【詩】光に気づいたら戻れない

しらなかった

しらなかった

胸の奥で輝く光を

いつだって

私の前には暗雲が立ち込めていて

光の欠片などみたこともなかったのだ

目の前が黒雲ならば

胸の中だって黒い雲でいっぱいなのだ

その雲が霧に変わったようなときがあった

さる国に霧の都がある

言葉だけ聞けば

あら、幻想的ねと思うもの

晴天を前にした朝霧を想像したのは間違いだった

それほど清らかなものじゃない

吸えば命の危険がある霧

どれだけの人が命を失ったか

栄光の影に包まれた都

きっと私の心も霧の都と同じものに覆われている

違うのは私には栄光などないことだ

暗雲の上には空がある

空には星がある

月がある

太陽がある

それを私たちは知っている

それじゃあ

胸の奥に光があることを

どれだけの人が知っているだろうか

誰も知らない

私でさえも知らない

気づいてよと言わんばかりに輝く光は黒雲に包まれていた

それが黒い霧に変わった

胸の奥の光が鼓動する

気づいてよ

気づいてよ

黒い霧が薄らいでくる

光が飛び出さんばかりに跳ねる

春の夜に浮かぶ朧月夜

うっすらヴェールに包まれた月

ああ、きっと大きな満月が浮かぶ

近い内に

胸の奥で

もしかしたら

月の奥にある都に行けるかもしれない






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