右と左がわからない!からの目覚め

仕方がないから両手を上げる

1年生になってもう半年たつのに、何度尋ねても右と左がわからない。
「ピアノ譜の上はどっちの手で弾くんだっけ?」と尋ねると
うーん と考えて慎重に挙げた手は左から生えてるほうの手でした。
えっと、右の手はどっち?
と尋ねると、もうわからなくて両方あげてしまえ、という感じ。


時々、こいつふざけてるのか?と思うのだけれども、
本人はいたって真面目で、一生懸命教え込もうとすると
ぐずってしまう・・・
楽譜自体も読めなくて、どうも図の認知機能が働いてなさげ。
音符の名前を尋ねても、ド以外は同じ顔にみえるらしくて「んー、わかんない」
ああ迷子の子猫ちゃん。
ただ、ありがたいのは、それを変に隠そうともしていないし、しつこく尋ねる私を恨んでもいない、根の素直さ。

理解と体感は同じこと


もう一度、ミとレの違いからじんわりやりなおしながらも
もうこれは、楽譜なしで教えたほうが良いかも、と思っていたある日、
突然ト音記号の音符が読め始めました。
これはリテラシーワークの成果がじんわり出てきて、棒に引っ掛かっているミ、と少し落ちているレ、その間を動いていく音楽がわかってきて、
そこからの体感が生きている感じ。

どれどれ、と、五線紙に書いたト音記号と赤く塗ったソまでを羅列した音符を書いてみせてみる。
ちゃんと、一つ一つ、よめるやん、しかもちゃんとした音程で。
わお、なにかがちゃんとつながり始めた予感。
この子にとって、理解、というのは体感なんだな、いつも思います。
それだけに、わかった感がすごい。

もしかしたらヘ音記号もいける?

ちょっと情報おおすぎかなと思いながら、今度はへ音記号の音符も書いてみました。
そうしたら、この女の子、突然ピアノの方に座り直したかと思うと
いままでやっていた「うたとピアノのほん」を最初から開いて
ここここ、ここにある!
とヘ音記号の練習曲を抜き出して弾き始めたのです。

なんと。弾けるやん、すらすら。無意識で出してくる手は間違いなく左手で。
次々とページをめくってはヘ音記号を探して夢中で弾いています。

「もしかしたら、今初めてト音記号とヘ音記号がわかったの?」
と尋ねると
「うん!たのしい!!!」
そっかー、ト音記号とヘ音記号の存在自体いままで気がついていなかったのかー。
(もちろん教えてきたけどな)
わかるときって、いっきにわかるんや。
原理ってのが。

なんと。
私はあの、ヘレンケラーがサリバン先生に流水に手をもっていってもらったとき
「水」がわかったあの瞬間にたちあっているのか。
女の子の脳内でニューロンがひろひろと紐をのばしてシナプスがぷつぷつとつながっていく様を見ているようで。

人類の覚醒の瞬間に立ちあう、私も嬉しくて。

レッスン時間のあいだ、
あの、いつもぐずって、椅子からずり落ちてピアノと椅子の間でぐでっていた子が
目を爛々と楽譜に突進していくではないですか。
感無量です。

このタイミングで左右違いも定着させるために
楽譜の上に丸を二つ並べて、ト音記号の楽譜には右に、ヘ音記号は左に色をぬる作業もやりました。もうわかっているから嬉々として塗っていきます。

utena music field のうたとピアノの本はヘ音記号の練習もたくさん。

レッスンが終わったとき
「え?もうおわったの?もっとしたいのに。」
といいながらぷは〜と満足げにため息をつく少女でした。

人間、わかるってほんらい無茶苦茶楽しい遊びですな。

さて次の週

そして今週のレッスン。
ト音記号を弾く手、音、と
ヘ音記号を弾く手、と、音 は
定着したので、楽譜から目が泳ぐということは無くなりました。
でも、どっちが右手?という質問にはむむむっと黙り込みます。
そして、右手を左手を行き来して一つのメロディを弾くような曲は
やっぱり混乱しますが、
右がメロディ、左が伴奏(ソだけの)というパターンは大丈夫!

すこし、進める手順をマニュアル通りではなく、この子の体感に合わせていこう。

因みに私も右と左の区別がつかなくて、
自動車の教習所で右折と言われれば左折、
そこ左と言われれば右折しては、
度偉く怒られました。
そんな私もピアノを弾きます。


愛媛の片田舎でがんばってます。いつかまた、東京やどこかの街でワークショップできる日のために、とっておきます。その日が楽しみです!