や「三次元地震シミュレーション」等の大規模シミュレーションに使用していました。

 地震発生時の波動伝播の計算は、震源を仮定したシミュレーション、いわゆるフォワードシミュレーションを実施していました。現実に近いような形で震源を仮定することは非常に難しいため、シミュレーションで正しい解を得ることはなかなか難しい。そこで、観測データを積極的に利用する手法が、東大地震研の古村孝志先生らによって提案されています。新しい手法では、観測データを内挿して初期状態を求め、シミュレーションと観測データによる補正、すなわちデータ同化を融合した計算を実施し、ある時点でシミュレーションのみに切り替えます。また、地震シミュレーションを実施するための三次元地下構造にはまだ不明な点が多く、地震発生のたびに逆解析を実施して地下構造モデルを修正しています。小規模な地震観測データと機械学習の活用によって、より精度の高い三次元地下構造モデルを効率よく生成するための手法の研究も実施されています。

 スーパーコンピューティングは、従来の計算科学(Simulation, S)から、データ科学(Data, D)、学習・AI (Learning, L)を含む幅広い分野で利用されるようになっています。

図A   東京大学情報基盤センターのスパコンシステム2020年度の分野別利用割合
最近は、GPUクラスタのシステムを中心にバイオインフォマティクスやAI関連な どの新しい分野での利用が増えている。

「S+D+L」融合による Society 5.0実現への貢献

 Society 5.0は、日本が提唱する未来社会のコンセプトで、2016年に始まった第5期科学技術基本計画のキャッチフレーズとして登場しました。サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、新たな未来社会という位置づけです。

 当センターでは2015年頃から、「計算・データ・学習(S+D+L)」融合の重要性に着目し、更にSociety 5.0を実現するためのスーパーコンピュータシステム、ソフトウェア、アルゴリズム、アプリケーションのための研究開発を開始し、「BDEC計画(Big Data & ExtremeComputing)」と名付けました。

 2021年5月14日に運用を開始したWisteria/BDEC-01はこのBDEC計画の1号機です。このシステムの特徴はシミュレーションノード群『Odyssey』とデータ・学習ノード群『Aquarius』に分かれているところです。Odysseyは「富岳」と同じCPUであるA64FXを搭載したFujitsu PRIMEHPC FX1000というシステムで、規模としては「富岳」の約20分の1です。Aquariusには最新GPUであるNVIDIA A100 Tensorコアを搭載しています。

 計算科学シミュレーションの多くは非線形のため、一回の計算で正しい答えがでるわけではなく、パラメータを調整しながら、数十ケースのシミュレーションを実施するパラメータスタディが必須です。天気予報のシミュレーションや坪倉先生の飛沫シミュレーションでもパラメータスタディが実施されています。

 Wisteria/BDEC-01は、データ・学習ノード群(Aquarius)上で、機械学習・AIの手法を駆使して、最適なパラメータを効率的に決定し、シミュレーションノード群(Odyssey)でパラメータスタディを効率的に実施することを目指して開発されたシステムです(図B)。

 異なるアーキテクチャに基づくノード群を連携し、「S+D+L」融合を実現するためのソフトウェア群の開発も実施しています。

図B   Wisteria/BDEC-01 の概要
東京大学情報基盤センターで2021年に運用を開始したスパコン Wisteria/BDEC-01の概要。「富岳」と同じCPUを使用した「シミュレーションノード群 Odyssey 」と最新のGPUを搭載した「データ・学習ノード群 Aquarius 」から構成され、「計算・データ・学習(S+D+L)」融合により、Society5.0実現に貢献する。

※1 [ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラストラクチャ] 「富岳」を中心に全国の大学・研究機関のスパコンをネットワークで結んだシステム。東大情報基盤センターのスパコンはナショナルフラッグシップシステム(富岳)を支える第二階層のひとつとしてこのシステムに組み込まれている。 https://www.hpci-office.jp

