そろばん東大生が教える『暗算』マスターガイド
今まで経験した習い事や部活で、一番役に立っているものは何か?と聞かれたら、私は間違いなくそろばんと答えます。
そろばんの効果は、右脳の発達や集中力の向上など様々なものが挙げられますが、私が一番感じていることは、暗算が得意になったことです。算数の面積や体積の問題、数学の整数や確率、数列の問題、化学や物理など、多くの場面で計算力は必要になります。暗算ができたことで、計算をするのが苦では無かったことはもちろん、速く正確に計算できたことで、課題をすぐに終わらせ、ほかのことに多くの時間を使えました。日常生活でもスーパーの支払いや、旅行費の割り勘など多くの場面で活かせる能力だと思います。
自己紹介
少しだけ、自己紹介をしますと、私は小学生の時にそろばんを習い始め、そろばん10段、暗算10段を持っています。暗算は、10桁の計算ができるレベルです。また、フラッシュ暗算がきっかけでテレビに出演しました。
人前で暗算を披露すると、「どうやって暗算してるの?」とかなりの確率で聞かれます。当然の質問だと思います。説明すると長くなるため、大体のイメージだけを説明するのですが、相手が完全に納得するほどの答えにはなっていないと思っています。
そこで、今回はどのように自分が暗算をしているか、つまり、珠算式暗算のメカニズムについて一から説明しようと思います。見た目は難しそうですが、やっていることは非常に単純です。
これを理解し、鍛えれば日常生活での暗算は、簡単にできるようになると思います。
そろばんの基本をおさらい
暗算といっても結局そろばんの計算方法を頭の中でしているだけなので、まずはそろばんの基本からやっていきましょう。画像付きで説明していくので、ご安心ください。
小学生の時に、授業で一度習ったと思いますが、忘れていると思うので、基礎の基礎からです。(そもそもなぜ小学校でそろばんの授業があるのだろうか。経験者にとっては退屈だし、初心者にとっては、よく分からんだろうし)
そろばんは、上にある「5玉」、下に4つある「1玉」からなります。5玉を置くと、5を表し、1玉の数の分だけ、1,2,3,4を表します。玉が動いていない状態が0です。つまり、5玉と1玉の組み合わせで0~9まで表すことができます。
そろばん上の黒い点を選び、1の位とします。1の位を中心に、左に1つずつ移動するとそれぞれ十の位、百の位、千の位・・・を表します。逆に右に1つずつ移動すると、それぞれ小数第一位、小数第二位・・・を表します。
確認ですが、下の写真の状態は、538を表しています。(以下、上の文章を下の画像で図解していきます)
この知識があれば、繰り上がりのない足し算、引き算ならできます。例えば、5+3ならば、始めに1の位の5玉を足して5の状態にします。
次に、1の位の1玉を3個足します。
これでそろばん上では、8になります。引き算は、その逆で9-6であれば、9となっている状態から
5玉と1玉を1つずつ引きます。
するとそろばん上では、3になります。
次は、繰り上がりのある計算です。
繰り上がりのある計算を学ぼう「補数①」
繰り上がりを理解する上で、「補数」という概念は必須です。簡単に言うと、2つの数を合わせて10になる組み合わせを覚えるということです。つまり、1と9、2と8、3と7、4と6、5と5の関係です。
まず、足し算と引き算のそろばんの動かし方の表を見てください。これを使って例題を解いていきます。
足し算の場合です。
例えば、9+3の計算をする時、まずそろばんに9を置きます。
そして、3の補数は7なので「7を引いて10を足す」と12となり、計算完了です。
7+8の時は、そろばんに7を置き
、8の補数が2だから、2を引いて10を足す」と15になります。
次は引き算の場合です。
例えば、10-4の場合、まずそろばんに10を置き
、4の補数は6なので「10を引いて6を足す」と6になります。
17−9の場合は、そろばんに17を置き
9の補数は1なので「10を引いて1を足す」と8になります。
そろばんの計算は、意外と単純な仕組みだと分かると思います。
ここまで理解すれば、9割できたといえます。実際にそろばんを使ってやってみて下さい。残りの1割を、次に説明します。
補数②
ここまでの知識だとできない問題があります。例えば、3+2や5-3です。補数が引けなかったり、足せなかったりすると思います。それは、もう1つ補数のパターンを覚える必要があるからです。覚えるべきは、たったの2つで、2と3、1と4の組み合わせです。
基本的に計算をする時は、先ほどの計算方法で出来ますが、それが出来ない時に使うのが、この方法です。この時の玉の動かし方の表は次の通りです。
例えば、4+2の時は、前章の考え方である、2の補数8を使うことができない。(4から8は引けないから)
こういう時に、2の補数を3とすると、計算ができます。
まず、そろばんに4を置きます。2の補数は、3だから「5を足して3を引く」と6になります。
3+4の場合は、そろばんに3を置き、4の補数は1なので「5を足して1を引く」と7になります。
引き算の場合は、その逆です。
6-4の場合、まずそろばんに6を置き、4の補数は1なので「1足して5を引く」と2になります。
7−3の場合は、そろばんに7を置き、3の補数は2なので「2足して5を引く」と4になります。
そろばんの計算方法は、たったのこれだけです。2~3歳から始める子もいるそうなので、やる気になれば、誰でも理解できます。私が習い始めた時は、まだ学校で足し算を習っていなかったため、これを何度も繰り返して、体に染み込ませる必要がありました。正直、補数なんて知らずに、足し算、引き算の表を見ながらひたすら指を動かしていました。指の動かし方さえ覚えてしまえば、そこからはどんどん上達していきます。しかし、2年生以上でそろばんを始めると1桁の計算を習っているがゆえに、そろばんの計算方法を使わずに答えを書いてしまうという問題が起こる可能性があります。それを考えると、小さいうちからそろばんを習った方が良いと言えるでしょう。ちなみに、そろばんは、ひらがなと数字の読み書きと、落ち着いて座っていることが出来れば始められます。
