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【読書】一生寄り添いつづける

2020年の12月も半ばになろうかというころ、どんよりと曇った日中に川のそばを歩いていました。

昼間でも暗く、風が冷たく、人が通らないので寂しくもありました。

遠くに目を向ければ常緑樹の生い茂る森林が見えましたが、そうでない樹木からは葉が落ちてしまい枯れ木となって立っています。

常緑樹といっても、日光の差さないなか、遠くから見れば暗がりのようでしかありません。黒と白の水墨画のような雰囲気の中、赤々と燃える紅葉がありました。

白と黒と灰色の世界に、1本だけ、燃えるようにして立っています。

闇の中ですったマッチの火、もしくは、1本のろうそくの火のようにも思えました。


ろうそく1本の明かりは頼りないでしょうか。

ろうそく1本の火は、心強いでしょうか。

ろうそくと一人の女性が出てくる絵本をご紹介します。

赤ちゃんが生まれたとき、1本のろうそくに火を灯しました。大きな大きなろうそくなので、すぐに、ろうがとけてしまうわけではありません。

ですが、赤ちゃんが子どもになり、少女に成長し、大人となってからも、ろうそくに火が灯されるので、ろうがどんどん小さくなっていきます。

お嫁にいった先にも、ろうそくを持って行った女性は、いつしか、ろうそくをしまい込んだきりにしていました。

女性は年をとり、とうとう、最期を迎えるときがやってきます。

女性はしまったきりのろうそくを出してきて、そっと火を灯しました。

いつもいつも灯していたわけではありません。ろうそくが小さくなって消えてしまいますからね。

ですが、寂しいとき、心細いときは、いつもろうそくに火を灯していました。生まれたときから、いつも女性の心をあたため励まし続けたろうそくです。

暗闇が迫っていたら、きっとあたたかく感じたことでしょう。辛いとき、苦しいときは明かりを灯したくなります。


「なんだか、大きな古時計みたいね」

「古時計も、ろうそくもずっと一緒にいたかったんだろうね」

ろうそくの明かりがあたたかく、私の胸の奥で、ぽっと灯るような気がしました。

一瞬で吹き消してしまえるろうそくの火ですが、辛いとき、暗いとき、大きくてあたたかな存在に思えます。



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