※2 [学際大規模情報基盤共同利用・共同研究拠点中核拠点] 北海道大学、東北大学、東京大学、東京工業大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学にそれぞれ附置するスーパーコンピュータを持つ8つの施設を構成拠点とし、東京大学情報基盤センターがその中核拠点として機能する「ネットワーク型」共同利用・共同研究拠点のこと。 https://jhpcn-kyoten.itc.u-tokyo.ac.jp/ja/

中島研吾/専門は数値流体力学、並列数値アルゴリズム。
東大工学部航空学科卒業、テキサス大学大学院修士課程修了(航空宇宙工学)、博士(工学)。三菱総合研究所、東大理学系研究科を経て2008年より現職。2018年より理化学研究所計算科学研究センター副センター長を兼務。


2020年度 COVID-19対応HPCI臨時公募採択課題紹介

計算科学が解明するCOVID-19の理解と対策


採択課題
新型コロナウイルスの主要プロテアーゼに関するフラグメント分子軌道計算スパコンで薬剤の効果を探る

望月祐志(立教大学理学部化学科教授)

 2020年度の特別課題で、JCAHPC※1のOakforest-PACSを使い、新型コロナウイルスの主要(メイン)プロテアーゼと薬剤候補分子の複合体のシミュレーションを行いました。計算は、FMO(フラグメント分子軌道)法に拠ります。FMO法は量子力学な近似の1つで、タンパク質のアミノ酸残基と薬剤分子との相互作用を定量的に評価できますが、大型のタンパク質を計算したり、複数のサンプル構造を効率よく処理するためにはスーパーコンピュータが必要になります。主要プロテアーゼのFMO計算では、薬剤候補として既存のネルフィナビルとロピナビルを取りあげ、 MD(分子動力学)計算によって生成された多数のサンプル構造を扱って統計的に相互作用を解析しました。その結果、ネルフィナビルの方がプロテアーゼとの安定化が有意に大きく、実験の活性値(LC50)の傾向と符合しました。図は、ネルフィナビルと周囲のアミノ酸残基の MD構造を重ねあわせたもので、相互作用の評価に揺らぎを取り込む重要性を示唆しています。「富岳」では 2020年度から続けて、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の FMO計算を続けており、変異株も扱っています。実は、 FMOによるこうした解析は、今から 10年以上前に、インフルエンザウイルスに関して行ったことがありました。その頃は鳥インフルエンザウイルスのパンデミックが懸念されており、計算分子科学の立場からの貢献を考えてのことでした。ただ、当時のスーパーコンピュータは現在に比べて計算力が小さかったため、再考すると不十分なところあります。実際、「富岳」では新型コロナウイルス関係に併せて、インフルエンザウイルス関係の FMO計算も進めています。こうした試みが、「次のパンデミック」に対する基礎的な備えの 1つになれば幸いです。

ネルフィナビルと相互作用するアミノ酸残基の構造ゆらぎ
薬剤候補としてのネルフィナビル(中央の水色主体の部 分)と相互作用するアミノ酸残基を多数の構造揺らぎを計算して重ねた。

※1[Joint Center for Advanced High Performance Computing(最先端HPC基盤施設)]当センターと筑波大学計算科学研究センターの教職員が中心となって設計した『Oakforest-PACS』(当センター設置)を運営する組織。

望月祐志/専門は計算化学・量子化学。北海道大学理学研究科博士後期課程修了。理学博士。日本電気、 JST研究員などを経て、 2006年度より立教大学在職。

深く学ぶには
理化学研究所計算科学研究センター研究成果ピックアップ


採択課題
室内環境におけるウイルス飛沫感染の予測とその対策:富岳大規模解析に向けたケーススタディ
見えない飛沫を可視化する

坪倉誠(神戸大学大学院システム情報学研究科教授、理研計算科学研究機構チームリーダー)

