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日常の重なりが、町になる―『西村邸』のこと|町のこと⑤

こんにちは。「町のこと」最終回。今週は結構やわらかいテンションで書けてたかな、と思いますが、最後はちょっとカタくなりそう…。気軽な気持ちでお付き合いいただけると嬉しいです。

以前の「ドラマを日常にする」という文のなかに、「日常の重なりが、町になる。」と書きました。

町はつまるところ、日常の積み重ね以上にも以下にもならないと思います。そこに生活する人の日常を映すのが町。東京には東京の日常、奈良には奈良の日常があり、その空気を左右するのは、住む人のライフスタイル、そういうことです。

よい町には、よい日常がある。よい日常というのは、生産活動であり、消費活動であり、人間関係。


奈良は、大阪や京都のベッドタウンという側面もあります。平日は社会人が、休日は学生やファミリーが、大阪や京都に出て行く。
【県外就業率】という数字があります。住民のどれくらいが県外で働いているか、ってことですね。
奈良は全国でもトップクラス。(埼玉、千葉、神奈川の3つと合わせた四強が、他を大きく引き離す…という感じです。)大阪市街に一番アクセスのいい生駒市は、県内で働いている人の方が少ないくらいなのだそう。

これが高い=悪いこと、というわけでもないでしょうが、帰ってきて寝るだけの家が殺風景になりがちなのと同じように、過ごす時間が少ない町はそれだけ、洗練される機会が少しずつ失われていきます。


世界につながる可能性が広がり続ける中で、小さい経済圏を志向するのもちょっとちがうなとも思います。
ただ、外から見た人が訪ねたくなる町って、やっぱりそこに住む人がいい日常を送っているんだろうな、と思う。

奈良の場合、観光資源というのは絶対に外せない強みだけど、じゃあ、それがどれだけ地元の人の日常に目を向けられているか?地元の人が、自分たちの町のことだととらえられているか?

このギャップがどれだけ大きいのか、まだぼくも実感はできていませんが、決して小さくはないのではないか。
それを少しずつ埋めていくことが、これから奈良という町を盛り上げていきたいぼくたちが取り組むべきことなのかな、と感じています。

奈良県民が普段使いしたくなる名産品、通いたくなる場所。そして、関わりたくなる仕事、プロジェクト。その循環。
ただ単純にホテルやショッピングモール―雇用と消費を生み出す施設―をつくることとも違う、もっと根源的な課題なのだと感じます。
口で言うのは簡単ですけどね。だけど、少なくともそこに向けた視線を外さないようにと自分に言い聞かせながら、『西村邸』でやることを考えています。


やっぱ大きい話題は結局ふわっとする…むずかしい!今週もお付き合いくださって、ありがとうございました。

明日の夜は若草山の山焼きですね。冬の奈良の大きなイベントで、西村邸のはなれからも間近に見えます。奈良のみなさん、楽しみましょう!
県外のみなさんも、よい週末をお過ごしください。

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