これに九九を組み合わせると、掛け算も割り算も出来ます。次はその説明をします。
掛け算、割り算のやり方
掛け算は、筆算のやり方とは真逆です。筆算の場合、答えが1の位から決まっていきますが、そろばんでは、大きい位から順に答えが決まっていきます。
37×45を例に考えてみましょう。
そろばんの場合は、4×3、4×7、5×3、5×7の順に計算します。
4×3=12 ・・・ そろばんの状態 12
4×7=28 ・・・ そろばんの状態 148
5×3=15 ・・・ そろばんの状態 163
5×7=35 ・・・ そろばんの状態 1665
どの桁に足すかを注意する必要がありますが、慣れればすぐにできるようになり、やっていることは単純です。
割り算は、筆算とまったく同じ要領で解いています。そのため、説明はカットします。
暗算のやり方
そろばんの基本ができるようになると、自然と暗算も出来るようになります。はじめは、なかなか上手くできないので、エアそろばんを使ってそろばんを弾くイメージで暗算をしていきます。慣れていくと指の動きがどんどんコンパクトになっていきます。そして、最終的には、手を動かす事なく暗算ができるようになります。私は、この状態のことを「頭の中にそろばんをイメージする」と言っています。しかし、実際は、意識的にそろばんをイメージしているのではなく、暗算をするというモードになったら勝手に頭の中で計算の準備ができている気がします。これは私の場合ですが、指を動かした方が正確に計算できます。しかし、人前でそれをするとカッコ悪いので指を動かさずに暗算しています。それが原因で10回に1回くらい間違えることがあります(笑)。1級レベルになると、5桁の暗算ができるようになります。個人的には、日常生活で使う4桁の暗算ができれば充分だと思います。
また、そろばんでは、平方根や3乗根の計算や、小数点の計算も習います。当時小学生だった自分でも理解できたので、意外と単純なやり方です。そろばんを習うと、様々な計算ができるようになるため、数学を習う上でも少しプラスになります。
そろばんの大会とは?
そろばんにも大会があります。主に4種類の競技があります。
・個人総合競技
そろばんの大会の花形種目です。掛け算、割り算、見取算などの種目を制限時間内に取り組み、合計点が高い選手が優勝という種目です。計算方法は、そろばんを使っても暗算で解いても構いません。最高点の選手が複数出た場合は、決勝戦が行われ、それに勝利した選手が優勝となります。近年は選手のレベルが上がっており、予選で満点を取り、同点決勝でも満点を取らないと優勝できないことが多いです。
・読み上げ暗算競技
読み上げ暗算は、その名の通り、読み上げられた数字を暗算する種目です。頭の中に何桁までイメージできるか、という種目のため、人によって得意不得意が大きく分かれます。難しい問題を最初に正解した選手が優勝する方式が多いです。ちなみに、日本一の選手は19桁の問題ができるらしく、どのように計算しているのか私も知りたいです。また、英語読み上げ算という数字を英語で読む種目もあります。
https://www.youtube.com/watch?v=Jc9Daet9xHU
・読み上げ算競技
読み上げ算は、読み上げられた数字をそろばんで計算する種目です。読み上げ暗算との違いは、数字を読むスピードが格段に速くなる点です。何を言っているのかわからないスピードで読まれますが、それでも正解者がいるので、びっくりします。
https://www.youtube.com/watch?v=G6pgVOEHfww
・フラッシュ暗算競技
テレビでよく目にする競技です。ニュースや新聞の取材でも、だいたいフラッシュ暗算のシーンが使われます。凄さが伝わりやすく、テレビ映えするからだと思います。大会では、3桁の数字が2秒前後で15個出てきて、それを計算しなければなりません。動体視力勝負の種目に見えますが、実際は計算スピードが速い人が得意な種目という印象があります。数字を目で認識すると同時に計算をするので、かなりの集中力を要します。テレビでは、話しながらフラッシュ暗算をするという企画がありますが、これは右脳を使う暗算と、左脳を使う会話だからこそ、同時にできると言われています。
https://www.youtube.com/watch?v=YJuaTBU_68Y
最後に
ここまで、そろばんの計算方法や、大会について説明してきました。現代では、電卓やスマホを使えば簡単に計算できます。そのため、そろばんが必要ないという意見も聞きます。そろばんの良さは、単に計算が速くなるだけではなく、集中力が上がる、数理的思考力がつくなど、たくさんあります。また、有段者でなくても1、2級を持っていれば日常での暗算は十分できます。何よりも大切なのは、「自信がつくこと」です。そろばんを通して、検定試験に合格したり、大会で良い成績を残して自信がつくのはもちろんですが、習い始めた時にできなかったことが、時間をかけてできるようになるという経験は、幼い私にとってとても自信になりました。
私が、そろばんを始めたきっかけは、母が学生時代にバイトしていた塾の塾長が言った「子供には小さい頃からそろばんを習わせた方が良い」という言葉の影響でした。確かにその通りだと思います。小さい頃にそろばんを習っておくと、計算に強くなり、算数に苦手意識を持ちにくくなります。計算が苦手だといろいろな場面で苦労しますが、そろばんを習えばその心配はありません。また、そろばんを習っていた影響で損をしたこともありません。(強いていうならば、筆算の授業が退屈)
ぜひ、そろばんを始めてみてください!!!
そろばんと脳の関係
http://www.kobayashi-soroban.com/keisan_to_nou.html
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