 私の専門は流体のシミュレーションです。対する理解と防御の重要性を伝えなければ」とCOVID-19の流行が始まった時、感染症に対して感覚的な言説が多くありました。これに対して「シミュレーションをして社会に発信する必要がある。飛沫やエアロゾルによる感染がどのように起こっているのかを視覚的に訴え、感染に対する理解と防御の重要性を伝えなければ」と思い、研究を始めました。社会啓発という意味合いが強いので、様々な状況に合わせて、満員電車の中、パーティションのあるオフィス、 GoToトラベルの移動時の飛行機やタクシーの中、不織布マスクとウレタンマスクの効果の違い等々、ものすごくたくさんのケースをシミュレートしました。 Oakbridge-CXで行ったのは、そのような膨大な計算の境界条件となる「会話、歌唱、咳、等の発話モデル」の開発ですね。論文発表よりも先にメディア発表をしているというのも、大きな特徴です。スーパーコンピュータを用いた流体シミュレーションはシミュレーションに利用する形状モデルが必要です。精緻なモデルは作るのも計算するのも、スーパーコンピュータを使ってもすごく時間がかかるのですが、我々はモデル作成を工夫することで高速化し、30分くらいで計算できるようにしました。それにより、社会状況に対してタイムリーに情報提供ができています。複数の様々なケースを並列にスーパーコンピュータを使って計算できるというのが我々の強みですね。これらの研究に対して、私たちのチームはゴードンベル賞の特別賞(ACM Gordon Bell Special Prize for HPC-Based COVID-19)をいただきました。

飛沫飛散シミュレーションの例
満員電車、オフィスのパーティション、移動時の飛行機やタクシー、不織布マスクとウレタンマスクの違いなど、様々なケースを並列してスーパーコンピュータで計算できるのが強み。

坪倉誠/専門は流体工学。東京大学博士(工学)。東京工業大学、電気通信大学、北海道大学を経て 2015年より現職。 2012年より理化学研究所計算科学研究機構チームリーダーを兼務。

深く学ぶには
室内環境におけるウイルス飛沫感染の予測とその対策



nodesの光明

情報基盤センター サービスの裏側
コロナ禍において、講義のオンライン化という難題に教育機関・学生・家庭が否応なく取り組むこととなりました。その混乱の中において、東京大学では当初の講義スケジュールを遅らせることなく実行することに成功しました。そのバックボーン・ユーザビリティ向上を担った岡田和也特任助教に話をうかがいました。

全学授業オンライン化で「ユーザー目線の大切さ」を痛感

岡田和也(東京大学情報基盤センター情報メディア教育研究部門特任助教)

 我々、情報メディア教育研究部門は、教員が授業の課題や資料を配布したりテストをしたりできる「学習管理システム(ITC-LMS)」の提供や「教育用計算機システム(ECCS)」の運用などをやっています。授業ではかなりの台数の端末が必要になりますが、各授業で同じ環境が必要となるため、全学に1500台程度の端末を設置しています。他にもGoogle社のGoogle Workspace for Educationのアカウント提供、Webサイトのホスティングサービスの提供なども行っています。
 昨年のコロナ禍が始まった時期、東大は2020年3月18日に「全部の授業をスケジュール通りオンラインでやります」と声明を出しました。世間的には「1ヶ月ずらすのが現実的だ」などの話がありましたが、本学では学事暦を遅らせずにやることになりました。実は、私たちはその前から準備をしていて、田浦センター長が中心となり、いろいろな情報を一元的に閲覧できる「utelecon」というポータルサイト(https://utelecon.adm.u-tokyo.ac.jp/)を作っていました。従来は授業の出席を紙に書くなどして実施している授業もありましたが、オンライン授業では実施できないためLMSの機能を使うことを大前提に全部組み上げていく必要があったわけです。

