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【詩】光を目指して

雲の中を走っていた

上に向かって

上に向かって

上下右左

どこをみても灰色の雲ばかり

黒々としたところでは稲光が走っている

下に向かってどこへ行くのだろう

我々は上に向かうのだ

遥か下でひかる稲妻から目をはなす

上の方へ

上の方へ

唐突に雲の上に突き出た

強い風が荒れ狂う

せっかく雲の上にでたと思ったのに

目の前に広がる風景は変わらない

大きな雲がまたたくまに流れていく

どこへ行く

どこへ行く

雨粒ふくんだ雲は遥か後ろへ向かっていく

首を振ってふんばった

足に力を入れて

思い切り蹴る

上へ向かう

上へ向かう

もう一度

雲の上へ出た

大きな雲の上にまた雲が広がる

せっかく雲の上に顔を出したのに

まったく情景は変わらなかった

「よくみてみろ」

仲間のひとりが叫んだ

彼の指さす方に星が見えた

星だろうか

いや、太陽かもしれない

とにかく灰色と黒の雲

ときに走る雷の光

冷たい雨粒

それ以外のものがある

上の方で

上の方で

雲にさえぎられながら輝く

「あと少しだ」

指さす仲間の顔はほがらかだ

疲れ切った足に思い切り力を入れた

上に向かって

上に向かって

光を目指して


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