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プロサッカーチームよりも多くのことを教えてくれた障害を持った人々との出会い

UTC代表の菅原です。
今回はパーソナルなエピソードから話を膨らませたいと思っています。

障害者専門トレーナーになった経緯

私は小中高とずっとサッカーをやってきました。
怪我が多かった選手だったので、自分をケアしてくれるトレーナーに深い興味を持つようになり、中学生の頃にはプロサッカーチームでトレーナーをすることを志していました。
トレーナーになるために、アメリカの大学へ留学しアスレチックトレーニングの勉強をしました。大学卒業後にはMLS(アメリカプロサッカーリーグ)のプロサッカーチームでインターンをさせていただき、幸いなことにUS OPEN CUP(日本での天皇杯にあたる大会)で優勝を経験する事が出来ました。

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では、そんな私がなぜいま障害者専門のトレーナーをやっているのか?
それは自分が出会ってきた身体障害者の方々は自身の失った機能を取り戻すために、少しでもより良い生活を送るために、日々奮闘し、プロアスリート並、またはそれ以上の努力を行っていると感じたからです。
そしてそのような人々のために自分が学んできた知識経験を活かしたいと思いました。
今回はトレーニングによって驚くべき生活の変化が起こった方々の例をご紹介します。

30代女性Aさんのケース(頸髄損傷)

頸髄損傷と言われてもイメージが湧かない人のために説明すると、基本足、体幹は自分でコントロールすることが出来ず、上肢にも麻痺があります。
彼女の場合は肘を曲げることは出来ますが、伸ばすことが出来ませんでした。そして電動車椅子を使って生活しています。
そのような身体状況であるため、自力での起き上がり動作が出来ない。
また車椅子で前に倒れてしまった時に起き上がることが出来ないと言った状態でした。
私が最初にトレーニングを始めた時は座位バランスも非常に不安定で、褥瘡(床ずれ)のリスクも高い状態でした。
そんな彼女に対して私が主に行ってきたアプローチは2つ、姿勢の修正と上肢機能に対しての正しい動作の反復です。
最初は座位姿勢を正しく維持できる体幹がなく、アラインメントの不具合がありました。体幹機能の麻痺ももちろんありますが、彼女の場合は姿勢の重要性を理解していたので、座位や四つん這いなど不安定な中でも姿勢を自力でコントロールできる場所を探りながら姿勢を安定させる練習を行なっていきました。

また上肢機能については正しい動作をひたすら繰り返しました。
彼女の変化の例を動画にまとめていますのでこちらをご覧いただければイメージが湧くかと思います。

腰、頸部の痛み(彼女の場合は若干感覚がありました)や褥瘡リスクのため一日中車椅子に座っていることも出来ませんでした。
しかし、このような姿勢矯正と麻痺部の正しいトレーニングによって、褥瘡を発症する機会もほとんどなくなったうえ、仕事以外にも講演会、演劇など過去には考えもしなかったイベントに参加することができ、アクティブな生活を送れるようになりました。
そして素敵なパートナーとも出会い、ご結婚もされました。

60代女性Bさんのケース(脳性麻痺+頸部脊柱管狭窄症)

一人目の例は比較的若い方だったので、次は60代の女性に起こった変化をご紹介します。
彼女は脳性麻痺を抱えながらも生活をしていましたが、脊柱管狭窄症の手術をきっかけに歩行が困難になり、車椅子中心の生活となっていきました。
彼女の場合は右半身の麻痺が強く、体がいつも傾いていました。
体が倒れると車椅子から落ちそうになってしまうことも多々。
一時期は手を少しも上げることが出来ないまでに衰えてしまいました。

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しかしながら、彼女の場合も先程の場合と同様に姿勢の改善と体幹や麻痺部の正しいトレーニングを行うことで、自身の力で立ち上がりができるまでに回復していきました。
彼女は「体幹がぐらぐらしていると、体が勝手に倒れていってしまうが、ちゃんと姿勢を矯正すると体幹が安定して、バランスが一気にとりやすくなる。バランスが安定すると立ち上がりもスムーズになるので安心。」
とコメントしてくれており、毎回姿勢の重要性を肌で感じてくれています。
彼女の変化は若い人だけでなく、年齢が幾つになっても変化を起こすことができる事を証明してくれたのではないかと思います。

これらの変化は特別なことではない

そんな人々との出会いもあり、専門性を高めることができ、私はリオパラリンピック、そして東京パラリンピックもトレーナーとして参画することが出来ました。

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これまでの学びはこのような変化は彼女らに限った特別なことではないということです。
もちろん私が何も出来ず、ただ見守ることしか出来ない人もたくさんいます。そのような人達に対してただ指をくわえてみていることしかできない現状は非常にもどかしく、心苦しくもあります。
一方、一般的に回復が難しいとされている人たちでさえ、定期的な正しいトレーニングと車椅子生活、姿勢を最適化することで、想像以上の変化を起こすことができるということを私は体験してきました。
そして、実は同じように変化を起こせる可能性が多くの人の中にも眠っているのです。

そこで我々はさまざまな障害を抱えた彼女たちに起こった変化を一般化し、誰もが再現可能な形で多くの人に届けることを目標として活動しています。

・病院を出てから何をすればいいか路頭に迷っている方
・自身の障害にあった情報が見つからず、情報取得に苦労している方
・手探りで工夫しながら生活、運動している方

どの努力も私はプロアスリート以上の努力だと確信しております。
そして、心の底から尊敬しております。
なかなかそこに辿り着くのは容易ではありません。
苦労されてきた方々には、なるべく簡単に、プロアスリート並みの努力をしなくても普通の生活ができるように。
そしてまだこれからの方達にはそのような道筋をつくることができるように。
そんなプロダクト「ノルミル」の開発をしております。
多くの人さらなる健康、喜び、を感じてもらい、人生の可能性を広げるために。

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