すぐには動かないプログラムを担当教員総出で精査

 ITC-LMS自体は以前からサービスを提供していました。コロナ禍以前は全体の1/5程度の科目でしか利用されていませんでしたが、コロナ禍では東大全体で学生・教職員を合わせて数万人の利用が想定されたので、それに耐えられるようにするというが最初の課題でした。4月6日が教養前期課程の授業開始日で最初のピーク。それに備えて3月頭から現LMSを納入・運用しているキヤノンITソリューソンズ(以下キヤノン)さんと打ち合わせを重ねて「同時接続1万人」に耐えられるように対応していきました。
 近頃ではこのようなシステムはマイクロサービスアーキテクチャという方法を採用し、クラウド上で機能ごとに独立して作り、ネットワークで結んで互いにデータをやり取りします。そうすれば各機能のメンテナンス性が向上し、アクセス数が増えた場合、各機能のインスタンスを増やしていけば、システムの負荷を分散でき、急激なアクセスの増加にも柔軟に対応することができます。ITC-LMSもクラウド上で実装されるマイクロサービスアーキテクチャを採用していました。そのため、インスタンスとリソースを増やせばアクセス負荷の増加に柔軟に対応できるはずでした。しかし、実際に授業が始まると負荷を分散できず、その結果、利用者の皆様はITC-LMSが重い、アクセスできないという状態に陥ってしまいました。問題の原因を突き止めるために、一つ一つのプログラムを精査していく作業が必要になりました。そこでキヤノンさんからITC-LMSのソースコードを公開してもらいました。それをプロジェクトに関わる教員全員で、各種ログと突き合わせて、修正する作業を繰り返しました。その結果、5月中旬ごろには安定して稼働するようになりました。

アンケートを取って、日々、ユーザビリティを向上

 ITC-LMSが多くのユーザに使われ始めると「こういう機能がほしい」などの要望が出てくるようになったので、2020年7月にアンケートを取り、優先順位をつけてユーザビリティを改良しました。2021年もアンケートで2,400名の方から回答をいただき、順次優先度の高いものから改良改善をしています。
 コロナ禍のオンラインシステム拡充の過程で、マニュアルをいろいろ用意しても、ユーザが増えるとそれだけでは伝えきれないことを知りました。同じシステムでも人によって使い方が違うので、通り一遍のマニュアルだけでは分からない人が出てくるんですね。これはシステムが使われないと気づかなかったことで、「ユーザ目線に立つことの大切さ」を痛感しました。コロナ禍はまだしばらく続きそうですから、今後も技術面やユーザビリティに関して学んで行こうと思っています。

オンラインの授業や会議といった大学のリモート化に関わる情報をワンストップにまとめたサイト「utelecon(ユーテレコン)」。2020年2月から関係する教職員や学生スタッフ総出で構築され、2022年現在でも使われている。 https://utelecon.adm.u-tokyo.ac.jp/

岡田和也/専門はコンピュータネットワーク。2014年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程修了、博士(工学)。2016年より情報基盤センター情報メディア教育研究部門助教。2022年より同特任助教。

深く学ぶには
教育機関のデジタル化の取り組みを後押しする国立情報学研究所の「教育機関DXシンポ」はコロナ禍の初期から継続して開催されている。


飛翔するnodes

世界中でさまざまな分野の研究者がスーパーコンピュータを用いた研究活動を行っています。ここでは、気象とブラックホールという 2つの大きな自然現象の解明に、どのようにスーパーコンピュータが用いられているのかを見てみましょう。

30秒ごとに更新する「ゲリラ豪雨予測システム」を開発

三好建正(理化学研究所計算科学センターチームリーダー)

これまでの天気予報システムではゲリラ豪雨を正確に予測することが困難でした。
 まず、ゲリラ豪雨を「観る」ことができないと予測ができません。従来のレーダは「5分毎」の気象データを測定できます。パラパラ漫画のように連続させて未来の形を予測するのですが、突発的に成長するゲリラ豪雨の予測には、5分では間隔が長すぎます。最新の「フェーズドアレイ気象レーダ」は従来の100倍のデータを一度に取得できて、「30秒毎」に取得できるようになりました。このデータを使うことでゲリラ豪雨を「観る」ことができるようになりました。
 次に、予測手法。連続のデータを比較して、「左から右に動いてきたものはそのまま右に動き続けるだろう、こうやって動いてきたからそのまま動き続けるだろう」と予測しています。従来、予測ができるのは「10分後」まででした。しかし、ゲリラ豪雨はわずか5分で変化してしまうので、予測が難しいわけです。そこで、我々は大気の中で起こることを物理的に詳細にシミュレーションする方法を用いて「30分後」まで予測できる方法を開発しました。

