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再生 - 優しい絶望 -

無音の世界で
じっとしていたいのに

無音さえも
無音という一音になって
私を飲み込んでしまう

耳を塞げば
心音が
私の命が
聞こえてしまうから

私は思わず
尖ったものを
探してしまう

本当の静けさを
求めるなら
この音を止めるほかない、と。

死ぬ気なんてなかった

ただ、静かな場所が欲しかった

ただ、静けさを求めていた

ただ、それだけだったのに

色々な人が
色々なことを言う

まるで見当違いなことを。

私は、叫ぶ
「違うのよ」と

だけど
口を開けば
強風が吹くばかりで

あなたはコートの衿を立てて
帽子を深々と被ってしまう
耳まで、隠して。

「それでは私の声が
聞こえないではないか!」

また、強風が吹いた。

私は北風と太陽を思い出す

嗚呼、私は北風になってしまったのか。

空中を漂いながら
私はするりと壁を抜ける

もう、ここには戻らない。

ときに明るすぎる友人の存在も
お気に入りの音楽や詩集も
キルケゴールもお釈迦様も
なんの役にも立たない。

砂嵐が来たら
その中に
入らざるをえない。

たった、一人で。

最初は迫り来る
砂嵐から
向きを変える。

だけど砂嵐も
私に合わせて
向きを変える。

私はぐるぐる回りながら
漸く理解する

「 I understand 」

私は弱々しく笑う

それは、優しい絶望。

そして
それこそが
私を再生させる唯一の道。

私は一度ちゃんと
死ななければならない。

ちゃんと死んだら

また、歩き出せる。

私は砂嵐の中に一歩
足を踏み入れた。

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