見出し画像

【詩】旅立つタイミング

よく知っている場所
慣れた場所
親しみのある場所
それなのに、突然、見知らぬ場所に来たように感じる

いつもと同じ人
いつもと同じ会話
いつもと同じ笑顔
それなのに、どこか遠くに感じる

いつもと同じように笑ってみる
いつもと同じように話してみる
いつもと同じように触れてみる
それなのに、いつもと違う

わたしが違うのかな
まわりが違うのかな
どっちが違うのかわからない
自分だけ、見知らぬ世界に放り込まれたみたい

自分だけ、まったく違う世界に放り込まれたのかな

これまでと同じが同じじゃない
何が違うのかわからない
だって、昨日までは一昨日と同じだったんだよ
何も変わらない日々の延長線上は今日も続き、明日も続くはずだった

それなのに、今日から明日に続く延長線は、やわらかい霧に包まれて何もみえない

いったいぜんたいどうしてしまったんだろう

昨日から今日の間に、世界がそっくりいれかわってしまった
自分だけ、昨日と同じ今日を生きるみんなと同じではないのだ

今日は誰も気づかない
でも、明日はきっと気づくだろう

ひとりだけ、同じ時間を生きなくなってしまったことを

発車のベルが鳴るように、心がざわざわ騒がしい
行き先はどこだろう
駅のように親切な案内板は何もない
やわらかい霧が揺れるだけ

心臓の鼓動が早くなる
ここから別のどこかへ行く
それだけははっきりわかる

昨日と同じ笑顔を浮かべるひとたちを振り返る
もう、戻れないのだ
昨日と同じ今日、今日と同じ毎日を生きるひとたちと一緒にいられないのだそして、誰ひとりとして、霧の中にかすむ明日に来てはくれない

それでも行かなくてはいけない
一年、一年、年を取るように
確実に進まなくてはいけない時なのだ

旅立ちのタイミングは自分が一番わかってる
あとは踏み出すだけ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?