2019年8月25日午前0時40分における降水強度分布。赤いほど強い雨を表す。左は気象庁高解像度降水ナウキャストの10分後予測、中央は本研究の予報システムの10分後予測、右はフェーズドアレイ気象レーダが観測した実際の降水の様子。赤色破線の円内に現れたゲリラ豪雨を本研究の予報システムではより正確に予測できているのがわかる。

現場で見えているものをコンピュータの中に作り出す

 たとえば、雲ができるプロセスですが……水蒸気が冷やされて水に変わる。すると雲粒ができる。そして雲粒同士がぶつかって大きくなっていく。マイクロメートルサイズの雲粒がミリメートルサイズになってきます。そうすると重くなって落ちてくるんですけど、それに打ち勝つぐらいの上昇気流があると落ちてくるはずの雨粒が巻き上げられてさらに大きくなります。上空で停滞して、くっついてさらに大きくなってとても大きい粒になると落ちてきます。ゲリラ豪雨を思い浮かべてみると、厚い雲が黒っぽく見えます。雨粒が大きすぎて光が通りにくいから黒く見えるんですね。
 こういった過程をどうやってシミュレーションするかというと、新しいフェーズドアレイ気象レーダの30秒ごとの雨粒のデータをつなぎ合わせることで、「実際の現場で見えているもの」をコンピュータの中に作り出します。この際、雨粒以外の湿度や、気温、気圧など、いろいろな気象データをシミュレーションします。これによりコンピュータが未来に向かってどんどん計算していきます。そして、実際観測されるデータと突き合わせながら30秒毎に30分後までの予測をリアルタイムで配信します。予測結果は現在検証中ですが今のところよい結果が出ています。
 実はこのシステムを最初に作った時にはこの30秒毎のデータを1つ取り込むのに京コンピュータを使っても約1時間かかったので、予測にはまだまだ使えませんでした。そこで行なったのは、まずプログラムの効率の悪いところを一つ一つ探していく「チューニング」という作業です。約1時間をなんとか約10分まで高速化できました。ところが、最初は簡単に速くなるのですが、徐々にチューニングの精度が上がってくると、手間に対してあまり速くならなくなってきます。
 そこで次に工夫したのが、ソフトウェア同士のデータの受け渡しの部分です。元々「データを読み込んでシミュレーションするソフトウェア」と「観測データと突き合わせるソフトウェア」は違うソフトウェアでした。シミュレーションしたら結果を出力して、データを渡してやる必要があったんです。大容量のデータなので時間がかかっていました。そこで、くっつけてひとつのソフトウェアにしました。そうなるとデータをメモリ上で参照するだけで受け渡しをできるので、大幅に高速化することができました。また、通常、精度の高い科学技術計算を行う場合は64bitの実数を使うというのが当たり前でした。これを32bitの実数にしたことでメモリの容量が半分ですみ、さらに単純に倍速で計算ができるようになりました。大きな違いですね。ここで問題になるのが精度の問題ですが、本当に精度が落ちてしまう計算はほんの一部だということがわかったので、32bitでも問題なかったのです。

世界でも群を抜いた高精度予測を実現

 我々はOakforest-PACSを用いてこのような工夫を行い、「30分後の気象を30秒ごとに新しいデータを取り込んで予測する手法」を開発し、ゲリラ豪雨の発生を事前に高精度で予測できるようになりました。これは世界でも群を抜いた「予測」です。現在はスマートフォンのアプリとして雨雲の予測が見られるようになっています。しかし問題は予測した後。society5.0とよく言われますが、バーチャルとリアルの融合という意味で「予測をどのように社会に生かしていくのか」という点が大切です。急に激しい雨が降ることに対して影響を受ける人間活動はいろいろありますから、その行動のプライオリティを作っていくことにもテクノロジーを活かす。そして、プライオリティごとに「もっとこんな天気予報があれば嬉しい」という声がユーザから出てくるのが理想的な関係ですね。

