「メメント・モリ」「LOVE」「クリエイト」を描いた“共作小説”『白い春』の感想
三鶴さんと仲川光さんによる共作小説『白い春~君に贈る歌~』は全21話に及びます。
私は『白い春~君に贈る歌~』がnote創作大賞2024応募作品として順次投稿されると、各話それぞれのタイミングが合うときに拝読していました。
このたび🌸「白い春」の余韻企画🌸に参加するため、改めて一気読みしたところ新しい気づきがあったのです。
まだ読んでいない方もいるかと思いますので、概要を紹介しておきましょう。
主人公はホスピスで働く作業療法士の三浦蓮と入院患者の上野紗良。二人を中心にホスピスの関係者や患者との交流や、死期が近づく心情が描かれていきます。
初めて読んだときはビートルズからバッハまで音楽に関する内容が多い印象を受けました。音楽は二人にとって共通の話題であり、心のよりどころでもあります。
紗良はリハビリの一環で詩にチャレンジする際、「詩がこの世に存在している限り、私のエネルギーは形を変えて生き続ける」と自分に言い聞かせます。
ほかにも「創作の世界において、私は自由だ」、「『境界線』という言葉を聞いてから、なんだか胸が痛い」など心の声を漏す場面が少なくありません。
『白い春』をさまざまな視点から読む
『白い春』はホスピスを舞台にすることで「メメント・モリ」を問うているように思えます。
「メメント・モリ」は「死を忘れるな」という意味を表すラテン語として知られます。
またスティーブ・ジョブズ氏(2011年10月逝去)が2005年に行ったスピーチの内容から「死は必ず訪れる避けることのできないものであり、だからこそいまこの瞬間を大切に生きることが重要」という解釈もされています。
※参考記事
生と死を感じながら心を通わせていく紗良と蓮。二人の「LOVE」がどのように進展するかも気になりますが、同時に詩や絵そして音楽といった「クリエイト」(創作する)が根底にあるのではないでしょうか。
そのように視点を変えることにより、読むほどに深い意味を発見できそうです。
“共作小説”ならではの表現力
三鶴さんは三浦蓮の視点から、仲川光さんは上野紗良の視点から書かれています。それによって、紗良が「どう思ってるのかしら」とほのめかした言葉に対して、蓮のパートで暗に答える形で伏線回収するパターンが見受けられました。
私はそれに気づいて「なるほど、共作だからこそより自然に受け容れられるのではないか」と唸ったものです。一人で書いても可能ですが、書き手が違うことによって“紗良”と“蓮”のニュアンスが絶妙に表現されているように感じたからです。
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※この記事は仲川光さんの🌸「白い春」の余韻企画🌸参加記事です。
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