【詩】トンネルの先へ共に行こう

列車に乗っていた
暗闇が延々と続くトンネルの中
全速力で走っている
遠くに光は見えない
いつになったら光が見えるのか
不安になるほど暗闇が続く

はて、なぜ暗闇なのだろう
列車の中も真っ暗だ
いつから電気が消えていたのか
騒ぎ出す者はいない
乗客はいるのだろうか
もしかしたら
知らぬ間に
ひとりにされてしまったのだろうか

先を見た
トンネルの先が細くなっている
このままでは列車は通れない
トンネルを抜けることはできないじゃないか

はて、なんで先が見えるのだろう
列車に乗っているのに
トンネルの先に光が見えないと
なぜわかるのだろう
列車は走っているのに
見えぬ先が細くなっていると
なぜわかるのだろう

とたんに列車が揺れだした
上下左右に揺れ動く
うねるような動きは列車の動きじゃない
一体、何に乗っているのか

列車の中にいるというのに風が頬にあたる
暗闇はあたたかかった
横をみると両壁が迫ってくる
ごつごつとしたトンネル
岩肌は触れられそうなほど近い
しめった空気が鼻の奥まで届いた

列車じゃない!!列車に乗っているんじゃない!

気づいたとたん
風が強くなった
視界が揺れる
うねる何かにまたがっていた
姿勢を低くすると
先の方に光がみえた
すぐそばにある長く豊かなたてがみを握る

「誰もいないと思った」

咆哮が響く
僕じゃない
だけど僕も一緒に声を上げた
暗闇の中で虹の色があふれる
墨一色の暗闇が
今度は七色に変わっていく

だんだん大きくなるトンネルの先の光が
かすんでしまうほどにまばゆい

風が変わる
湿った空気はさわやかだ
土臭さは消えて
涼しい緑の風が吹いている

もうトンネルの中にはいない
青空を自由に泳ぎ回っている
僕からは彼がどんな姿だか
はっきりわからない
だけど

虹龍の輝きは
いつか見た彩雲の輝きと同じ
たぶん