三好建正/専門は気象データ同化。京都大学理学部卒業、気象庁に入庁後米国メリーランド大学に留学、博士号(Ph. D. in Meteorology)取得。気象庁予報部、メリーランド大学助教授を経て2013年より現職。

深く学ぶには
「30秒ごとに更新するゲリラ豪雨予報」プレスリリース


「冬眠するブラックホール」の実態を解明

三木洋平(東京大学情報基盤センタースーパーコンピューティング研究部門助教)

 銀河は星やガス、ダークマターなどが集まってできている天体です。ほとんどの銀河の中心には,太陽質量の10万倍を超える大質量ブラックホールがあります。ブラックホールとは、「強い重力によって光ですら脱出できない天体」です。銀河中心ブラックホールの質量と母銀河の物理量との間には強い相関関係があることが知られており、お互いに影響を及ぼしあいながら成長(共進化)してきたのだと考えられています。だから銀河とブラックホールを考えるにはお互いのことを意識しないといけません。
 共進化してきたということが観測結果から示唆されますが、具体的にどういう過程をたどったのでしょうか。大きく2つの考え方があります。一つは「銀河内のガスがブラックホールにどんどん降り積もっていった」という考え方。もう一つは「銀河同士が衝突・合体する際にそれぞれの銀河の中心ブラックホール同士も合体していった」という考え方です。銀河進化に関しては、小さい銀河が先にできて、衝突・合体を繰り返しながらだんだん大きくなるというシナリオが受け入れられています。この時に中心ブラックホールどうしも合体して成長すれば、母銀河と一緒に成長していくということになります。以上が今回の研究の「銀河中心のブラックホールと銀河のアクティビティ」のごく簡単な前提です。

銀河衝突は活動銀河核のスイッチを入れるのか切るのか

 ブラックホール自身は光りませんが、その周辺領域が明るく光り輝くことはあります。ブラックホールにガスが降り積もっていく際には、ガス同士が擦れあって加熱されます。加熱されたガスは光を放出して冷えようとしますが、この光がブラックホールの重力場から逃げ出せれば、観測できることになります。すると普通の銀河全体よりも強い光が銀河中心のごく狭い領域から出てくることもあり、こうした天体を「活動銀河核」と呼んでいます。
 一般的によく知られている円盤銀河では、ガスも回転しているので遠心力が働き、ガスは銀河中心には落ちていけません。でも、小さな銀河が銀河外縁部に衝突すると、「ゆすられる」ことで遠心力のバリアを緩めたり壊したりすることができて、「中心にガスを落とす」ことができるんです。すると活動にスイッチが入り、活動銀河核となります。したがって、「銀河衝突はブラックホール活動を活性化させる」というのがこの研究分野の常識でした。我々研究者は、小さい銀河が降ってくる「銀河衝突」は日常的に起こると考えています。日常的に起こるのだからずっとスイッチが入っていてもいい気がするのですが、激しく活動する中心ブラックホールを持った銀河は近傍宇宙の観測では全体の1%程度しかないのが疑問として残ります。つまり、「銀河衝突は活動スイッチをonする(活動銀河核を出現させる)だけでなく、offすることもあるのではないか」と考え、この研究を始めました。

