『西村邸』のこと―デザインのこと①デザインとはなにか

こんにちは、3連休はどのように過ごされたでしょうか。
新成人のみなさん、おめでとうございます。ぼくは、前職のアルバイトに来てくれていた学生さんが、振り袖姿をInstagramに上げているのを見て、しみじみしていました。彼女たちとは同じ寅年なんですよね。もう12年かぁ~。

さて、今週は『デザインのはなし』。経歴の回で話したとおり、いちばん最初に働いた会社は、商品パッケージや広告のデザインプロダクションでした。そこで教わったり、そのあと考えた、デザインにまつわるいろいろを少しずつ。

デザインに関する話題は、いままで本当に多くのデザイナーやクリエイターによって語られてきています。ぼくは、実績のあるデザイナーでもクリエイターでもない。そんなぼくが、いまさらデザインを語るのも無粋だとは思います。

ですが、これから西村邸が提供するものを考えるにあたって、自分の思考をいったん整理するためにも、書いておこうと思いました。その過程で、あなたが社会に存在するモノを見るにあたっての、何かの助けになれば一石二鳥。そういう感じでお届けしていきます。よろしくお願いします。


「デザイン」ってなに?ぼくは「主体と客体―双方に対して適正な美しさを持った表現の形」だと考えています。伝わりますかね?

Wikipediaにはこう書かれています。
―デザイン(英語: design)とは、審美性を根源にもつ計画的行為の全般を指すものである。意匠。設計。創意工夫。

計画的行為、そうですね。計画されていないといけないです。綿密であるほどよい。主体と客体―双方に対して適正になるよう計画する。この計画こそが、デザインのデザインたる所以だと思います。
「適正」は「適当で正しいこと」なんて国語辞典には書かれていますね。ここでは「過不足ない」「必要十分」というような意味で使っていきます。


「計画」の過程を少し具体的に話しましょう。企業広告のグラフィックデザインにあてはめて考えてみますね。ここでの主体は広告を出す企業、客体は広告を見る消費者です。

まず、企業に対して適正であるというのはどういうことか。これは広告なので、企業のメッセージが過不足なく表現されているかどうかです。

例えば、フレンドリーな印象を与えることが目的の広告で、メインのコピーを「いっしょにあそぼう♪」にした。このコピーのフォント(字体)は、たぶん明朝体ではいけないですよね。高尚だったり、あるいはちょっと冷たい感じになる。「いっしょにあそぼう♪」を明朝体で書くジャンルは…ホラーですかね笑 「じゃあ最もフレンドリーな印象を与えられるフォントはなにか?」これを考えていくわけです。

考えているとすぐに、「そもそも我々にとってのフレンドリーとは?」という次の問いが生まれるはずです。「そばにいて落ち着く」かもしれないし、「そばにいて安心する」かもしれない。微妙なニュアンスの違いですが、最終的に選ばれるフォントは違ってくるように思います。(前者はふわふわっとした手書き風、後者は丸ゴシックとか??)

こういうふうに目的を掘り下げて、できるだけその本質に近づいていく。これが主体にとっての適正を計画するということです。

次に、消費者に対して適正であるかどうか。ざっくり言うと、伝えたい人にちゃんと伝わるか、です。
40代~50代の日本の一般的なサラリーマンに対する広告は、フランス語では書かれません。あたりまえですね。
では、その広告が視界に入るとき、サラリーマンの意識はどこにあるか。どれくらいの速さで移動しているか。ビルボードと、吊り広告では、文字の量も大きさも全然違います。こう言うと、あたりまえっぽいですよね。
5秒でその前を通過してしまうとしたら、ふわふわしたパステルカラーと、バキッとした原色。どちらをより多くのサラリーマンは見てくれるか。考えるまでもない、と思われるかもしれない。

ですが、すべての要素は、こういうふうに考えて詰められていくんですね。客体がどういう存在で、どういう環境でそれを使うか。ここも目的と同じように、どれだけ掘り下げて最適化できるか。この過程で「ペルソナ」とかも出てくるわけです。

抽象度を少し上げて言うと、目的の達成に最も貢献する要素を選び取ること、これが計画の過程です。色や形は、すべて意味を持ちます。この色、この形は、主体と客体にフィットしているか??そういう問いかけの繰り返しが、デザインするということなのです。

これが前提があり、あとはその組み合わせによって、美しさを掛け算していくんですね。掛け算です。どれだけ「美しく」とも、まったく目的から外れていたり、まったく伝わらなかったりすると、それはデザインとして美しいとは言えないと、ぼくは考えます。


主体の目的を、客体に届ける―結局デザインの良し悪しは、これがどれだけ達成されているか、で決まると思います。
もっとわかりやすく言うと「誰にどんなふうに使ってもらい、どんな気持ちにしたいか」です。2次元=グラフィックでも、3次元=プロダクトでも、4次元=エクスペリエンスでも変わりません。
そう考えると、デザインが関わっている領域は、本当に広いと気づいてもらえるのではないでしょうか。日常会話なんかにも、デザインの余地が山ほどあります。

表現の美しさを高めるには、やはりプロの技術や経験を頼ることも必要です。ただ、まずは「誰にどんなふうに使ってもらい、どんな気持ちにしたいか」これをしっかり計画すること。これがデザインの大切な前提で、落ち着いて思考を整理していけば、誰もが取り組めることだと思います。むしろ、自分が主体であるなら、自分自身にしかできないと言ってもいいでしょう。プロに頼んでも、ヒアリングなどで必ずこの過程を踏みます。
この意識を持つだけで、結構いろいろなモノの見え方が変わって面白いんじゃないかな、とぼくは思っています。どうでしょうか?


1日目に「本当はちゃんとデザインしてから書きたかった…」と話したのは、こういうことなんですよね。特に客体に対する計画が浅い…もっとUX高めていきたいんですが…すみません笑
偶然にもこの文章が刺さっている奇特な客体さまがいらっしゃいましたら、明日もまた読みに来てください。今日もありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?