流体力学で銀河衝突の「その後」をシミュレーション

 スイッチをoffするとはどういう状態か。「銀河衝突が中心のガスを持ち去ってしまうこともあるのではないか」というのが我々の着眼点です。この場合、ガス欠になるのでブラックホールの活動は止まってしまいます。本当にそんなことが起きるのか……。それを証明するために、「銀河衝突でガスが供給されなくなる状態が起こるのかどうか」をOakforest-PACSなどのスーパーコンピュータを用いた三次元数値流体シミュレーション等で調べたのが今回の研究成果です。
 対象はアンドロメダ銀河。この銀河はごく最近、衛星銀河がほとんど中心を貫いたことが先行研究でわかっています。それによると秒速850kmで100万年程度かけて衛星銀河が衝突して抜けていきました。これより前に中心ブラックホールが活発に活動していたならば、当時のブラックホール周辺には燃料源となるトーラス(ドーナツ)状のガスがあったはずです。そのトーラス状のガスが100万年間続く「銀河衝突によって吹き付けてくるガス」に吹き飛ばされずに耐えられるかどうかを計算しました。
 計算の結果、トーラス状のガスを吹き飛ばしてブラックホール活動の停止に至る場合もあることが分かりました。ただ、これだけでは他の銀河で起こりうるのかという疑問が残ります。そこで得られた活動停止条件を他の銀河にも当てはめてみました。すると多くの場合、銀河衝突によるブラックホール活動の停止が可能であると結論づけられました。
 本研究によって、中心ブラックホールの活動性を活性化するのみと考えられてきた銀河衝突が、実は反対に活動性の停止にも寄与することが明らかになりました。中心ブラックホールの運命を左右するのは衝突してくる衛星銀河の軌道であり、銀河の中心領域に突入する際には活動性を停止、銀河の中心を離れて衝突する際には活動を活性化させると考えられます。こうした軌道の重要性は今まで考えられておらず、銀河とブラックホールの共進化過程への理解を深める上での重要な視点を提供しました。この結果から最近多数発見されている「急激に中心ブラックホールの活動性を停止した兆候を示す天体群」を説明することができるかもしれません。「冬眠」という表現を使ったのは「外的要因によってエネルギー源(トーラス状のガス)がなくなるが、ガスが溜まればまた活動銀河核が出現する」という点が冬眠のイメージと近いからです。今後は、「冬眠したブラックホールはどのくらいの期間止まっているか」を考えていきたい。そのためには、より大規模なシミュレーションを実行可能なWisteria/BDEC-01が活躍してくれそうです。

三木洋平/専門は宇宙物理学・高性能計算。筑波大学数理物質科学研究科修了、修士(理学)、修士(工学)、博士(理学)。筑波大学計算科学研究センターを経て2017年より現職。

深く学ぶには
「冬眠するブラックホール」プレスリリース


nodesのひろがり

動物の鳴き声の変化を可視化

小林博樹(データ科学研究部門教授)

専門は情報デザインと野生動物IoTです。これは環境問題の解決支援として、情報空間と生態系が分かちがたく一体化し、全体として高度な情報処理を実現するシステムの研究です。具体的には、福島第一原発から10キロ離れた立入禁止区域内の森に生息する野生動物の鳴き声の長期変化の可視化です。「野生動物間センサ・ネットワーク機構」を用いています。データ解析はチェルノブイリ原発事故対応を行うフランスの研究機関と共同で実施しています。この立入禁止の空間で、そう遠くない未来に途絶える命もあれば、また新しく生まれてくる命があります。この先どのように生き物たちがかわっていくのか見守り続けたいのです。小学生の頃、授業中に実家の飼い猫の様子が気になり、公衆電話から電話をかけてその鳴き声を聞いて話しかけたりしたら、なんだか嬉しかった体験をきっかけとした研究です。よろしくお願いいたします。

高線量地帯に生息するウグイスの鳴き声の 累積時間の季節変化

小林博樹/専門は情報デザイン・動物IoT。SE職や海外生活を経て東京大学大学院工学系研究科修了。博士(工学)。JAIST、CSIS、JSTさきがけを経て2020年度より現職。創発研究者。


真の教育とは何か 

松島慎(データ科学研究部門准教授)

 新任教員の声として自由に作文をしてくださいということだったので、ここでは私が最近考えている、「真の教育とは何か」ということについて書いてみたいと思います。
 私は情報基盤センターデータ科学研究部門に昨年3月に着任しましたが、本学の教員としては2013年から活動しています。当初助教として学生の研究指導をしていた頃は、生の対話の中で「人を教え、育てる」という言葉通りの教育の実感があったのですが、前期・後期課程の講義を担当するようになり、多数の人を同時に教育することの困難さを実感しています。最近では動画等の公開コンテンツなども充実してきており、特に自分が何を知るべきかを知らない学生にとって、低いコストで得られる知識を効率的に得る戦略は最適にも思えます。そのような背景で、本学の教育が高いコストを要求して引き換えに与えるものはどうあるべきなのでしょうか? 卓識ある方は私にこっそり教えていただけると幸いです。これからどうぞよろしくお願いします。

松島慎/専門は統計的機械学習・数理最適化。東京大学情報理工学系研究科博士課程修了、博士(情報理工学)。東京大学情報理工学系研究科、総合文化研究科を経て2020年度より現職。


野生動物にセンサーを装着

川瀬純也(データ科学研究部門助教)

 現在行っている研究のひとつは、野生動物装着型センサーネットワークによる情報収集機構の開発です。野生動物にセンサーを運搬してもらうことで、野生動物の行動の記録や、人間が容易に侵入できない自然環境での情報収集の達成を目的とし進めています。自然環境には電気や通信のインフラがありません。そのような環境でも長期間にわたって情報収集が実現できるよう、さまざまなアイデアを模索しています。例えば、野生動物同士が遭遇した際にその仕草を検出してデータの共有を行うことで数珠繋ぎにインフラ圏内にデータを運搬する技術などです。また国立情報学研究所が提供する学術情報ネットワークSINETを活用して遠隔地の情報をリアルタイムに収集・集積・分析することを目指しています。コロナ禍以前は対象とする野生化牛の生態の観察を行うなど、これまでに体験したことのない研究活動を通して刺激を受ける日々でした。フィールドに出られる日を待ちわびながら、今できる研究に勤しんでいます。

鹿児島県口之島の野生化牛(筆者撮影)

川瀬純也/専門は地理情報科学・時空間行動分析。首都大学東京(現東京都立大学)大学院都市環境科学研究科都市システム科学域博士後期課程修了、博士(都市科学)。東京大学空間情報科学研究センター特任研究員を経て、2020年11月より現職。


センターの研究をバズらせるために

大林由尚(情報基盤センター広報担当特任専門職員)

 2021年4月に広報担当に着任した私の最初の大きな仕事が広報誌のリニューアルで、産みの苦しみを噛み締めているところですが、ようやくその形が見えてきてワクワクしています。お手元に届いた「 nodes」、いかがでしょう ? 皆様のご感想をぜひお聞かせください。
 センターの新しいnodeとなった(なりたい ?)私の 使命は、第一にはセンターの研究を広報することだと思っています。情報基盤センター、外部からは教育用システムや事務・研究用ソフトウェア、ネットワークを整備してくれるありがたい場所、とは認識されているのですが、最先端の研究開発が行われていることは残念ながらあまり知られていないようです。もっともっと知っていただけるように学内外多方面に発信してゆきたいと思います。研究のこと、システムのこと、その他何でも、面白いネタがありましたらぜひぜひ、教えてください。センターの研究、バズらせませんか!!

大林由尚/研究の専門は宇宙素粒子物理学。名古屋大学理学研究科博士後期課程修了、博士(理学)。東大宇宙線研、高エネ研でのニュートリノ研究、 KavliIPMU広報、重力波望遠鏡KAGRA広報を経て2021年より現職。


編集後記

 新型コロナウイルスが猛威を振るう 2021年、nodesは産声を上げました。この「コロナ禍」の中、メディアや SNSからこれまでになく感じたのは、あまりに巨大な科学技術への不信、科学技術の軽視でした。しかし、ワクチンや治療薬の開発、聞いたこともないような分野の専門家の専門知が、人々に希望を与え、社会に光明をもたらしています。 21世紀も半ばを迎えるような時代にあって、私たちは再び科学技術との向き合い方を模索しています。

 センターのプレゼンスを社会にアピールするという広報誌ではなく、私たちのかかわる幅広い研究、サービス、ビジョン、そして人々を生きたコンテンツとして取り上げ、科学・技術に感度の高い人々に楽しんでもらおうという理想をかかげて、 nodesは動き出しました。社会と科学技術をつなぎ、紡ぐ媒体として、その役割を果たしていきたいと考えています。(飯野孝浩)

写真:東京大学情報基盤センターに設置された HPCI共用ストレージ(東拠点)


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